社説:公設秘書の兼職 厳格なルールが必要だ

 特別職の国家公務員である国会議員の公設秘書も、地方議会の議員も、給与や報酬は公費から支払われる。両方を兼ねれば、税金の「二重取り」と見られても仕方あるまい。

 日本維新の会の池下卓衆院議員が、2021年の衆院選で初当選した後、地元の大阪府高槻市議だった2人を公設秘書にしていたことが分かった。それぞれ約1年半と4カ月にわたって兼務していたという。

 国会議員秘書給与法は、原則として秘書の兼職を禁じている。国会議員が許可した場合には認めると定めているが、必要とされている議長への届けを提出していなかった。

 池下氏は、東京の政策秘書が失念していたと釈明し、「議員活動と秘書の両立ができていた」と強調したが、単なる事務的ミスでは済まされない。

 自民党と立憲民主党の衆院議員でも、同様に現職の地方議員を公設秘書にしていたことが明らかになっている。届けは出していたという。

 そもそも国会議員の職務を補佐する公設秘書を兼ねながら、地方議員として地域住民の負託に応えることができるのか。

 どちらも片手間でできるような仕事ではないはずだ。兼職を想定していない有権者を裏切ることにもなるのではないか。

 民間企業などを含め、兼職をしている公設秘書が少なくないとみられている。国会議員が認めれば可能という「抜け穴」のある制度の在り方を見直すべきだろう。

 政策秘書を巡っては、約20年前に衆院議員らが勤務実態のない秘書給与を詐取する事件が相次いで発覚した。

 勤務実態を明確にするため、04年に超党派の議員立法で公設秘書の兼職を原則禁止とする法改正が行われた。

 例外規定を設けたのは、議員の落選などによって秘書の生活が不安定になることなどを踏まえたものとされる。

 だからといって再発防止を掲げ、自分たちで定めた原則を骨抜きにすることは許されない。特定の企業や団体などとの癒着も疑われかねない。

 「職務の遂行に支障がない」とする国会議員の裁量に委ねるのでは有権者の納得を得られまい。

 どういう場合であれば兼ねられるのか、厳格で合理的なルールの明確化が欠かせない。客観的にチェックする仕組みも検討すべきではないか。

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