「四谷大塚」では講師が強制わいせつ…塾・学校で子どもが「性被害」受けた“疑い”がある場合に親は何をすべきか?

相変わらず、教職者による児童・生徒へのわいせつ事件が後を絶たない。

9月10日、東京・練馬区の公立中学の現職校長A(55)が、元教え子の女子生徒のわいせつな画像を所持していたとして、警視庁に児童買春・ポルノ禁止法違反(単純所持)の疑いで逮捕された。わいせつ画像は、校長室に保管されていた。Aは「再び見ることがあると思い保存した」と容疑を認めているという。

さらに、翌11日、大手進学塾「四谷大塚」の元講師の男B(24)が、教室で9歳の女児の両足をつかんで持ち上げ、下着が見えるような体勢にしてスマートフォンで写真を撮ったとして、警視庁に、強制わいせつと東京都迷惑防止条例違反(盗撮)の容疑で再逮捕された。Bは、同じ女児に、教室内で下着が見える格好をさせ、「おしりペンペンされます」など言わせた強要などの容疑で8月に逮捕されていた。

子どもが学校や塾で、教職者による危険にさらされているとあっては、子を持つ親としてはたまったものではない。

ある学習塾関係者はこう話す。

「学校ももちろんですが、学習塾やプールなど、習い事関係も実は性加害は多い。『四谷大塚』の件は氷山の一角でしょう。特に大学生がアルバイトで講師に入っているようなところは、そうした意識の低いロリコン趣味を持つやからが紛れ込んでいる可能性がありますから注意が必要です」

子どもから性被害に関する “カミングアウト”があったら?

もしわが子が、塾や学校で性被害にあっている可能性があるとしたら、親はどうすべきか。

特に、詳細が分からない幼児や小学校低〜中学年くらいのわが子が、例えば「先生が体を触ってくる」「スマホにお友達の写真がたくさん入っているのを見た」などとなにげなく話し出し、性加害が疑われた場合、親は最初に何をすべきか。

刑事事件などの対応も多い伊﨑竜也弁護士はこう話す。

「まずはお子さまから詳細を聞くべきです。可能であれば、録音を採り、事後でも構わないので、メモ等に残しておきましょう。

その上で、単なるスキンシップやコミュニケーションの領域を超えていると考えられる場合には、まずは各都道府県に設置されている『性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター』に相談しましょう。同センターでは、電話やメール等で性被害に関する相談をすることが可能です。同センターへの相談のみで解決が難しい場合には、学校や児童相談所、警察、弁護士への相談をご検討ください」

伊﨑弁護士は、その際、「仮に性加害が事実であった場合、一番の被害者はお子さま自身ということ」を最も忘れてはならないこととして挙げる。

性加害が疑われる場合、親はことさら不安に思ったり、怒りが込み上げてきたりしがちだが、まずは冷静に、性加害があったと決めつけず、何が子どもにとって最善なのか、よく落ち着いて行動する必要がある。それは子どもに話を聞く際にも大切なことだという。

「お子さまから性被害に関するカミングアウトがあった場合、『なんでもっと早く言わなかったの!』と怒ってしまう例もあるかもしれません。お子さまのことを大切に思うがゆえの反応とは思いますが、一番の被害者はお子さまです。さらに深い傷を与えることがないよう、決して怒らず、落ち着いて話を聞きましょう。

また、お子さまは事の重大性を分かっていない場合も多いです。あまり深刻な問題として聞くのではなく、『もっと知りたいから教えてね』という感覚で、できる限り多くの情報を集めましょう。ただし、お子さまが話したがらない場合は、無理に聞き出すべきではありません。可能な限り聞き出した後は、児童相談所職員やカウンセラー等の専門家に任せましょう。

お子さまがひととおり話してくれた後は、必ず『話してくれてありがとう』と伝えましょう。お子さまは親御さまの反応を敏感に察知しています。子どものカミングアウトは非常に勇気がいることです、必ずその勇気をほめてあげましょう」(伊﨑弁護士)

「日本版DBS」の議論

一方、教職者による性加害をめぐっては、「日本版DBS」の議論が進められている。 DBSとはイギリスの制度で、「Disclosure and Barring Service=前歴開示および前歴者就業制限機構」を指す。子どもと関わる仕事への就職希望者はDBSから、性犯罪歴がないことを証明する「無犯罪証明証」の交付を受け、雇用主側に提出しないと就職できない。

新設された「こども家庭庁」で今秋の臨時国会への提出が予定されていたが、対象となる前科の期間の上限などについてさらに議論が必要だとして、政府は今国会での提出を見送る方向だ。

確かに性犯罪は再犯率が高い。また、DBSの対象範囲は学校などに限られており、民間の学習塾、学童クラブ、水泳などの習い事教室などは対象外。そうした施設には「認定制度」を取り入れることも検討されているというが、最善の方法は何か、議論を重ねる余地はありそうだ。

管理者が “味方”になるとは限らない

子どもが性被害にあっている可能性がある場合、親は、学校やこうした事業者にはどう伝えるべきか。前出の伊﨑弁護士の話。

「性加害が深刻なものでない場合や、紛らわしい行為にとどまる場合は、管理者にその旨を伝えることで、改善される場合もあります。しかし、管理者が必ずお子さまや親御さまの味方になってくれるとは限りません。むしろ、加害者の味方をしたり、事実を隠蔽(いんぺい)する場合もあります。ですので、親御さま自身から直接管理者に伝えるより、やはり、警察や児童相談所、弁護士等を通じて懸念を伝えることが得策かと思います」

こうした子どもへの性加害について、伊﨑弁護士は最後に改めてこう話した。

「子どもの性被害については、性加害の目撃者がいなかったり、未熟でうまく説明できなかったりと、うやむやのまま『無かったこと』にされてしまうケースが数多くあります。しかし、このような性被害は、言うまでもなく子ども自身に深い傷を与えますし、助けてくれなかった大人たちへ不信感を募らせる原因にもなります。性被害の事実を知った親御さまとしては、まずはワンストップ支援センターや児童相談所、警察等に相談し、お子さまのケアやさらなる被害を防ぐための行動を起こすべきです。

一方、繰り返しになりますが、一番の被害者がお子さまであることも忘れてはなりません。上記のような行動を起こす場合には、必ずお子さまの意思を尊重し、心の傷を深めることがないよう、留意すべきです。お子さまからのカミングアウトを聞いて、どうしたらいいか分からない場合には、ぜひ、弁護士にご相談ください。弁護士であれば、さまざまな相談窓口のご紹介や、場合によっては刑事告訴や加害者への損害賠償請求をお手伝いすることもできますので」

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