四万十川流域に暮らす人々を繋ぐ沈下橋

四万十川と沈下橋

高知県津野町不入山を源流点とする四万十川。川の全長は196kmで、源流から196km先の終着地点である四万十市下田で太平洋に注ぐ。

太平洋へ注ぐ河口付近

蛇行する川

高知県の海底には、太平洋プレートが位置している。

海底の地殻変動により、太平洋プレートに押し上げられる度、山間の源流点から南方向へ注ぐはずの四万十川は、北方向へ押し上げられてきた。川は、幾度となく南から北へ押し上げられることで大きく蛇行した。

大きく蛇行する川

蛇行する川が集落を生み出した

川が蛇行することで、川の両側に平地ができて、集落が生まれた。川の両側に生まれた集落と集落の間で「渡し舟」が行き交い、舟や「竹の浮橋」が人を繋いだ。豊富な水量と広い川幅や河原が形成されることで、火振漁や投網などの漁業はもちろんのこと、山から切り出した木材を船で搬出する運搬業や林業が営まれ、人と川との密接な関わりが景観をかたち作った。

火振り漁

暴れ川が人の行き来を阻む

四万十川は、暴れ川としても有名で、増水や氾濫など一年を通じて水害が発生しやすい。集落間を繋ぐ「渡し舟」や「竹の浮橋」は、川が増水した時には運行できなかったり、勢いを増した四万十川に幾度となく流されたりした。集落間の人の往来は、その都度阻まれることとなった。

通常時(左)と増水時に沈下する様子(右)の比較

沈下橋が誕生する

流域に暮らす人々は、増水や氾濫にも耐えられる橋を求めた。暴れる川に抗わず、流木にも耐える強度と、濁流を「いなす」柔軟性を備えたことで、現在の沈下橋の形状が生まれた。橋に欄干は無く、縁は丸みを帯びている。川が増水したら沈むことを前提に設計されている。

丸みのある縁

四万十川に架かる沈下橋

196kmにわたる流れの旅路には、約48本の沈下橋が架かっている。48本の沈下橋は、昔から集落間の人を繋ぐ生活道である。沈下橋からは、流域に暮らす人の生活や生業が見てとれる。漁業、林業、農業、観光業など川とともに生きる人々の暮らしが、今も営まれている。場所によって沈下橋の特徴や光景は様々で、見る人、渡る人を楽しませる。

色々な特徴を持つ沈下橋

佐田沈下橋

四万十市の市街地からほど近いところに架かる佐田沈下橋。下流域に架かる佐田沈下橋では、屋形船が観光客を乗せ、船頭が四万十川の歴史や文化を伝える。初夏には、鮎や川エビ、鰻の仕掛けが設置され、川漁を垣間見ることができる。乗船すると観光客の視点は、川面にほど近くなり、澄んだ川を泳ぐ魚や石苔が綺麗に見える。川のせせらぎや両側の山に反響する鳥のさえずりは、疲れた心をリラックスさせる。

三里沈下橋

屋形船が行き交う三里沈下橋では、カヌーやSUPなど子どもから大人まで川遊びを楽しむ人々の姿がある。夏の晴れた夕暮れには、沈下橋が夕日に照らされ辺り一面オレンジ色に包まれる。日本のノスタルジックな景色を楽しめる沈下橋。

岩間沈下橋

テレビやCMで人気となったこの沈下橋。国道沿いの駐車場には、大きな桜の木があり、春には満開の桜と菜の花越しに沈下橋を眺めることができる。高知県出身の演歌歌手、三山ひろし氏が歌う「四万十川」の歌碑や音声装置があり、歌手のファンはもちろんのこと、訪れた人を景色と演歌がもてなしてくれる。

沈下橋が紡ぐ物語

四季折々、その場その時々ならではの光景を楽しめる沈下橋。晴れていても雨が降っても、様々な表情で来た人を楽しませてくれる。四万十川に架かる48本の物語をあなたの目で確かめに行きませんか。

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