シーズン移行の会見を取材「かなり慎重になっている」印象だった/六川亨の日本サッカーの歩み

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Jリーグは9月26日に理事会を開催し、終了後に『シーズン移行』と『2024シーズンのクラブライセンス交付』についての記者会見を実施した。

『シーズン移行』に関しては、特に進展したことはなかった。これまで報道されてきた通り、ACLが“春秋制”から“秋春制”に移行したことと、クラブW杯が32チームと参加チーム増で4年に1回の大会に拡大されたことが『シーズン移行』を検討するきっかけとなったことが報告された。

Jリーグとしては、ACLに4年に2回は優勝することで、クラブW杯には2クラブが参加できるようにして、さらにクラブW杯ではベスト8以上を目標に置いている。こうした好成績を収めることで、現在は浦和の年間経営規模80億円を、J1クラブならアヤックスやベンフィカ(ヨーロッパの中位クラブ)の年間200億円まで引き上げたい考えがある。

しかしながら、ヨーロッパの5大リーグの成功はCLとELがもたらす収益にあり、現状クラブW杯は“おまけ”のようなものだ。これを日本に当てはめるならACLでの成功ということになるが(24-25シーズンから優勝賞金は3倍の約17億円になる)、10月3日のACL、川崎F対蔚山戦や4日の浦和対ハノイ戦、甲府対ブリーラム戦がどれほどの注目を集め、ファンが詰めかけるのか。正直、心許ないところだ。

海外移籍による移籍金の増加は見込めるものの、まだまだJのクラブは「商売上手」とは言えず、よく言えば「選手の希望を叶えてあげている」ものの、海外クラブからは「足元を見られている」印象は拭えない。カタールW杯での日本代表の健闘と、9月のヨーロッパ遠征での好結果から日本代表の試合はコンテンツとしてアジアで認知されつつあるかもしれないが、代表クラスが次々と海外へ移籍している現状で、Jクラブの試合の放映権がグローバルコンテンツに成長するとは思えない。ここらあたりがサウジアラビアの4クラブとの決定的な差と言えよう。

それでも夏場の試合を避けることによってメリットもある。走行距離やインテンシティなどの選手個人データはいずれも“秋春制”のヨーロッパのクラブの方が数値も高い。

ただし、懸案事項――『ステークホルダーとの年度の異なり』、『降雪地域への対応』、『移行期の対応』、『寒い中での試合数の増加』といった重要課題については手つかずのままで、「シーズン移行で発生する費用、降雪地域への対応などは項目の整理がまだ終わっていない」(樋口順也フットボール本部長)のが現状である。

野々村芳和チェアマンも「移行は難しい問題」と認めつつ、「(移行するかどうかで)感情的になることはなくなってきている。いい対話はできている。シーズンを変えるのが主目的ではなく、日本にとって何がいいのか。日本のサッカーを成長させるための土壌はできてきているので、みんなで目指す方向を見つけたい」とシーズン移行に含みを持たせた。

今後は「クラブの話を聞きながらシミュレーションしたい。実行委員にはクラブの考えを聞きたい」とも樋口フットボール本部長は話していた。シーズン移行に関して、「かなり慎重に精査しようとしているな」という印象を受けた記者会見でもあった。


【文・六川亨】

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