子宮腺筋症 温存手術「保険適用を」 先進医療除外で負担増

子宮腺筋症の先進医療除外を受け、保険適用を訴える霞ケ浦医療センターの西田正人名誉院長=土浦市内

■霞ケ浦医療センター 西田名誉院長

月経の激しい痛みや不妊を引き起こす「子宮腺筋症」の診療のうち、子宮を温存する外科手術が本年度、先進医療の対象から除外となった。子どもを望む患者には手術費が経済的な負担増につながり、専門家は「少子化対策に逆行するのでは。手術の保険適用を」と訴える。

子宮腺筋症は、子宮内膜が子宮の筋肉に生じる病気。子宮内膜症などと同様、激しい月経痛を引き起こし、貧血につながる。子宮摘出手術で解消するが、子宮を温存する場合はホルモン剤を使って症状を緩和する。ホルモン療法では根治できないため、服用を止めて妊娠を試みると、月経痛が再燃してしまい、不妊や流産にもつながるという。

先進医療は、保険適用になっていない手術でも、入院や検査などは保険が適用される「混合診療」が認められるのがメリット。4月以降、厚生労働省が先進医療から子宮温存手術を除外したことで、患者は全額自己負担が求められることになった。

約20年間で2千件超の手術を担ってきた国立病院機構霞ケ浦医療センター(茨城県土浦市)の産婦人科医、西田正人名誉院長(77)によると、手術は約30万円、入院や検査費用などを含めると70万~100万円程度が必要という。

先進医療は、「高周波切除機を用いた子宮腺筋症核出術」として西田医師らが確立。筋肉組織に食い込んだ患部を電気メスで取り除く。全国に先駆けて2005年10月に認定され、同センターや東京大、自治医科大など6病院が実施医療機関となっていた。

同センターでは02年3月から23年3月までの間、全国最多の2233件の手術を担い、うち2158件が先進医療として扱われた。受け入れ病院が少ないこともあり、東京都が最多の430人、茨城県の390人が続き、北海道や九州からも多数の患者が訪れている。当初は患者の診察と手術が間に合わず、予約待ちが2年近くになってしまい、予約を一時停止したこともあったという。

西田医師は「子宮内膜症は18~48歳女性の10%程度が罹患(りかん)し、半数は子宮腺筋症かその合併と考えられる。子宮腺筋症の患者数は少なくとも全国で75万人いるのではないか」と推測している。遠方から診察、手術に訪れる患者も多いことから、「患者負担を減らすには、保険適用をしてもらうのが一番」と訴えた。

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