慰安婦問題を糾弾する「日韓共同シンポジウム」の衝撃|松木國俊 日本側の慰安婦問題研究者が、「敵地」とも言うべき韓国に乗り込み、直接韓国の人々に真実を訴えるという、大胆で意欲的な企画が実現した。これまでになかった日韓「慰安婦の嘘」との闘いをシンポジウムの登壇者、松木國俊氏が緊急レポート!

「慰安婦の真実」研究者がソウルに大集合

去る9月5日、ソウル中心部に位置する韓国プレスセンターにおいて、慰安婦問題の嘘を追及する「第二回日韓共同シンポジウム」が開催された。昨年11月に東京で開催された第一回目に続く今回は、日本側の慰安婦問題研究者が、「敵地」とも言うべき韓国に乗り込み、直接韓国の人々に真実を訴えるという、大胆で意欲的な企画が実現したものである。

日本側からは麗澤大学特任教授西岡力氏、国際歴史論戦研究所所長山本優美子氏及び筆者の3名、韓国側は元延世大学教授柳錫春氏、落星台経済研究所研究員李宇衍氏、国史教科書研究所所長金柄憲氏の3名が登壇した。

会場には日韓の国旗が掲げられ、開会にあたり「国民儀礼」として両国の国家斉唱が行われた。韓国の公共の場で筆者は初めて「君が代」を堂々と歌うことが出来た。

続いて本シンポジウムの主催者である「自由統一のための国家大改造ネットワーク(以下自由統一ネットワーク)」代表の金学成氏より歓迎の辞があり、李承晩学堂校長の李栄薫氏及び国際歴史論戦研究所理事長の杉原誠四郎氏より祝辞が述べられた。

李栄薫氏は元ソウル大学教授で韓国や日本でベストセラーとなった『反日種族主義』の編者・著者としても有名であり、祝辞の中で次のように述べている。

「日本軍慰安婦問題は発生して32年。いまだにほとんどの韓国人が第二次大戦期に日本の官憲が朝鮮の女性達を強制連行し慰安婦にしたと信じている。これが嘘だと率直に指摘した学者や芸能人は即刻社会から抹殺されてきた。しかし2019年に『反日種族主義』を発刊してから世論の流れがすこしずつ変わりだしたのも事実である。道は遠くとも真の日韓友好実現のために希望をもつて進むべきである」

さらにハーバード大学ラムザイヤー教授のビデオメッセージもここで披露された。同教授は「慰安婦は性奴隷ではなく業者との契約にもとづく職業であった」との論文を発表し、韓国メディアや韓国系研究者たちから「金髪の日本人だ」と総攻撃を受けながらも自説を曲げず、信念を貫き通した気骨のある人物である。

こうして慰安婦の真実を訴える研究者たちが大集合した、画期的なシンポジウムの幕が開けた。

Photo by Kazuyoshi SASAKI

保守政治団体や市民団体も参加「慰安婦問題は明白な国際詐欺」

本シンポジウムは主催者である自由統一ネットワークを始め、韓国の保守系政治団体や市民団体の支援の下に開催されており、これに呼応して日本からも「新しい歴史教科書をつくる会」の呼びかけで「応援団」が結成され、13人が海を越えて会場に詰め掛けている。

シンポジウムの冒頭で韓国側の支援団体を代表して、自由統一党全国女性委員長であり、「全国お母さん部隊」常任代表の朱玉順(チュ・オクスン)氏から、韓国における「慰安婦詐欺」との戦いついての経過報告がなされた。

彼女は14年前から日韓関係の悪化がもたらす韓国の自滅を憂いて「お母さん部隊」を組織し、慰安婦問題で日韓離反を画策する元挺対協(挺身隊問題対策協議会―現在の日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯)代表の尹美香氏と対決してきた。その詐欺性を告発して逆に名誉棄損罪で訴えられ、有罪判決で執行猶予となったこともあるという。だが3年前に志を同じくする九つの市民団体が集まり「慰安婦詐欺清算連帯」を結成。朱氏はその代表となり尹美香と現在も法廷闘争を繰り広げている。

彼女は経過報告の中で、「30年以上も日韓外交を破綻させてきた慰安婦問題は明白な国際詐欺」であると断定している。慰安婦像については「日本への恨みと敵愾心のみを誘発させるとともに、むしろ韓国の過去の恥辱的歴史のみを再確認させるもの」として一刻も早く撤去すべきだと強く主張した。

登壇者の発言概要①西岡力氏「日本から始まった慰安婦問題」

Photo by Kazuyoshi SASAKI

韓国で日本統治時代を知っている世代は慰安婦が性奴隷ではなく戦地で売春業に従事していたことを知っていた。従って戦後の日韓交渉の過程でも韓国側より慰安婦問題は提起されていない。だが1989年に至って『朝日ジャーナル』に「朝鮮と朝鮮人に公式謝罪を百人委員会」なる組織が「日本国は朝鮮と朝鮮人に公式謝罪せよ」という意見広告を連載したことから、慰安婦問題が浮上した。

同委員会のメンバーであった青柳敦子という女性が「太平洋戦争犠牲者遺族会(以下遺族会)」なる韓国側の組織と連絡をとって「原告」となるべき元慰安婦を探し出し、裁判に必要な400万円を出すことを申し出た。これが慰安婦問題の全ての発端であり、その後遺族会は高木健一弁護士や福島瑞穂弁護士らの支援を得て日本で裁判を起こした。訴状には詐話師である吉田清治の「強制連行証言」が長々と引用されていた。

さらに朝日新聞も1991年から1992年にかけて吉田清治の偽証言などを基に「日本軍が女子挺身隊の名で朝鮮人女性を強制連行して慰安婦にした」という事実無根のプロパガンダを内外に拡散させ、慰安婦問題を日韓の外交問題に仕立て上げるための大きな役割を担った。同紙は2014年8月に吉田証言が「嘘」であることを認めたが遅きに失したと言わざるを得ない。

慰安婦問題がここまで大きくなった要因は韓国側にもある。梨花女子大教授尹貞玉氏が、日本人や在日朝鮮人が多数の虚偽を交えて書いた書物を参考にして『「挺身隊」怨念の足跡取材記」を書き、左派系のハンギョレ新聞がこれを1990年1月から連載した。彼女は同年12月に挺対協を結成。日本政府を追及する運動を始めた。

日本でも尹貞玉の動きに呼応して社会党議員が 同年6 月に参議院予算委員会で慰安婦について質問し、慰安婦問題に火をつけている。

日本の虚偽勢力が韓国の虚偽勢力を助けることで慰安婦問題が始まったのだ。

②李宇衍氏「朝鮮人慰安婦―どこからどうやって来たのか」

強制連行論者たちは「20万人もの女性が強制連行された」と主張しているが、客観的証拠は勿論目撃者すら見つかっていない。

元慰安婦としてトランプ大統領に抱き着いて有名になった李容洙氏は、1992年にTBSテレビで「ワンピース一着と靴一足をもらって喜んでついて行った」と証言していた。悪徳業者による典型的誘拐事件である。しかし2007年には米下院慰安婦被害聴聞会に証人として出席した彼女は「肩をこう囲んで片手で口をふさぎ、軍人は後ろから背中に何かを突き刺しながらそのまま連れてゆかれました。夜に。(私は)歴史の生き証人です」と証言している。ことほど左様に元慰安婦たちの証言には一貫性がない。

当時の雇い主と娼婦の間には年季奉公という合法的な契約が結ばれており、売春婦は志願者か、彼らの両親によって売春婦として売られた人々である。日本人がもし女性を直接的に徴発していたら、朝鮮の年寄りや若者は激怒して蜂起しただろう。男性たちは怒り自分はどうなっても日本人を殺したに違いない。

③柳錫春氏「慰安婦問題の司法化:歴史論争から法的闘争へ」

自分は2019年9月延世大学で行った「発展社会学」の講義で、「韓国の発展において日本帝国主義植民地時期の役割についてどのように評価するか」というテーマで学生と討論を行った。その中で学生たちに「慰安婦強制連行はなかった」「慰安婦の目的はお金を稼ぐことだった」と真実を語った。ところがこの部分について学生が承諾なしに録音してマスコミに提供したため、激しい世論の非難を浴び、大学からは一カ月間の停職処分を受けた。そればかりか挺対協が自分を名誉棄損で刑事告訴し、起訴されて現在裁判が進行中である。

自分は2020年11月に起訴されて以来、十数回の公判に臨んだが、2023年3月22日に裁判所は、検察側が当然提出すべき「慰安婦強制連行の証拠」を未だ提出していないという理由で裁判を「空転させる」と宣言した。慰安婦強制連行などなかったのだから、その証拠を提出できるはずがなく、公判を維持できないのは当然である。

最後にこのことを言っておきたい「真理があなたたちを自由にする」

④山本優美子氏「『慰安婦=性奴隷』に利用される国連・ILO・ユネスコ」

国連やILO(国際労働機関)及びユネスコ(国際連合教育科学文化機関)は日本政府に対して「慰安婦問題で謝罪と補償を求める勧告」をいくつも出している。「日本軍慰安婦は強制連行された性奴隷」と主張する側は、この勧告こそが「性奴隷があった証拠」だと声高に叫んでいる。

だが、国連機関は各国のNGOから寄せられる膨大な数の意見書の内容を詳しく調査するだけの時間も人的余裕もない。彼らは日本の左翼や韓国の反日団体が国連機関に送りつけた大量の「虚偽意見書」をそのままうのみにして日本政府に勧告をだしているのだ。

にもかかわらず日本政府が当初きっちりと反論しなかったことで、韓国の主張がそのまま世界に広がった。

現在、韓国の団体が慰安婦問題をユネスコの記憶遺産に登録しようとしている。是非日本と韓国の専門家・研究者が協力して「性奴隷」という嘘が登録されないよう全力をつくしたい。

⑤松木國俊「慰安婦の実態と日本の学校教科書の問題」

Photo by Kazuyoshi SASAKI

日本は韓国と同じように、民間の出版社が作成した教科書を文科省が検定し、そこで合格した教科書が学校で使用される。どの出版社のものを使用するかは、現場で生徒に教えている教師の意見によって左右されることが多い。だが教育現場は左翼組織である「日本教職員組合(日教組)が牛耳っており、採用されるために出版社は日教組の考えに沿った内容の教科書を作成することになる。

さらに日本の文科省にも左翼が進出している。教科書検定も左翼の検定官が行っており、日本人としての誇りを培う教科書は不合格とし、日本の歴史を不当に貶める教科書についてはほとんどフリーパスさせるのが実態である。

こうして日本の教科書には「慰安婦強制連行」の記述があふれることになる。しかし、強制連行が事実なら、抗議運動や暴動が朝鮮中で起こったはずだ。だがそのような事件の記録は一件もない。ならば朝鮮の男たちは娘が、妹が、恋人が目の前で強制連行されても何ら抵抗しない不甲斐ない人々だったことになる。韓国史における最大の汚点となるではないか。

当時の新聞記事からも分かるように、女性たちを誘引して中国に売渡していたのは悪徳業者であって、日本の官憲がそれを救出していたのが真実の歴史だ。両国の子供達から誇りを奪い去る「慰安婦強制連行」の記述を全て削除させるべきだ。

⑥金柄憲氏「韓国小中高教科書の慰安婦記述の実態と対策」

韓国の小中高全ての教科書に慰安婦問題の記述が見られる。それらは慰安婦に関する偽りの情報を記載することによって日本に対する漠然とした憎悪を子供達に植え付けている。例えば小学校用歴史教科書である『初等社会5-2』(金英社)を見ると次のように書いてある。

「日帝は1931年に中国を侵略し始めて以来、太平洋戦争で敗戦した1945年まで女性を戦場に強制的に連れて行き、持続的な性暴力を犯した」

中学校用『歴史』(飛翔)には次のように記述している。

「女子挺身勤労令を下し、女性たちまで動員したが、多くの女性たちを日本軍慰安婦として連れて行き大きな苦痛を経験させた」

高等学校用の歴史教科書となれば慰安婦関連の記述は詳細を極めている。まずリーベル社の内容はこうだ。

「日本軍は朝鮮をはじめ、中国、東南アジアなどで数十万の若い女性を日本軍慰安婦として強制的に連れて行き、性奴隷生活を強要した」「1944年には女子挺身勤労令を公布し、12歳以上40歳未満の女性を後方の兵站支援人材として動員した。この時、挺身隊等名目で強制徴発された人々の多くが日本軍「慰安婦」として連行された」

次に東亜出版の高等学校用教科書至っては次のように書いている。

「被害者たちは殴打や拷問、性暴力などで一生治癒しにくい苦痛の中で生きなければならず、一部は反人倫的犯罪を隠蔽しようとする日本軍により虐殺されたりもした」「慰安婦が逃走する場合、日本軍が直接追撃して逃走した慰安婦を射殺したりもした」

上記に例示した以外の教科書についても慰安婦関連記述は大同小異だ。だがこれらはすべて嘘である。

工場労働者だった挺身隊と売春女性だった慰安婦とは全く違う。さらに朝鮮では挺身勤労令は発令されておらず、挺身隊として連れて行かれて慰安婦となった事例は皆無である。

もし軍人が強制的に連れ去ったり、性暴力を加えたりしたら、これは重大な犯罪であり処罰記録が残っているはずだが、そのようなものは全く残っていない。

虐殺行為などあろうはずがなく、自分は韓国外交部(外務省)に対して「慰安婦虐殺の証拠があれば公開せよ」と請求したが、外交部の回答は「情報不存在」であった。虐殺された慰安婦など存在しないということである。

これから成長する子供たちに偽りと憎悪を教えることは、彼らの心性を荒廃させるだけでなく、日韓間の葛藤と対立の種を撒くだけである。これらの間違った教科書の記述は一部を訂正しただけでは解決にならない。慰安婦関連記述全体を削除すること、それが唯一の解決策である。

日本大使館敷地前で翻った日の丸

各登壇者の発言は以上の通りである。シンポジウムの翌日である6日(水曜日)は日韓の研究者、韓国の市民団体、さらに日本からの応援団が日本大使館敷地前に集合し、手に手に太極旗と日章旗を持って慰安婦の嘘を訴える集会を開催した。

すぐ近くの慰安婦像周辺では、慰安婦問題で日本政府を糾弾する「水曜デモ」が予定されており、我々との衝突も懸念されていた。だが蓋を開けると反日団体の40名弱に対して、こちら側は70名に達し、集会の規模と勢いで我々が圧倒的に優勢であり、日の丸を打ち振る日韓市民に対する妨害行為も一切なかった。

集会場に設けられた壇上には、代わる代わるシンポジウム登壇者や市民団体の代表が上り、「慰安婦の嘘」を道行く韓国市民に訴えかけた。その後歌手までが登場して我々を鼓舞する歌を連発し、会場はどこまでも盛り上がって行った。

集会を締めくくるにあたっては、山本優美子氏より、日韓の「歴史の真実を追求する勢力(真実勢力)」が連携することを訴える「慰安婦のウソと戦う日韓真実勢力共同声明」が発表され、大きな拍手が沸き起こった。

一般認識はまだまだ「強制連行説」が主流だが

Photo by Kazuyoshi SASAKI

中国、ロシア、北朝鮮の脅威に対抗するためには、日韓が互いに力を合わせる以外にない。そのような危機意識に目覚めた韓国の愛国者が立ち上がり、反日感情が渦巻く中で身の危険をも顧みず、学校で、街頭で、法廷で真実を訴えて戦って来たことが、韓国の反日世論に風穴を開け、日韓の「真実勢力」の連携へ発展し、今回のシンポジウムの成功に繋がった。その努力には心より頭が下がる思いである。

だが彼ら李栄薫氏が祝辞で述べたように、韓国内における慰安婦問題に関する一般認識はまだまだ「強制連行説」が主流である。幼いころから反日教育を通して植え付けられた日本への偏見と恨みは一朝一夕に変えられるものではない。

さらに北朝鮮や中国の手先である左派政治家や正義連などの「嘘つき勢力」はあらゆる「嘘」を動員して反日感情を煽り、日韓を離反させることに血道を上げている。

極東に位置し、自由と民主主義の価値観を共有する日韓は経済的にも安全保障上も運命共同体であり、離反すれば共倒れとなる以外にない。ならば、多少の痛みを伴おうとも「慰安婦問題」への誤解を解いて、韓国人の心に刺さった「偏見と恨みのトゲ」を根本から抜き去る必要がある。

戦いは道半ばだが、日韓の「真実勢力」の連携が実現した意義は極めて大きい。「お母さん部隊」の代表朱玉順氏も「慰安婦問題の専門家である日本の方々との連携が実現したことで百人力を得た」と喜びを語っていた。これからその協力体制を益々強め、「嘘つき勢力」を一掃して、日韓両国民が互いに心から信頼し、共に手を取ってアジアをリードする日が一日も早く訪れるよう筆者も全力を尽くしたいと思う。

松木國俊

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