県漁協、駅西から移転 県水産会館売却の方針 26年度末、金沢港近隣に

石川県漁協が移転、売却の方針を決めた県水産会館=金沢市北安江3丁目

  ●老朽化進み 優良物件、再開発加速か

 石川県漁協は28日までに、金沢市北安江3丁目の県水産会館を売却する方針を決めた。築43年が経過して老朽化が進んでいるためで、2026年度末をめどに建て替えを行う「かなざわ総合市場」(同市無量寺町)への転居を含め、金沢港近隣への移転を検討する。売却先は今後選定する見通し。来年3月に北陸新幹線が県内全線開業することもあり、JR金沢駅からほど近い優良物件を狙った再開発の動きが加速しそうだ。

 県水産会館は1980(昭和55)年に建設され、敷地面積3279平方メートルで、建物は6階建て、延べ床面積は3731平方メートル。県漁協のほか、漁業共済、信用漁業協同組合、漁業信用基金などの県組織が入居する。建物に傷みなどが目立っていたことから売却を決めたとみられる。

 一方で県漁協は現在、かなざわ総合市場の建て替えに向けた準備を進めており、近く着工する予定となっている。同市場は、県内の主要漁港で水揚げされた海産物が運び込まれて競りにかけられる場所であり、漁協業務の利便性向上を見込んで移転先候補の一つに挙がっている。

  ●駅から徒歩10分

 現在の水産会館は金沢駅西口を出てすぐの目抜き通り沿いにあり、同駅からは徒歩10分足らずの距離。2015年の北陸新幹線金沢開業に前後してオフィスやホテルなどの開発需要が急速に高まり、分譲マンションでは1億円を超える物件も出現した。

 20年春に新型コロナウイルスが広がり始めてからは開発競争が一段落したものの、感染拡大がピークを過ぎ、感染法上の位置付けが5類に移行したこともあって、最近は県外資本を中心に用地物色の動きが再び活発化してる。

 水産会館の隣接地では287戸の15階建てマンション「プラウドシティ金沢」の建設が進んでいるほか、西念1丁目の通称50メートル道路(県道金沢・田鶴浜線)沿いに位置する約千平方メートルの土地では9階建てオフィスビルの建設が計画されている。

 駅西周辺は、今月19日に発表された基準地価の数字を見ても上昇、改善傾向にあり、商業地の広岡1、2丁目は前年の下落から上昇に転じたり、上昇幅が拡大したりした。

 今後の開発動向に関して金沢市内の不動産関係者は「ホテルは観光客の増減に左右される。安定したマンションやオフィス向けとして、県外資本を中心に引き合いが高まるだろう」と予想した。

© 株式会社北國新聞社