タカラヅカ宙組公演「PAGAD(パガド)」あす開幕 神戸出身トップスター芹香斗亜、本拠地へ 新たな一歩に「芸事」への決意

「同じゴールさえ見えているならルートはどうでもいい」と話す芹香斗亜=宝塚大劇場

 宝塚歌劇宙(そら)組公演「PAGAD(パガド)」が宝塚大劇場(兵庫県宝塚市栄町1)で29日開幕する。今年6月、トップスターとなった芹香斗亜(せりかとあ)の満を持しての本拠地お披露目公演。ここに至っても「芸事に終わりはない」と言い、強い決意で新たな一歩を踏み出す。(片岡達美)

 芹香は神戸市出身で、2012年に雪組トップに就任した壮一帆(そうかずほ)(同県川西市出身)以来、11年ぶりの地元・兵庫勢。宙組では初となる。トップ就任の知らせは「ただただうれしかった」と芹香。だが7~8月、東京でのプレお披露目公演「Xcalibur エクスカリバー」での自分は「びっくりするくらい何も変わらなかった」と意外な答え。「いい作品をお届けしたいという気持ちだけで」

 「パガド」は18世紀の南仏を舞台に、ロマの青年ジョゼフ(芹香)が、予知能力がある母親を魔女だとして処刑した子爵に復しゅうするため、催眠療法を使って近づいていく。アレクサンドル・デュマ・ペール作のピカレスク(悪漢)小説を基にした映画「BLACK MAGIC」がベースの重厚なミュージカル作品だ。

 これまで個性の強い敵役を多く演じてきた芹香。ファンの間では「(前トップ真風涼帆(まかぜすずほ)の退団公演「カジノ・ロワイヤル」で)悪役は見納めですね」と話題になっていたが、「今度もとんでもない役」と芹香。「肉体的にも精神的にもハードだった『エクスカリバー』の後、達成感を味わっていたところ、大劇場お披露目公演でこんなくせの強い役をやるとは」と苦笑する。

 2007年に入団した93期生。5組のトップスターの中で就任まで要した期間は最長だ。2回の組替えも経験し、「ターニングポイントだった。苦しいこともあったが、今思うとありがたいこと」と振り返る。

 トップをすぐそばで支えるポジションで8年近くを過ごし「次はあそこ(トップ)」と見定めてきた。そのために、納得いくまで練習しないと気が済まない「稽古の虫」となり、稽古が「自分でも怖いくらい」大好きというストイックさも。「どれくらい稽古し、努力すればいいのか、自分の中では消化できている。あとは演目、役を落とし込むだけ」と力強い。

     ◇ 【芹香斗亜(せりか・とあ)】1月20日生まれ、神戸海星女子学院中学卒業。身長173センチ、2007年「シークレット・ハンター」で93期生として初舞台を踏み、星組に配属。10年「愛と青春の旅だち」で新人公演初主演。12年に花組へ組替え、17年に宙組へ。入団17年目の23年6月12日付で宙組トップに就任した。

 趣味のドライブで六甲山や神戸・ハーバーランドを訪れることも。愛称の「キキ」は星組時代に上級生から、サンリオキャラクター「リトルツインスターズ キキ&ララ」に似ている、と言われたことから。母は元月組の男役白川亜樹(65期生)。

© 株式会社神戸新聞社