【MLB】エラー王から守備の名手へ タティスJr.が外野コンバートで激変

写真:カージナルス戦でホームランキャッチするタティスJr.

9月24日(日本時間25日)、パドレスはカージナルスとの3連戦最後の試合を12-2の大勝で飾った。開幕前には優勝候補とも目されたスター軍団パドレスはレギュラーシーズン6試合を残すが、今季本拠地での最後の試合を終えたことになる。

最終盤に8連勝する怒涛の追い上げをみせたものの、ワイルドカード圏内まで5ゲーム差とポストシーズン進出の可能性は限りなく低い。

今季のパドレスはスター選手揃いではあったが、投手陣の故障や主力打者の不振、さらに接戦で極端な弱さを露呈するなど予想外が多く、思うようにいかないシーズンだった。ただ、いい意味で予想外の出来事もあった。チームの顔でもあるフェルナンド・タティスJr.が守備の名手へと成長したことだ。

2019年に20歳でメジャーデビューしたタティスJr.は、2021年シーズン開幕前に14年3億4000万ドルの超大型契約を結ぶなど大いに期待された若手遊撃手。2021年には22歳の若さで本塁打王に輝くなどまさに飛ぶ鳥を落とす勢いだった。

一方で、守備面の評価はあまり高くなかった。持ち前の身体能力で派手なプレーを披露するものの安定感を欠き、強肩ではあるが送球の正確さも十分ではなかった。2021年シーズンに遊撃手として記録したエラー21個はナ・リーグ最多だ。

さらなる飛躍を目指した2022年シーズンは開幕前にバイク事故による怪我で数か月出遅れ、マイナーでリハビリを始めた直後の8月には禁止薬物使用が発覚し80試合の出場停止処分。この年、タティスJr.の出場がなかったパドレスはキム・ハソンを遊撃手として起用していたが、シーズン終了後にFAになっていた遊撃手のザンダー・ボガーツを11年契約で獲得。これによりタティスJr.は実質的に遊撃手としてのポジションを失い、外野手へと完全コンバートされることになった。

実はタティスJr.は、2021年シーズン中に故障した際、復帰後には負担軽減のため一時的に外野を守っていたこともある。しかし完全なコンバートとなれば話は別。2023年シーズンは開幕から20試合の出場停止処分が続く中、スプリングトレーニングやマイナーで外野手としての守備を磨いていたが、当時はまだ目測が不安定で経験不足を露呈していた。

しかし、処分が明けメジャーで外野手としてプレーし始めると、そこにはもうエラー王の姿はなかった。持ち前の身体能力を最大限に生かし、広い守備範囲とメジャー最高級の強肩を幾度となく披露。主に右翼手としてプレーしているが、補殺数は右翼手の中でナ・リーグ2位の11個を記録している。遊撃手時代には不安定だった送球は、今では外野からストライク送球を連発できるようになった。

さらに、守備力を数値化した守備防御点(DRS)は+28を記録している。これは今季のMLB全体で最高の値だ。右翼手が記録したDRSの歴代最高値はイチローやムーキー・ベッツが叩き出した+30。残り6試合の活躍次第ではタティスJr.はこれを超えるかもしれない。

これまで縁のなかったゴールドグラブ賞も最有力候補として名前が挙がるはずだ。さらにはリーグで1人だけのプラチナグラブ賞に選ばれる可能性もあるだろう。リーグ最多エラーからゴールドグラブ級の名手へ。これは今季のパドレスにとって最大の、嬉しいサプライズと言っていいのかもしれない。

【訂正】一部記載に誤りがありました。お詫びして訂正いたします(9月26日)

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