吉備土手下麦酒 本社に新工場整備 販路拡大へ生産力1.5倍に

本社敷地内に整備した吉備土手下麦酒の新工場=岡山市中区東山

 酒類製造の吉備土手下麦酒(岡山市中区東山)は、ビールや発泡酒の新工場を本社敷地内に整備し、稼働を始めた。3カ所目となる醸造拠点で生産能力を1.5倍に高めた。新たに常温での流通が可能な缶入り商品も扱い、販路拡大を目指す。

 同社の前身は、岡山市内の運送業者が事業の一環として2006年に開業した吉備土手下麦酒醸造所。同市北区北方と同市中区藤崎の2工場で看板商品のビール「御崎(おんざき)」や岡山県産果実を使った発泡酒を生産してきたが、新型コロナウイルス禍で売り上げが減少。墓石加工販売のトヨタ石材(同市中区平井)の豊田直之社長が100%出資した新会社(22年6月設立)に事業を譲渡した。

 再スタートを切った吉備土手下麦酒は「看板を守るためには、より効率的に生産し販路を広げる必要がある」として生産規模を広げることにした。新工場は、約400平方メートルの借地に鉄骨平屋(約100平方メートル)を新設。砕いた麦芽を煮てもろみを造る糖化装置、もろみから搾った麦汁にホップなどを加える煮沸装置、発酵用タンク、充填(じゅうてん)機などを導入した。年産能力は約72キロリットルで7月から仕込みを行っている。

 缶入り商品の製造に向け、特殊なフィルターが付いたろ過器も設置。腐敗の原因物質を除去でき、販売や輸送の際の保冷が不要になるという。従来の瓶入りに比べ、軽くて扱いやすいことからイベント会場などで売り込む。年内の商品化を目指している。敷地内にはもう1棟(鉄骨平屋約60平方メートル)を整備済みで、直売所をオープンさせる計画。総投資額は約2500万円。

 吉備土手下麦酒は「コロナの5類移行を受けてイベントが再開し、販売が持ち直してきた。10月からビールの酒税が下がるのも商機になりそう。新たな挑戦をしながら今まで以上に愛される醸造所を目指したい」としている。

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