クラブライセンス取得で熱を帯びる昇格争い/六川亨の日本サッカー見聞録

[写真:©︎CWS Brains, LTD.]

Jリーグは9月26日の理事会後に記者会見を開いて、『シーズン移行』と『2024シーズンのJ1、J3ライセンス判定結果』について報告した。『ライセンスの判定結果』に関しては、すでに当サイトでも26日に報告済みだ。

J1ライセンスは新たに、いわき、藤枝、讃岐の3チームが取得し、合計49クラブとなった。ただし岩手、秋田、いわき、水戸、金沢、藤枝、鹿児島、琉球の8クラブはスタジアムに不備があり、「施設基準の例外適用申請」クラブとして今後の改善が求められている。

そして金沢は北陸初となる1万席(1万5千席まで拡張可能)の新フットボールスタジアムが9月末に竣工予定で、24年2月から供用を開始する。広島は市内の中央公園広場に約2万8500席の新フットボールスタジアムを建設中で、長崎も約2万席の新フットボールスタジアムを建設中だ。

こうした動きを踏まえて今シーズンのリーグ戦終盤を眺めてみると、J2リーグの藤枝は15位、いわきは19位と、自動昇格の2位以内に入る可能性はなく、J1昇格のためにはプレーオフ圏内の4位〜6位以内というのが目標となる。しかしながら両チームともにJ2残留も決まっていないだけに、リーグ終盤戦はこちらの方がより現実的な目標ではないだろうか。

J1昇格争いに関しては、11位の山形まで予断を許さない勝点差となっている。11チーム中8チームにJ1での経験があり、全クラブがライセンスを保有しているだけに昇格争いは今後ますます激化するに違いない。

そしてJ2リーグと同様にJ3リーグも混戦模様となっている。一時は愛媛(勝点54)が頭一つ抜けたかと思われたが、9月22日の第28節では鹿児島に0-2と完敗。鹿児島(同45)は2位に浮上し、さらに例外適用とはいえJ1クラブライセンスを取得したのだから、昇格へ向けて選手のモチベーションと地元の期待も高まっていることだろう。

さらに3位の今治(勝点44)はすでにJ2ライセンスを取得済みだし、4位のFC大阪(同43)と7位の奈良(同40)は現在J2ライセンスを申請中のため、上位2位以内に入れば昇格の可能性がある。5位の富山(同43)、8位〜10位の岐阜、松本、鳥取(同40)もJ2ライセンスは取得しているため、こちらも残り試合での大逆転を狙っている。

そうした中で唯一J2ライセンスを申請していないのが6位の沼津(勝点42)だ。ホームである愛鷹広域公園多目的競技場は観客席(5104人収容)、屋根、大型ビジョンなどがJ2基準に満たないため申請できずにいる。沼津としてはスタジアムを新設する方向で検討しているようだ。

26日の会見では、JFL所属の青森、新宿、三重、ヴェルスパ大分にもJ3クラブライセンスが交付され、10月の理事会でJリーグ入会が審査されることになった。また滋賀と高知については継続審議となった。現在のJFLは「アマチュアの門番」と言われるHondaが勝点42で首位に立ち、同じくアマチュアのソニー仙台(同32)が2位につけている。しかし3位・青森(同32)、4位・新宿(同31)、5位・V三重(同29)、6位・滋賀(同29)、7位・高知(同28)、9位・V大分(同28)と2位以下は大混戦だ。

上位陣で唯一Jのクラブライセンスを申請していないのは8位の浦安(勝点28)だが、浦安は今シーズン久しぶりにJFLへ復帰したばかり。シーズン序盤は勝ちきれない試合が続き下位に低迷していただけに、それも仕方のないことだろう。転機となったのは、都並敏史監督も敵わないと思っていた筑波大に天皇杯の1回戦で3-2と競り勝ったことかもしれない。6月以降は負け知らずで順位を上げてきた。高知も天皇杯2回戦でG大阪に2-1、3回戦では横浜FCに3-1とジャイアントキリングを演じたことが「選手の自信につながった」と西村昭宏GMは話していた。

Jはもちろんのこと、JFLも終盤に入り熱を帯びてきているのは間違いない。


【文・六川亨】

© 株式会社シーソーゲーム