「『神田川』を初めて聴いた時は感動して泣いてしまった」――「そのとき、歌は流れた~時代を彩った昭和名曲~」司会・太川陽介インタビュー

これまで不定期で放送されてきた「そのとき、歌は流れた〜時代を彩った昭和名曲〜」(BS日テレ・BS日テレ4K)が、好評につき月2回のレギュラー化。数々の音楽番組で司会を務め、同番組でも司会を担当する太川陽介が、番組の魅力を語る。さらに、普段はゲストの話を聞き出す太川にとっての思い出の曲や、“昭和”の音楽や時代にも迫る。

――「そのとき、歌は流れた」が不定期から月2回放送になりました。

「歌番組も、歌番組の司会をするのも好きだから純粋にうれしいだけですね。昭和の歌手の方はいろんなエピソードを持っていてサービス精神が旺盛なので、インタビューをしていても楽しいですしね。台本にない質問でゲストの方を驚かせて、本音や解説の富澤(一誠)さんが知らないことを聞き出せると『よし!』となります(笑)」

――レギュラー化後に、「よし!」ということはありましたか?

「第2回で坂本九さんの『上を向いて歩こう』にスポットを当てるので、(坂本さんの妻の)柏木由紀子さんがゲストで出演してくださいました。本番前にお話したら、ちらっとなれ初めの話をなさっていたので、歌終わりにそのお話を振ったら話していただけました。皆さんが知らない話ですし、富澤さんは『いただきました』と言っていたから、今後はさも自分が聞いた話のように解説するんじゃないかな(笑)」

――そういうお話をコントロールするのが、もう1人の司会の吉川美代子さんの役回りなのですか?

「いやいや、もう野放しです(笑)。レギュラー化後の収録もお話が盛り上がったけど、自由にやらせてくれるので、それがまた楽しい!」

――名曲が多数登場しますが、印象が強いものはありますか?

「この番組をやっていて初めてだったけど、(第2回ゲストの)因幡晃さんの『わかって下さい』をランスルーで聴いていたら、涙が出ちゃいました。因幡さんは数年前に病気をされて、それを乗り越えて、しかも69歳になられてキーの高い曲を歌っている姿に感動しちゃって。本番で『昔よりも声、奇麗ですね』って言いたくなるくらいすてきで感動的でした」

――太川さんは昭和のほぼ真ん中に生まれています。この番組で知らない曲に出合うということもあるのでは?

「それが不思議と聴いたことがあります。昭和34(1959年)生まれなので、34年分の知らない曲があるはずなのに、ヒットした曲は知っている。ヒットした曲は世代や時代を超えてみんなに聴いてもらえるというのは、昭和の曲の特徴なのだと思います」

――番組は関係なく、太川さんの心の名曲も教えていただきたいです!

「『神田川』(かぐや姫)ですね。次回の収録に南こうせつさんがゲストで来てくださるので、番組に関係してくるけど(笑)。たしか、中学2年の時に野球部の練習から帰ってきてラジオをつけたら流れてきました。『なんだ、この曲』と感動して泣いちゃって、同棲の意味も大して分からないのに(笑)。それまで曲を聴いて泣くなんてことがなかったので、『神田川』が初めてでしたね。この曲がきっかけでギターを始めたので、芸能界に入るきっかけみたいな曲でもあります。『神田川』を聴くと、その時の胸がキュンとなる感じを思い出すので、自分でも歌ったりしますけど、この歌の真の世界観は、こうせつさん以外は出せないと感じますね。40年ぶりくらいにお会いするので、楽しみで仕方ないです」

――逆にこの曲を取り上げるなら、自分で歌いたい曲はありますか?

「言わないです。言ったら歌ってくれとなるので(笑)。昔は人の歌でもお客さんの前で平気で歌っていたけど、今は歌の怖さがだんだん分かってきて、緊張して、最近歌番組で歌ったら手が震えてしまって(苦笑)。なので、歌うかどうかは考えておきます(笑)」

――昭和の歌の魅力をどんなところに感じていますか?

「まず、昔の方がいいとか悪いの問題ではないと思っています。その上で、昔の歌の歌詞は作詞家が作ったポエムでもあると感じますね。吉川さんと『昔の歌の歌詞って、なんでよく覚えているのだろう』と話している時に思ったのは、話し言葉のイントネーションと曲のメロディーが割と似ているなと。例えば『見上げてごらん』と話すイントネーションと、『見上げてごらん夜の星を』の歌の中に出てくる『見上げてごらん』は同じなんです。だからスーッと心の中に入っていると思います。繰り返しになるけど、これはいい悪いではないですけどね。大作曲家の都倉(俊一)先生に、『今の曲はどうです?』って聞いたことありますけど、『彼らは彼らでいいよ』と話されていました。僕も息子の影響でAAAを聴いていたり、東京ドームに見に行ったりしていましたから」

――太川さんにとっての“昭和についても伺わせてください。

「時代的に右肩上がりだったと感じます。バブル景気も昭和が終わって3年後に終わっていますしね。個人的には、その恩恵を享受できてないですけど(笑)。僕だけのことでいったら、『青春』でしかない。ただ『しんどい青春』です(笑)。17歳で芸能界に入って、忙しいのはもちろんありますし、プロデューサーさんとか芸能界やテレビの世界の第一線で活躍している大人の方に認められようといつも背伸びしていたから『しんどい』という言葉が付く感じですね。そのせいか、50歳ぐらいで『まあいいか』となって、僕の今の一番好きな言葉です(笑)」

――番組をまだご覧になったことのない方に向けて、見どころを教えていただきたいです。

「歌はもちろん、映像をたくさん使って、この歌はこの時だったんだ、この年だったんだというのを分かりやすく紹介しています。いろんな昭和の歌番組がありますが、コンセプトがはっきりしているから自信を持って人に勧められます。ぜひ一度ご覧になっていただきたいです」

【プロフィール】

太川陽介(たがわ ようすけ)
1959年1月13日生まれ。京都府出身。76年にデビューし、77年リリースの「Lui-Lui」が大ヒット。歌手から司会、俳優と活動の幅を広げる。2007年開始の「ローカル路線バス乗り継ぎの旅」(テレビ東京系)が人気を博し、バス旅の達人としても知られる。

【番組情報】

「時代の名曲ステージ『そのとき、歌は流れた〜時代を彩った昭和名曲〜』」
10月11日スタート
BS日テレ・BS日テレ4K
毎月第2・3水曜 午後8:00〜9:54

太川陽介と吉川美代子が司会を務め、世相とともに名曲に迫る音楽番組。レギュラー化の初回では、南こうせつの「神田川」、美空ひばりの「悲しき口笛」、藤山一郎の「青い山脈」、橋幸夫と吉永小百合の「いつでも夢を」などを時代背景とともに紹介する。

取材/TVガイドWeb編集部 取材・文/山木敦 撮影/蓮尾美智子

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