教員採用倍率3倍切る 石川県教委315人合格も最低 質の担保、困難に

  ●受験者確保へ説明会増 県教委

 県の教員採用試験の倍率低下が止まらない。2024年度の公立学校教員採用者試験結果は、前年と同数の315人が合格した一方、倍率は2.9倍と記録の残る1976(昭和51)年以降で最も低くなった。教員の質を保つ目安とされる3倍を下回ったのは初。県教委は大学生への説明会を拡充して志望者確保に努める方針だが、「学都石川」の足元を支えてきた教育現場の地盤沈下が現実味を帯びる。

 「今どきの学生には、学校が魅力的な職場に映っていない」。27日、県庁で試験結果の概要説明に臨んだ県教委幹部はこう嘆いた。

  ●ピークは14.3倍

 合格者数が異なるため単純比較はできないが、県教員採用試験の受験倍率は1999年度の14.3倍(合格者105人)をピークに減少が続いている。2020年度に3.6倍と4倍を切ると、22年度3.4倍、23年度3.1倍と低下が続いていた。

 隣県も同様の傾向にあり、富山県の合格倍率は2.3倍、29日に合格発表する福井県は出願者の倍率が2.75倍といずれも3倍を下回っている。

 全国的な倍率低下の背景には、多忙、過度な保護者対応といった教員の勤務環境の悪さが、広く知られるようになったことがある。少子化で大学生の総数自体が減る中、石川県は大量退職を見越して300人超の採用を続けていることも倍率低下の一因という。

  ●残業代なしも影響

 教員の勤務環境改善のため、県教委は18年度から、時間外勤務を減らす取り組みを集中的に実施し、3年間で約2割の減少を実現した。中学校の部活動は民間事業者に委ねる「地域移行」を進め、負担軽減を図っているが、幹部は「根本的な解決になっていない」と本音を漏らす。

 そもそも教員には、部活動を含め残業代が支払われていない。教職員給与特別措置法(給特法)に基づき、月給の4%相当の「教職調整額」が支払われる仕組みで、長時間労働の温床との指摘がある。中教審が改善へ議論を進めているものの、学生からみれば「働きに見合った給与が与えられない」とのマイナスイメージが定着しているのも事実だ。

 文部科学省は5月、人材確保策として、採用試験を従来より1カ月前倒しし、来年から6月に実施するよう各都道府県教委に要請した。ただ、5~6月は教育実習などの日程と重なる可能性があるため、石川県教委の担当者は「日程を早められるかは分からない。全国の動向を注視して決めたい」と話す。

 県教委は今年度、各大学の3年生向けに実施している採用説明会の対象を1、2年生にも広げるほか、教育系以外の学生にも魅力を伝え、受験者増を目指す。担当者は「現場としては勤務環境の改善を続け、教職の魅力を地道に伝えていくしかない」とした。

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