宝塚歌劇 月組トップの月城かなと退団会見「最後まで男役を追求していきたい」 芝居の月組体現、人気集める

退団会見に臨む月組トップスターの月城かなと=大阪市北区(撮影・中西幸大)

 宝塚歌劇団を2024年7月に退団すると発表した月組トップの月城(つきしろ)かなとが26日、大阪市内で会見を開いた。「芝居の月組」を体現する正統派男役として人気を集めた。会見では「最後まで男役を追求していきたい」と語った。

 横浜市出身。2009年に第95期生として入団し、「Amourそれは…」で初舞台を踏んだ。雪組に配属され、13年に「Shall we ダンス?」で新人公演初主演。17年に月組に組み替えし、21年8月、月組トップスターに就任した。繊細な表現力をはじめ、温かみのある豊かな歌声、凜(りん)としたたたずまいも大きな魅力だ。

 トップ就任時、歴代月組トップの名前を見ながら「月組を次へと繫いでいく役割をいただいた」と感じたといい、早い時期から「5作で退団と決めていた」と振り返る。「次に月組を担っていく子たちが育つ時期を考えたらそのくらいだと思った」と理由を明かす。

 月組のメンバーに退団を伝えたのは、宝塚大劇場で24日まで上演していた「フリューゲル」の千秋楽前日にあたる23日終演後。「組のみんなに伝える前にはすごくさみしくなって、決めていたことなのにこんな気持ちになるんだと驚いた。一人一人の顔を見ると泣いてしまいそうだったので、明るく伝えたつもり」と語る。

 相手娘役の海乃美月(うみの・みつき)にだけは、昨年「グレート・ギャツビー」の公演中に打ち明け、「自分の人生だから、自分のタイミングを考えて」と伝えた。海乃からは「フリューゲル」の稽古が始まる時に、同時退団の意向を聞いたという。

 海乃に対しては「ずっと同じ景色を見て、いろんなことに挑戦してきた。最後にどんな景色が見えるのか想像がつかないが、やりきったと思えればいいなと思う」と話す。

 目線や指先の動きなど繊細な仕草一つとっても観客を引きつけてやまない月城。「舞台の上では人となりがすべて出てしまう。人としての中身の分厚さを充実させたいと下級生の時から取り組んできた」

 雪組から月組への組替えは大きなターニングポイントになった。「毎日同じメンバーで公演をつくる中で、全く新しい環境に身を置く機会をいただいた。今では自分のいた組は月組と言えるし、組替えをしてよかったと思えるようになったことがうれしい」と語る。

 月組への深い思いを何度も口にした月城。「トップとしていられるのは組のみんなのおかげ。元気な姿で舞台に立つことで感謝を返していこうと思ってやってきた。胸を張って月組生として卒業できるように、最後まで舞台を務めたい」と締めくくった。

 今後の出演予定は「フリューゲル-君がくれた翼-」「万華鏡百景色」(東京宝塚大劇場で10月14日~11月19日)のほか、「タカラヅカスペシャル2023」(梅田芸術劇場で12月21、22日)、月城さんのコンサート「G.O.A.T」(梅田芸術劇場で1月17~31日)にも出演予定。

 トップコンビの退団公演は24年に上演の「Eternal Voice 消え残る想い」「Grande TAKARAZUKA110!」(宝塚大劇場で3月29日~5月12日、東京宝塚劇場で6月1日~7月7日)。 (小尾絵生)

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