保育士の悩み「人間関係」「理想とのギャップ」 交流会で共有、変化後押し

保育現場での悩みを語る「保育のお仕事ミーティング」の参加者(京都市北区・新大宮広間)

 保育の悩みを分かち合い、役立つ情報を共有しよう―。保育園で働く保育士や子どもと関わる仕事を目指す学生、資格を生かして新たな道を歩き始めた人たちの集う交流会が、京都市内で開かれている。多くの保育士が職場以外の情報に触れる機会が限られるなか、悩みを相談し、スキルを生かす方法を探る貴重な場になっている。

 北区の新大宮商店街で月1回開かれる交流会「保育のお仕事ミーティング」を企画するのは、保育士の坂口弥生さん(51)=左京区。保育園に長年勤め、現在は依頼のあった家庭を訪問して子どもと一緒に過ごすシッターとして働く。

 交流会を始めたのは、保育士やシッターの悩みを解決することが多くの子どもや家庭を救うことにつながると考えたから。仲間に声をかけ、これまで病棟保育の経験者や男性保育士らが毎回5、6人参加し、子どもとの信頼関係づくりや働きやすい職場環境について話し合ってきた。

 7月の交流会に参加した女性保育士(43)は子ども4人の育休をはさんで20年間保育園で働いてきたが、今年退職した。「集団保育の現場や働く環境が変化し、保育士同士で話し合う余裕がなくなっている。大人の都合でなく、子どもの自主性を伸ばす保育がしたい」との思いが募ったという。職場の風通しの悪さも感じたといい、交流会の場ではやりたい仕事ができる働き方を坂口さんたちと一緒に考えた。

 厚生労働省の調査によると、常勤保育士の離職率は8.4%(2020年)。離職率は全産業の中で特に高いわけではないが、35歳以上の職場定着率が他の産業に比べて低い。退職理由は「職場の人間関係」が最も多く、「給料の安さ」「仕事の多さ」が続く。

 京都市も保育士の定着支援には力を入れている。コミュニケーションやマネジメントの研修、メンタルケアを実施するほか、国基準より多くの保育士を園に配置し、人件費への補助金に24億3千万円(23年度)を計上するなど待遇改善にも取り組む。

 それでも保育士が長く働き続ける環境づくりは容易ではない。「待遇の問題以前に、自分が思い描く保育ができないと悩む保育士が増えたと感じる」(坂口さん)。交流会では参加者が車座になって保育の仕事での不安や理想を話し、考えを深めるきっかけをつくっている。保育園以外で子どもに関わる働き方を紹介し、多世代が集まる施設を見学して仕事探しを手助けしたこともある。

 坂口さんは「仕事を変えれば理想が実現する訳ではない。自分の考え方や行動を変えるとうまくいくことも多い」と参加者の変化を後押しする。交流会を通して視野を広げてほしいといい、「今ある人間関係の中で折り合いをつけるのか、次のステップに進むのか。多くの人と対話を重ねて、やり直しや新たな道を踏み出すきっかけにしてほしい」と話している。

 開催場所は交流スペース「新大宮広間」(北区紫竹西桃ノ本町)。参加費千円(学生500円)。日程の告知や問い合わせの受付はインスタグラム@ichi.ring.shaで行っている。

【記者のつぶやき】

 長男が、京都市外の小規模保育事業所に3年間通った。0歳の入園時からお世話になった保育士の多くが卒園のタイミングで退職して驚いた。保育内容に満足していたが、保育士の苦労には思い至っていなかった。

 取材では「子の成長を応援したいという思いを保育士みんなが持ちながら、さまざまな事情で辞めている」と聞いた。保育士を支える仕組みが広がることを願っている。

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