【連載コラム】第31回:ワールドシリーズ連覇は今世紀1度もなし 昨季王者アストロズは挑戦権を得られるか

写真:アストロズは21世紀最初のWS連覇チームとなれるか

MLBの2023年レギュラーシーズンはいよいよ残り5日となりました。ナ・リーグはすでにブレーブス、ブリュワーズ、ドジャースと各地区の王者が出そろい、昨季のリーグ王者であるフィリーズのワイルドカード獲得も決定。ア・リーグはツインズの地区優勝、オリオールズとレイズのプレーオフ進出は確定しましたが、東地区と西地区の優勝がまだ決まっていません。東地区ではオリオールズがマジックを「2」としており、早ければ明日にも優勝が決まります。一方、西地区は日本時間9月26日の時点でレンジャーズにマジック「4」が点灯したものの、マリナーズの自力優勝が復活したため、レンジャーズのマジックは消滅。最後の最後まで熾烈な優勝争いが続けられています。

そのア・リーグ西地区でレンジャーズ、マリナーズとともに三つ巴の優勝争いを繰り広げているのが昨季のワールドシリーズ王者であるアストロズです。毎年、プレーオフの時期になると「21世紀に入ってからワールドシリーズを連覇したチームはない」ということが話題になりますが、アストロズは連覇への挑戦権を持っている唯一のチームです。終盤戦に入って下位チーム相手の取りこぼしが目立ち、思うように白星を積み重ねることができていないアストロズですが、6年連続で少なくともリーグ優勝決定シリーズまで駒を進めており、近年のプレーオフでの実績は圧倒的。プレーオフへの切符を手にすれば、今季も驚異的な勝負強さを発揮してくれるのではないでしょうか。

ちなみに、ワールドシリーズを連覇したチームは1998~2000年に3連覇したヤンキースが最後です。2001年にランディ・ジョンソンとカート・シリングの二枚看板を擁したダイヤモンドバックスが4連覇を狙ったヤンキースを破ったあと、2年連続で頂点まで上り詰めたチームは生まれていません。21世紀のワールドシリーズ王者とその翌年の成績は以下のようになっています。

2001年:ダイヤモンドバックス→2002年:地区シリーズ敗退
2002年:エンゼルス→2003年:77勝85敗で地区3位
2003年:マーリンズ→2004年:83勝79敗で地区3位
2004年:レッドソックス→2005年:地区シリーズ敗退
2005年:ホワイトソックス→2006年:90勝72敗で地区3位
2006年:カージナルス→2007年:78勝84敗で地区3位
2007年:レッドソックス→2008年:リーグ優勝決定シリーズ敗退
2008年:フィリーズ→2009年:ワールドシリーズ敗退
2009年:ヤンキース→2010年:リーグ優勝決定シリーズ敗退
2010年:ジャイアンツ→2011年:86勝76敗で地区2位
2011年:カージナルス→2012年:リーグ優勝決定シリーズ敗退
2012年:ジャイアンツ→2013年:76勝86敗で地区3位
2013年:レッドソックス→2014年:71勝91敗で地区5位
2014年:ジャイアンツ→2015年:84勝78敗で地区2位
2015年:ロイヤルズ→2016年:81勝81敗で地区3位
2016年:カブス→2017年:リーグ優勝決定シリーズ敗退
2017年:アストロズ→2018年:リーグ優勝決定シリーズ敗退
2018年:レッドソックス→2019年:84勝78敗で地区3位
2019年:ナショナルズ→2020年:26勝34敗で地区5位
2020年:ドジャース→2021年:リーグ優勝決定シリーズ敗退
2021年:ブレーブス→2022年:地区シリーズ敗退
2022年:アストロズ→2023年:???

21世紀に入ってからワールドシリーズ連覇に最も近づいたのは2008~09年のフィリーズです。2008年に岩村明憲さんが在籍していたチーム名変更1年目のレイズを破って1980年以来28年ぶりのワールドシリーズ制覇を成し遂げ、翌2009年もワールドシリーズに進出。しかし、松井秀喜さんが打率.615、3本塁打、8打点、OPS2.028の大活躍を見せたヤンキースの前に2勝4敗で敗退し、惜しくも21世紀初のワールドシリーズ連覇を逃しました。それ以降、ワールドシリーズ制覇の翌年にワールドシリーズまで駒を進めたチームは現れていません。

果たしてアストロズは地区優勝またはワイルドカードでプレーオフに進出し、今世紀初となるワールドシリーズ連覇への挑戦権を得ることができるのか。それともレンジャーズ、マリナーズとの三つ巴の戦いに敗れ、レギュラーシーズンで散ってしまうのか。MLBの2023年レギュラーシーズンは最後の最後まで目が離せません。

文=MLB.jp 編集長 村田洋輔

© 株式会社SPOTV JAPAN