やめてみて、自分らしく やましんレディースセミナー、漫画家わたなべぽんさん講演

講演するわたなべぽんさん

 各界の第一線で活躍する女性を講師に迎える「やましんレディースセミナー」(主催・山形新聞、山形放送)の2023年度第5回例会が25日、山形市の県総合文化芸術館(やまぎん県民ホール)で開かれた。漫画家わたなべぽんさん(尾花沢市出身)が「やめてみた生活のすすめ~本当に必要なものが見えてくる暮らし方・考え方」と題して講演。自身に合った生活習慣や考え方を見つけ、実践することで「自分らしく生きてもいいという自己肯定感を得られる」と語った。以下は講演要旨。

 私が手がけているエッセー漫画は、自身の日常で起こったことや、そのときに感じたことなどを描いている。著書「やめてみた。」シリーズでは、日々の生活で本当に必要か分からないものは、思い切ってやめてしまおう-という例を紹介している。

 独身時代から使っていた古い炊飯器が壊れたことがあった。新しいのを買わずに土鍋でご飯を炊いたら、飽きることなく生活にフィットした。テレビのつけっ放しをやめてみると、音楽や読書の時間が増えて生活が豊かになった。カードやレシートで分厚くなっていた長財布を小さい財布に変更したところ、とても身軽になれた。

 日用品だけでなく心の中でもやめたことがあった。一つが人間関係だ。約束の時間を守れない友人にモヤモヤすることがあったが、思い切ってその人との関係をやめたら気持ちが楽になった。時間が経過しても、いつか再会したときに楽しく話せるのが友人の良さでもある。ちょっと距離を置くというのが「心の中でやめてみる」ことだ。「察してほしい」というのもやめて、希望は言葉で伝える方が行き違いは減る。

 私は子どもの頃からコンプレックスが強かった。学校への忘れ物が多く、教科書を持たずに登校して授業を受けたことがあった。周囲と一緒に課題をこなすのも苦手だった。「私は何で駄目なんだろう」と悩み、思春期になっても大人になっても変わらなかった。

 だが、やめてみる生活を続けていくうちに、自分がいかに“普通”にとらわれて生きているのかに気付いた。「こうあるべき」をやめ、自らに合う方法に変えることは、新たな選択を実践するということを意味する。それは「私らしい生き方をしてもいい」と自己肯定感を得ることにつながる。自分らしいというのは、何だかほっとして、肩の力が抜けるような感覚だ。

 この十数年間で東日本大震災が発生し、新型コロナウイルス感染拡大があった。ある日突然やってくる厄災の前では、人はどんなに頑張ってもずっと同じではいられない。だからこそ自分の中で立ち上がる強さ、変わっていける前向きさを育てていかなければならない。「やめてみる」という小さな選択が、皆さんの強さにプラスに働いたらうれしい。

自分に合った生活習慣を考えた、やましんレディースセミナー=山形市・やまぎん県民ホール

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