【広島県三原市】米作りで町おこし! 36歳農家の挑戦

【動画】米作りを未来へ...青年農家の挑戦

稲刈りや音楽の演奏などを楽しむ収穫祭が、三原市内の山あいの町で開かれました。企画したのは、地元で農業に取り組む1人の青年でした。その現状に危機感を抱きながら、稲作の普及に取り組む思いを探りました。

■吉岡康仁さん

「お米がただの食べ物ではなく、日本の文化に精通しているものだということがわかった。作っているのはお米だけど日本全体を守っているような、そんな使命感を持ってやらさしてもらっている。」

およそ900人が暮らす三原市大和町下徳良。収穫を待つだけになった稲を前に汗を流すのは、吉岡康仁さん・36歳です。大学卒業後、この地で米作りに携わって14年になります。今は、家族4人で暮らす広島市内から、車で実家のある大和町に通う毎日です。米農家の17代目として父・義夫さんの後を継いでいますが、低迷する米相場など、厳しさは増すばかりです。

■吉岡康仁さん

「同じ米農家たちが辞めている方がすごく多い。先祖代々お米を続けてきた土地であるからこそ、お米農家が、なんとなく続けようかなと思ってもらえるような活動をしていきたいと思っている。」

思いついたのが、稲刈りを楽しむ収穫祭。その名も「コメサンタフェス」です。これまで、多くの人に米を贈ってきた自らの姿を、サンタクロースに重ねました。稲刈り体験も2023年で4年目。今回はクラウドファンディンで140万円余りを集めました。

■吉岡康仁さん

「子どもたちに田舎の素晴らしさであったり、お米の大切さだったりを伝えられるような収穫祭を企画している。」

祭りの3日前、会場となる神社に向かいます。米作りを体験してもらうだけでなく、町興しにも貢献したいとの思いからです。

■亀山神社 潮 健史 さん

「こんな田舎で、こんな催しはなかなか企画できない。吉岡さんが一生懸命やってくれて、その意味では助かっています。」

■吉岡康仁さん

「亀山神社が賑やかになるように頑張ります。」

4年目の稲刈りに、自ずと期待が高まります。

■吉岡康仁さん

「去年は少人数だったけど、その段階ですごく感動したので、今年すごく楽しみ。知らない方も来てくれるので、笑顔見たいですね。見たいですね、笑顔。」

「コメサンタフェス」開催の日。広島市など各地から、この日を楽しみにしていた家族連れらが、続々とやってきます。県外から訪れた吉岡さんの友人らが、ボランティアとして運営にあたります。

■福岡から来た女性

「(吉岡さんの)優しい人柄、配慮だったり、学びたいというのもあって、皆さんの力になれることがあればと思って来た。」

■吉岡康仁さん

「いよいよ鎌が入る、皆さん事故がないように、無事に終わればいい。」

会場では、参加者が稲刈りを待ち受けます。そして、この祭りを盛り上げようと、お笑い芸人「ダイノジ」の2人が、大阪から駆けつけました。

■ダイノジ

「今からカウントダウンします。0になったら中に入りましょう。お米という字は八十八と書きます。なので八十八から数えていきます。」

「3・2・1・スタート♪」

稲刈りに参加したのは、予想を大きく上回る80組・123人。2022年よりも、およそ50人増えました。

■参加者は…

「食の大切さとか、普段食べていると気付かない大変さを気付いてもらえたら。(子供に)楽しいですか?最高だね。」

■ダイノジ・大地洋輔さん

「いい風景ですね。みんな知らない人同士で稲刈るのも。」

■ダイノジ・大谷ノブ彦さん

「体験して、経験して、小さい頃からやると考え方が変わると思うし。自分も小さいときにやりたかった。広げて行きたいですね。」

稲刈りは、およそ1時間で終わりました。汗流した後は、2023年の新米で作ったおにぎりが、参加者全員に振る舞われました。

その頃、吉岡さんは祭りの会場となる亀山神社にいました。これから始まるステージの準備の為です。そして、神社の前に並んだ出店の数々。田舎のお祭りを楽しんでもらおうと、子どもたちには無料で遊べるチケットを配りました。

■漫才

「2人合わせて、コメサンタ・オチサンタです。」

稲刈りだけでなく、祭りの裏方も欠かせません。吉岡さんは、音楽に合わせて踊る参加者らを、盛り上げます。いつもは静かな山あいの町に、賑やかな声が響いたひとときです。そして餅まきの後は、全員で花火に火を灯し、祭りを締めくくりました。

■参加した子ども

「稲を刈った時に、こんな風に大変な思いをして作っていることがわかった。米のあり難みがとてもわかった。」

■参加した親子

「食べることの大切さを、小さい時から身につけて知る。こういうことを経験した上で、しっかりごはんを食べてもらう大人になってもらえたら。」

祭りの仕上げは、感謝の気持ちを込めて、新米のプレゼントです。

■吉岡康仁さん

「お米の良さ、田舎の良さを伝えることで、稲刈りから最後、神社でのお祭り子供たちの顔を見ていて、そういう目的が達成された1日だったのかなと思う。子供たちが今後、未来どんな夢を持ってくれるのかなと、お米の可能性は僕が思っている以上に広がっていくのではないかと思いました。」

相場の下落や天候不順など、米農家の悩みは尽きません。それでも、米作りの文化を守り、次の世代に伝えたい。そんな取り組みが、徐々に広がりを見せようとしています。

【2023年9月28日放送】

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