【J1横浜FC】欧州マーケットに活路 選手の海外挑戦後押し

オリベイレンセでプロ38年目のシーズンを過ごす三浦(横浜FC提供)

 巨額の移籍金が動く欧州での市場価値向上を狙い、サッカーJ1横浜FCが先駆的なプロジェクトに乗り出した。昨秋に経営権を取得したポルトガル2部オリベイレンセとの「マルチクラブオーナーシップ」(MCO)の強みを生かし、海外挑戦を夢見る若者の受け皿を確保する取り組みだ。 

 選手の飛躍の先に描くのは「欧州のマーケットに流れているお金をどうやって日本に取り込んでいくか」。ビジネス面での還元も狙い、日本サッカー界の可能性を広げようと鼻息荒い。

 昨年11月、横浜FCの親会社である「ONODERA GROUP」(東京都千代田区)はオリベイレンセの経営権を取得。元日本代表FW三浦知良(56)が期限付き移籍しており、今季から動画配信サービスDAZN(ダゾーン)の中継が始まるなど注目が集まっている。

 経営参画を巡ってはスタジアムの改修費用も含めての交渉で「非常にスムーズに入れた」というのも一つだが、重視したのはアクセス面だったという。同国第2の都市・ポルト近郊が本拠地でビッグクラブのスカウトも足を運びやすく、期待したのは「ショーウインドー」としての役割だ。

 欧州のビッグマーケットに触手を伸ばす背景には“成功体験”がある。育成組織で育ったFW斉藤光毅(22)=現オランダ1部・スパルタ=が2021年にベルギー2部のロンメルに移籍。戦力的には痛手となったものの、経営面では大きな恩恵をもたらした。

 海外挑戦に伴い移籍金の約2億2千万円に加え、13歳から20歳まで所属した横浜FCには国際サッカー連盟(FIFA)の規定に基づき連帯貢献金として約770万円が支払われた。連帯貢献金は選手が完全移籍するたびに一定の比率で受け取ることができ、移籍金額に比例して増加する。

 クラブでは斉藤の移籍金と連帯貢献金を元手に育成組織が使うLEOCトレーニングセンター(横浜市保土ケ谷区)の人工芝ピッチの全面張り替えを実施。事業が潤えば当然、トップチームの補強につながる。横浜FCの山形伸之CEOは「移籍金収入は本来年間収支の売上の項目に入れてはいけないものだとは思うが、計算できるようになるところに持っていくことが大事」ともくろむ。

© 株式会社神奈川新聞社