本当のところ「介護のお金」はどのくらい必要ですか?

高齢になってくると「要介護になったらどうしよう」という大きな不安がでてきます。その中でも費用面の心配は大きいでしょう。

介護費用は、「介護の期間」「介護の場所(在宅なのか施設なのか)」で大きく変わってきます。また本人や家族の価値観、生活スタイルなどでも変わります。そこで、介護費用の基本的な考えを確認しておきましょう。それは「いくらかかるのか?」ではなく、「いくらかけるのか?」ということです。本当のところ「介護のお金」はどのくらい必要なのかを解説します。


公的介護保険の基本

介護にかかるお金を知る前に、まずは公的介護保険について知っておく必要があります。

公的介護保険は、要支援・要介護状態になると、さまざまな介護サービスを原則1割負担で受けることができます(所得によって負担額は2割・3割になります)。そのため、公的介護保険を使うことで、介護にかかる費用は軽くなります。

民間の介護保険は、要介護状態などになった場合、保険金を受け取ることができます。つまり、公的介護保険は現物支給で、民間の介護保険は現金支給といえます。

平均的な介護費用とは

介護にかかる平均的な費用はいくらかかるでしょうか。生命保険文化センター「リスクに備えるための生活設計」によると、介護にかかる初期費用は74万円、毎月かかる費用としては8.3万円とあります。介護期間の平均は約5年1ヵ月(61.1ヵ月)のため、介護にかかる総額としては約580万円くらいでしょう。この費用は、公的介護保険を使ったときの自己負担額です。

介護費用に580万円となると、かなりの負担だと感じるでしょう。しかし、580万円を用意しなければ、介護ができないかというとそうではありません。あくまでもこれは平均額です。介護期間が短くて、それほど費用がかからない人もいます。逆に介護期間が長くなったり、施設介護で超高額な費用がかかったりしてしまう人もいるでしょう。

各々の要介護状態により、費用負担額は変わります。一般的に要介護度が高い人ほど介護費用の負担は重くなりますし、認知症の場合には通常の介護よりも負担が重くなるというデータもあります。また、在宅介護よりも施設介護の方が費用は高くなります。介護費用は在宅介護では月額4.8万円、施設介護では月額12.2万円です。在宅と施設では、約2.5倍の差があり、どちらを選ぶかでも総額ではかなり違ってきます。

月々にかかる介護費用の平均は8.3万円と述べましたが、1万円未満は19.6%、15万円以上の人は16.3%います。つまり、介護費用は、二極化傾向にあると言っていいでしょう。資金に余裕があれば、介護に充実したお金を掛けることができます。施設介護でも、特別養護老人ホーム(特養)から超高級な老人ホームまであります。老人ホームの検索サイトを調べると、1億円以上の入居金が必要となる老人ホームもでてきます。

介護費用の考え方

介護にかかる費用の平均的な金額と実態について説明しましたが、冒頭でも述べたとおり、介護費用は、「どのくらいかかるのか?」ではなく「どのくらいのお金をかけるのか?」が重要なのです。

つまり、お金に余裕があり介護費用をかけようと思えば、快適な介護生活を送ることができますし、公的介護保険の範囲内で介護をすることもできます。介護費用の平均額はあくまでも目安として考えてください。

もし介護費用を老後の生活費とは別に準備することが難しい人は、民間の介護保険を利用するのも手です。介護保険を選ぶときは、要介護度が低い段階からでも、保障があるものを選ぶ方がいいでしょう。いずれにしても、介護費用はある程度の準備をしておくと安心です。

© 株式会社マネーフォワード