船越英一郎主演明治座150周年記念公演『赤ひげ』制作発表会レポ

船越英一郎主演『赤ひげ』が明治座にて10月28日より、そして12月14日より大阪・新歌舞伎座にて上演される。

山本周五郎の傑作小説「赤ひげ診療譚」の舞台化となる本作は江戸時代の 小石川養生所を舞台に、武骨で謎めいた医師「赤ひげ」と青年医師、そして貧しい患者 や市井の人たちとの魂の交流を描く。
患者に医術を施すだけでなく、患者の抱える事情にも踏み込み献身的に面倒を見る 新出去定(にいで・きょじょう)通称-「赤ひげ」-役は、名優・船越英一郎がつとめ、脇を固めるメインキャストには長崎遊学を終え、小石川養生所に医員見習いとしてやってくる保本登役に新木宏典、同じく小石川養生所で医員として働いている若き医員 津川玄三役に崎山つばさ、森半太夫役には猪野広樹高橋健介がWキャストで出演。とある患者を献身的に看病する女中・お杉役には菅井友香、養生所で女中として働く お光役には過去テレビドラマなどで船越英一郎と多くの共演経験を持つ山村紅葉
『赤ひげ』は1972年から73年にかけてNHKで放送されたが、近年では2017年、NHK再びテレビドラマ化、主演は船越英一郎、つまりテレビ版と舞台版の両方で「赤ひげ」を務める。
都内で制作発表会が行われた。登壇したのは、船越英一郎、新木宏典、崎山つばさ、猪野広樹(Wキャスト)、高橋健介(Wキャスト)、河相我聞、菅井友香、山村紅葉。
大ベテラン俳優である船越英一郎、実は今回が初舞台、初主演、初座長、もちろん明治座もお初、という”初もの”ずくしとなっている。

船越英一郎「2017年からテレビドラマとして大切に演じ続け…今回は装いも新たに!お声をかけていただきまして。今、63歳です、恥ずかしながら初舞台、初座長、歴史ある明治座さんの150周年記念公演、大変な栄誉、そしてとてつもない重責を担って…とにかく初の舞台ですから、63歳、キャリアも41年、役者が初の舞台、懸命にあがき、もがき、のたうち回る、その姿を皆さまにほほえましく楽しんでいただき、そしてその先に『あ、自分もまだまだやれる…63歳でもあんなに頑張れるなら…』と…皆様の小さな勇気に繋がっていただければ、役者冥利(みょうり)に尽きるかなと思っております。ぜひたくさんの方たちにきていただきたい、そして今、完全に仰ぎ見るという状態ではないときに『赤ひげ』という作品を皆さんにお届けするという…そんなところも受け取っていただきたい…よろしくお願いいたします」と挨拶。

新木宏典「『赤ひげ』という作品、明治座150周年、プレッシャーを感じます。また、船越英一郎さんの初座長、絶対に失敗することは許されない(笑)、プレッシャーを感じながらも、でもこのプレッシャーが気持ちよく『やってよかったな』と…明治座の150周年、飾れたなと、という作品になる自負もあります。(稽古は)すごく充実した毎日をおくらせていただいてます。充実した時間を過ごして本番を。医療従事者の方々がコロナ禍で感じた大変さが、江戸時代にも違った形であったのだなと。重いテーマが扱われているこのタイミングでこの作品を皆様に。、責任を持って演じたい」

崎山つばさ「まさに稽古真っ只中でございます。色々と迷うこともあって、個人的にはすごく追い詰められていて、迷いもあり、崖っぷちに追い詰められているところはあるのですが、船越さんが近寄ってくれていて、個人的に言葉をかけてくれたり。若い医員役のキャストを集めて一緒に稽古してくれたり。崖っぷちの自分を救ってくれる意味で、本当に『崖の帝王』だなと、すごく思います(一同、笑「うまいこと、言った!」と船越英一郎)。作品のテーマでもある『生きる』ことだったり、生きづらいこと…観にきてくださる方に生きるヒントになれば」

猪野広樹「江戸時代のお話ですが、今は技術も医療も発達しています。わからないことが多かった、その中での医療、人の命を助ける、難しいテーマだと思います。赤ひげたちの周りには、さまざまな生と死があり、当たり前の熱量でできる作品ではないのですが、皆様に最高のエンターテインメントを、面白い舞台を届けられたら」

高橋健介「稽古場でのお話をしたいと思います。稽古初日に船越英一郎さんがすごく気さくに話しかけてくれて。原作の小説を置いといたら、船越さんが『読みたい』と。読んでて稽古に呼ばれて、開いたまま、後ろ向きに置いて、そのまま忘れてしまったのか、お帰りになられたんですが、僕はこの続きを読むのか、閉じていいのか…一旦、栞を挟んで…素敵な作品になると思います。ぜひ、本番をお楽しみください」

河相我聞「船越さんとはたくさん共演させていただいて、また、初舞台でご一緒できる、非常に光栄で嬉しい限りです。今回は長屋の住人ということで、ちょっと変わった役といいますか、難しい役で。心温まる作品、たくさんの方に観ていただきたいです」

菅井友香「素敵な先輩方と、そして明治座さん150周年記念ということで、今回の作品に挑ませていただけること、本当に光栄です。初めてのことが多い中で、試行錯誤しているのですが、とても充実した毎日を過ごしています。作品を通して皆さんに生きる力を『大変だけど、明日も頑張って生きよう!』と思っていただけるパワーをお届けできるように精一杯勤めて参ります」

山村紅葉「明治座さんは3年ぶりで、また、何十年とご一緒しております船越さん、初座長ということで本当に嬉しく、お稽古しております。今回は小石川養生所の女中ということで、お料理をしたり、洗濯をしたり、お掃除をしたり、色々しなくっちゃいけない、家事はとっても苦手なもので(笑)。演じさせていただく、若い時はわがまま放題な(笑)、最近は、ヤクザの女親分、客席走り回るような、そういうのは事前に…今回はとっても…洗濯はどうするんだろう、とか色々考えながらやっておりますが、でも、船越さんとは夫婦役もさせていただきました。友香ちゃんはとっても可愛くいてくれるので本当の娘か妹か、みたいに思っております。また、私の大好きなイケメンさんが…嬉しくってドキドキしてるんですが(笑)、今はひたすら眺めて、向こうからお声がかかんないかしら?と(笑)、そんな風に楽しくしております」

それから主題歌の発表、ここで初披露。なんと歌い手は坂本冬美!作詞は演出の石丸さち子、作曲は宮川彬良。タイトルは『人間讃歌』、情感たっぷりのメロディ、そして坂本冬美の歌唱、思わず、船越英一郎、涙ぐむ。

坂本冬美よりコメントも到着し、MCが読み上げた。

「船越英一郎さん初座長公演の主題歌を歌わせて頂くお話を頂き、大変光栄に思うと同時に、そのような記念すべき舞台で私の歌声が流れる事を想像しますと、今まで感じた事のないような 緊張感が走りました。 今年の春、ドラマで船越さんの元恋人役を演じさせていたご縁もあり、「赤ひげ先生」を演じる上で、船越さんの心が動くような歌を歌わねばと、強く感じました。
そして楽曲を頂き初めて詞を読み、曲を聴かせていただきました時、石丸さち子先生と宮川彬良先生の切なくも温かく、ふつふつと力が湧いてくるような素晴らしい作品に、私自身のさまざまな出来事が重なり、感情が込み上げて来て何度も泣きそうにな りました。 レコーディングの時は船越さんや出演者の皆さまが舞台に立た れているお姿を、その舞台をご覧になられているお客さまのお顔 を思い浮かべながら、魂を込めて歌わせていただきました。 私も船越さんの初舞台を、お客さまとご一緒に、楽しみに拝見させていただきます。 公演の大成功を心よりお祈り致しております」

船越英一郎は「この曲聴いただけで十分、伝わります!素晴らしい歌、楽曲」と大絶賛。「この歌が舞台で届けられる、この曲を初めて稽古場で聴いた時に文字通りに心が揺さぶられました。この曲に感動をいただきました。稽古場でこの曲が流れると泣いちゃうんです。石丸さんの言葉、坂本冬美さんの歌声に負けないように!この楽曲に負けないような舞台をこのメンバーで作り上げなきゃいけない。大変なエールであると同時に私たちにとって、また一つ乗り越えなければならない大きな山をいただいた、素晴らしい曲を思いを込めて歌ってくださった、坂本冬美さんに感謝を申し上げます」と力強く。

それから質疑応答。改めて初座長、明治座150周年、そして長丁場の公演について船越英一郎は
「『赤ひげ』に挑む、これは険しくでかい山に、大冒険にでなきゃいけないなと…ドキドキしたところにいるんですけれども。稽古場は皆さんのおかげで非常に楽しく…本番の足音が近づいております。『赤ひげ』という舞台、赤ひげという役は私にとってはライフワーク、役に挑める幸せだけを噛み締め頑張っていこうと。人生初めての舞台は全部苦労。地獄を見るか天国を見るか。自分のフィールドじゃないところから冒険に出てしまった」とコメント。

また、顔合わせの時の話、山村紅葉が「『初舞台なんで、力を借りて』とかすごく謙虚に仰ってて、『2時間ドラマの帝王』ですが、2時間の現場でも全然、偉そうな、そういう感じは全くなく、謙虚な方なので、変化は今のところは感じておりません。いつもの船越さん、(稽古場は)楽しいです」と語る。
また、オファーを受けた時のことについて船越英一郎は「還暦を迎えることになった3年前、社長から『還暦というのは新たに生まれ変わる、何か新しいことに、違うことをやりましょうよ』、舞台はずっと逃げてた。『ずっと逃げている舞台がありますよ』と。ああ、言い出されたと思って。じゃあ、ここは一つ清水の舞台から!そうしたら明治座さんが150周年記念というとんでもない大きな栄誉が。そこにまんまと。今回舞台を務めさせてもらおうと思った…もう一つの理由は今までは映像の中でしたが、去年40周年を迎えまして、応援してくださってる皆さんに直に感謝の気持ちを示すということが…どうしてもテレビとかになってしまいます。直に感謝をしたい、という思いもございまして。そして今回の!初舞台!(この想いが)背中を押してくれました」そして「若い時に若気の至りで40になるまで劇団を構えてる、劇団を率いておりまして。そこで脚本を書いて、演出をしていた、そうやって本当に小劇場から始めた劇団、そういうアンチテーゼみたいなものを持ってやってた身としては…。今、皆さんの前に立っておりますが、緊張するんです。それで舞台から遠ざかっていました…」

作品の魅力については「『赤ひげ』は60年以上前に書かれた作品ですが、その時代を山本周五郎先生がものすごく鮮やかに、そして深い鋭いメスで切り込んでいる、そういう作品だと思っています。そこに描かれているものは、どの時代に世の中に押し出されても、この作品は必ず、その時代の世相を映す。そして、その時代の人の情をきちんと描きこんでいる。それだけの力があると。コロナの話がありましたが、江戸時代にも。これは医者にとって全ての病…その中で医者がもがきあがき、苦しみ、そして患者たちも闘い、いつこの病から抜け出せるのか、まさに我々がこの数年に経験してきたこと。江戸の世では日常だったと。今よりもっと絶望してしまうことがたくさんあるなと。人々はどこかで希望を探している、なんとか希望を見つけ出して、日々…そんなことが今を生きている我々が大きな…生きる意義とか、そういうのを必ずもたらしてくれる作品、それがこの作品の大きな魅力だと思います」と力強く。
また稽古場エピソードについて
船越英一郎は「僕は(『赤ひげ』は)青春ドラマだと思っています。『赤ひげ診療譚』は言い換えれば『赤ひげ成長譚』でもあると。『赤ひげ』に関わる若い医師たち、そこに働く若い女中、赤ひげと向き合う、また触れ合うことによって少しずつ自分自身の殻を破り、そしてそれぞれの中に自我がきちんと目覚める、独立する、成長を遂げる、その成長譚かなと思っています。だから稽古場も、我々の関係、それがそのまま、小石川養生所の若い医師たちと赤ひげの関係になっていく。皆さんの前にたったとき、絵も言われず、そこに流れている何かが、皆さんに感じ取っていただけることが、一番このあたりが、『赤ひげ』という作品を楽しんでいただく、あるいは大きな要因になるかもしれないと思って、稽古場では厳しく…(ここで周囲から笑い声が)、その向かっていくエネルギーを全て私が吸い取り(笑)、そんな感じで楽しんでます(笑)感じとってもらえれば」と笑いも交えながら。
それから新木宏典が「船越さんってセリフ覚えるのが早いんですよ。常に完璧で…抜き打ちでセリフ合わせを。その抜き打ちがあるからこそ…いつも完璧にセリフを覚えている船越さんのおかげで、僕も台本を覚えられています」それを隣で聞いていた船越英一郎は「君はいい奴だね。それは俺がセリフを覚えるために利用してるんだよ!(笑)」と(笑)。新木宏典は「こうやって寄り添ってくれる(笑)」と語る。

また新木は、稽古場で船越が抜き打ちでセリフ合わせに誘ってくれるとエピソードを披露し、「いつも完璧にセリフを覚えている船越さんのおかげで、僕も台本を覚えられています」と言う。これを聞いた船越は「君は良いやつだね……それは俺がセリフを覚えるためにやってるんだよ!(笑)」と続け、仲の良さをのぞかせた。また、”差し入れ”について、菅井友香から「見たことのないお菓子とか…」とコメント。高橋健介は「僕はWキャストなので、シングルキャストの皆さんとかが相当お疲れの中でもう一度同じシーンをやることに申し訳なさもありますが、船越さんが率先して『頭からもう1回やろう!』と呼びかけてくださるのがめちゃくちゃうれしい、ありがたいです」とコメント。エネルギッシュな船越英一郎座長の一面。「少しずつ役と現実の我々が同化していくので」と船越座長。

会見終了後はフォトセッション。

それから公演成功を祈願しての鏡開きも。一発のみなので、木槌を持ってる面々はやや緊張。

最後に船越英一郎が「日本人の原点、一大エンターテインメントに!」と締め括って会見は終了した。なお、」鏡開きの樽酒は福井県にある黒龍酒造株式会社の酒、創業1804年(文化元年)。鏡開き、古くから日本酒は、神事を営む際に神酒として供えられ、祈願が済むと参列者でお酒を酌み交わし、祈願の成就を願う。

あらすじ
江戸・小石川養生所の医長・新出去定(にいで・きょじょう)-通称「赤ひげ」-(船越英一郎)は、名医ではあるが武骨で変わり者である。貧しい者 たちを救うため身を粉にして働き、時には経費削減を命じる公儀に逆らうことも厭わない。 新しく医員見習としてやってきた保本登(やすもと・のぼる)は、養生所に足を踏み入れた瞬間にこう思った。自分はこんなゴミ溜のような所にいるべき 人間じゃない・・・長崎遊学を終え幕府の御目見医になるはずだった保本は赤ひげに反発する。 しかし同僚の津川玄三(つがわ・げんぞう)や森半太夫(もり・はんだゆう)、養生所を訪れる様々な患者たちと関わって行く中で、少しずつ保本の 態度に変化が生まれて行く。医術とは何か?その問いに対する答えはあるのか?赤ひげと若い医者達の、戦いの日々は続く。

公演概要
日程・会場:
東京
2023年10月28日〜11月12日 明治座
大阪
2023年12月14日~12月16日 新歌舞伎座
明治座創業 150 周年記念 『赤ひげ』
原作:山本周五郎『赤ひげ診療譚』より
脚本:堤泰之
演出:石丸さち子
出演:船越英一郎 新木宏典 崎山つばさ 猪野広樹(W キャスト)高橋健介(W キャスト)/菅井友香/山村紅葉

問い合わせ
東京
明治座チケットセンター 03-3666-6666 (10:00~17:00)
大阪
新歌舞伎座テレホン予約センター 06-7730-2222(10:00~16:00)
公式サイト
東京

大阪
https://shinkabukiza.co.jp
公演公式 Twitter: @akahige_stage

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