葉山ひき逃げに懲役11年 3人死傷「非常に危険」地裁判決

 葉山町の県道で昨年8月、海水浴客の列に乗用車が突っ込み3人が死傷したひき逃げ事件の裁判員裁判で、横浜地裁は24日、自動車運転処罰法違反(危険運転致死傷)と道交法違反(ひき逃げ)の罪に問われた会社員の男(20)=同町=に懲役11年(求刑懲役12年)の判決を言い渡した。

 松田俊哉裁判長は判決理由で、被告は海の家で飲酒した約1時間後、友人3人を乗せて車内で大音量で音楽を流し、制限速度の2倍のスピードを出して車を暴走させ、脇見をして事故を招いたと指摘。「非常に危険な運転で何ら落ち度のない歩行者を死亡させ、2人に重傷を負わせた結果は極めて重い」と述べた。

 被害者に重大な傷害を負わせたと自覚しながら、「飲酒運転の発覚を免れるため逃走した経緯や動機は身勝手で酌量の余地はない」と非難した。

 判決によると、被告は昨年8月23日、制限速度40キロの右カーブを時速約78キロで乗用車を運転。カーブを曲がりきれず、路側帯を歩いていた女子美術大2年の女性=当時(23)=をはね飛ばし死亡させ、20代と30代の男女に重傷を負わせたまま逃走した。◆「刑の軽さに衝撃」 遺族、怒りと悲しみ 被告人を懲役11年に処する−。静まりかえる法廷に求刑を下回る判決が言い渡されると、被害者参加制度を利用して公判を見届けた女子美術大2年の女性の遺族や友人は、無念さをにじませた。

 母親は、うつむいて判決に耳を傾ける被告を厳しい表情で見つめたまま。着物姿で笑顔を浮かべる女子美術大2年の遺影を両手に抱え、こぼれそうになる涙をずっとこらえていた。

 「刑の軽さにとてもショックを受けております」。判決後に出したコメントには、両親の悲痛の思いがつづられた。「娘が失った大切な未来が、飲酒運転常習者の服役で償われるのは決して納得できず、今も心が晴れることはありません。危険運転の処罰をもっと厳しくしてもらえることを心から願っています」 女子美術大2年の女性と一緒にはねられ重傷を負った女性(28)も「私が生きていなければもっと大きな懲役にできたかもしれない。死んだ方が良かったんじゃないかと思いました」と苦しい胸の内を明かし、こう続けた。「彼女はいくら時間がたっても戻ってこないのに、時間がたてば社会に戻ることができる被告を本当に許せません」 やり場のない怒りと悲しみを訴えた。

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