大谷翔平 代理人とエンゼルスには大きな溝も…手術直前まで直談判していた“最後の打席”

(写真:AP/アフロ)

《早朝に手術を受け無事成功しました。不本意ながらシーズン途中でチームを離れることになりましたが残り試合のチームの勝利を祈りつつ、自分自身一日でも早くグラウンドに戻れるように頑張ります》

9月19日(現地時間)、エンゼルスの大谷翔平選手(29)はインスタグラムで右肘の手術を受けたことを発表した。

「大谷選手は8月23日に右肘靱帯の損傷が判明し、今季は投手として出場しないことになりました。その後、打者として出場を続けましたが、9月4日の試合前の打撃練習で右脇腹を痛めて欠場。それ以降、試合に出ることはありませんでした。執刀医によれば、来季開幕時には打者としての出場を目指し、二刀流での復帰は再来年を見込んでいるといいます」(スポーツ紙記者)

大谷の手術の執刀医は今回もエラトラッシュ氏だ。大谷が’18年に右肘をケガした際も、自らの手首の腱を移植するトミー・ジョン手術を担当した。

「エラトラッシュ医師によると、今回は“新しい形”の手術で、『右肘の寿命をのばすため問題箇所を修復し、生存可能な組織を追加しながら健康な靱帯を強化するものとなった』とコメントしています」(前出・スポーツ紙記者)

大谷が受けた“新しい形”の手術とはどのようなものなのか。横浜南共済病院のスポーツ整形外科部長・山崎哲也氏は言う。

「傷んだ靱帯を修復するため、トミー・ジョン手術に加えて、補強のために人工靱帯、いわゆるインターナル・ブレイスを使った可能性があります。メリットとしては人工物なので、初期強度は強い点が挙げられます。適切なリハビリにより、早期復帰が可能になります。デメリットは体に本当にフィットするか、不透明なところがある点でしょうか。

2回目のトミー・ジョン手術の完全復帰率は50%弱といわれています。そのため、今回は人工靱帯を使った“ハイブリッド手術”をおこなったのだと思います。トミー・ジョン手術は復帰に1年以上の時間はかかるものの、長期的な術後の安全性が判明しています。ただし、インターナル・ブレイスは、復帰は早いものの術後の長期的な安全性に関するデータが少ないのです」

慶友整形外科病院の古島弘三副院長も言う。

「トミー・ジョン手術は完全復帰率が2回目のほうが悪くなるというケースもあり、今回はガチガチに固定し、念には念を入れた状態で手術をしたようです。来年の開幕には打者として復帰、再来年には二刀流として復帰できるとの見込みは妥当でしょう」

■“打者として最後に打席に立ちたい!”と監督に猛アピール

来季の復活に向け、前を向く大谷だが来年もエンゼルスのユニホームを着る可能性は限りなく低くなっているという。在米スポーツライターはこう語る。

「今季終了後、フリーエージェント(FA)で他球団へ移籍するのを防ぐため、エンゼルスは契約延長に向けた交渉を始めています。ただ、右肘をケガした8月下旬から、大谷選手の代理人が、エンゼルスの対応に不信感を持ち始めたそうです。エンゼルスの監督も今回の手術のことを事前に知らされなかったほど、両者の間には溝ができています。9月下旬、米メディア『ファウル・テリトリー』は《大谷選手が8年連続でプレーオフ進出を逃したエンゼルスに残留する可能性はない》とまで断言しました」

実は大谷は手術直前まで、「エンゼルスでの打席」にこだわっていたという。

「大谷選手が最後にベンチに姿を見せたとき、“打者として最後に打席に立ちたい!”と監督に猛アピールしたそうです。監督も“そこまで言うなら”と出場に前向きでしたが、それを傍らで見ていた通訳の水原一平さんが大谷選手をベンチ裏に連れていき、『手術直前の今は絶対に休まなきゃダメだ!』と必死に説得して出場を断念させたそうです。大谷選手が出場にこだわったのも『エンゼルスでのプレーはこれで最後になるかもしれない……』と思ったからかもしれません」(前出・在米スポーツライター)

そんな彼の移籍先として最有力視されている球団がある。同じくLAを拠点とするドジャースだ。メジャーリーグ評論家の福島良一さんはこう語る。

「FAについて、すべての球団が大谷の動向を注視していますが、14日には地元紙『ロサンゼルス・タイムズ』が『大谷に最適なのはドジャース』と移籍先の最有力候補に挙げていました。

そして今回、大谷の右肘手術の執刀医・エラトラッシュ氏はドジャースのチームドクターでもあります。術後のケアの面でも最適の球団でしょう。

また、本拠地がエンゼルスと同じロサンゼルスなので、大谷選手は今までと変わらない環境でプレーできます。温暖な気候は、心身への負担が大きい二刀流には好都合な環境だと思います。

さらにエンゼルスと違ってドジャースは常勝チーム。この11年間で10度目となる地区優勝を決めていますから、大谷が熱望する『ヒリヒリした9月』を体現できます。優勝を目指す大谷選手にとって理想的な球団だと思います」

FAでの移籍金について、米国メディアでは最高7億ドル(1千36億円)とまで報じられている。

「現地では5億ドル(約740億円)を超えてMLB史上最高額となることは確実視されています。ドジャースは豊富な資金力を持つチームですが、ドジャースを上回る金額を提示する球団もいくつか出てくるかと思います。それでも、大谷選手は金額だけで判断せず、最終的にはプレー環境を優先して決めるでしょうから、そういった点でもドジャースが有利だと思います」(前出・福島さん)

1千億円で新天地へ――。大谷の決断に、エンゼルスの起死回生策はあるのか。

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