決め手は、人柄。「お食事処ライオン」を3代目に引き継ぐために

2022年4月、宮崎県宮崎市の「お食事処ライオン」がrelayを通して後継者募集をスタートしました。JR日豊本線や日南線、宮崎空港へつながる空港線の3線が乗り入れる南宮崎駅の1階という好立地。約60年間地元の方や旅行者、電車の車掌さんなど、幅広い層に愛されてきました。お店を経営していたのは、中西幸一郎(なかにしこういちろう)さん。

今回「お食事処ライオン」を引き継ぐことになったのは、これまで宮崎県でレストランや弁当屋で接客業に長年従事してきた秋丸浩司(あきまるこうじ)さん。relayの記事を見て、次の日にはお店に行ったといいます。オープンに後継者募集をしたからこそ出会ったお二人に話を伺いました。

譲渡者:「お食事処ライオン」中西幸一郎様
承継者:秋丸浩司様
聞き手:relay編集部

約60年の歴史とお客様を、未来につなげるために

ーー聞き手)relay編集部(以下、略)中西さんはなぜ事業の承継を検討されたのでしょうか?

(譲渡者)「お食事処ライオン」中西幸一郎様(以下、敬称略):きっかけは、年齢ですね。ともに経営していた妻も80歳を超え高齢となり、これ以上働くことは難しいと考えるようになりました。そうであれば、もう店を辞めてしまおうとなったんです。

ーー今回、relayで後継者募集をされた経緯を教えて下さい。

中西:きっかけはJRの方からの紹介でした。店は立地が良く、若い方が経営すれば必ずうまくいく。人の行き来も多く、お客様も多いので、どうにでもできると思っていました。なので、迷いなくrelayでの募集をすることとなりました。

Facebook記事での出会い。次の日にはお店へ

ーー秋丸さんは、どのように今回の事業承継の記事を知ったのでしょうか。

(承継者)秋丸浩司様(以下、敬称略):偶然「お食事処ライオン」の事業承継の記事がFacebookでシェアされているのを見て、次の日には食べてみようと店舗を訪れました。

中西:1週間くらい、この席に来ていましたよね。ただ食事をして帰っていく。でもなにかこの人には狙いがあるんだろうな、と思っていました。まさかお店を継ぐことを考えていたとは(笑)。そんな感じはしませんでしたね。

秋丸:長年、レストランやお弁当屋など飲食業界で接客をしてきました。接客業はとても楽しく自分に合っている。そんな中で「お食事処ライオン」は、客層がすごく良く、中西さんや奥さんの接客は明るく素晴らしかった。かなわないなと思いましたね。オープンキッチンで調理しながら、お客様とコミュニケーションを取っている中西さんを見て、すごくおもしろそうだなと感じました。

中西:やっぱりコミュニケーションが最も大事。1回来店された方がリピートしてほしいですからね。丁寧な接客をすることで、ひとりのお客様が次回は誰かを連れてきてくれる。地元の方であれば、毎日来ていただけるようになる。雰囲気も良くなりますしね。日本食堂時代からは約60年。大変なこともありましたが、ここまで経営してこれました。

互いに人柄が決め手に。コミュニケーションを重視して

ーー記事を見て、たくさんの方から問い合わせがあったと伺いました。秋丸さんに決めた理由は何ですか?

中西:印象が良かったというのが大きな理由ですね。年齢も若く誠実で、何事も前向きに受け入れる姿勢をしていました。駅の1階なので、様々な人が出入りしますが、どんなお客様も大事にして対応できると思いました。

ーー秋丸さんが、継承を決めた理由は何ですか?

秋丸:中西さんや奥さんのお人柄ですね。働く様子を見ながら、この店がなくなってほしくないと心底思い、この方達の跡を継ぐと決意しました。思いを継ぎ、「お食事処ライオン」の名前を変えるつもりはないと中西さんにお伝えしました。

ーー最も引き継ぎたいところを教えてください。

秋丸:やはり人との接し方やつながりの部分です。中西さんはお客様ひとりひとりに「おはよう」「こんにちは」と挨拶する。1つ1つのコミュニケーションをとても大事にしていました。だからこそ、引き継ぎたいと思えたので、私自身もこの部分は最も大事にしたいです。

中西:ありがたいね。こういった考えで引き継いでくれるなんて最高です。

結果につながる、新たなチャレンジを

ーー事業承継後、秋丸さんなりのチャレンジもされているそうですね。

秋丸:はい、これまでのお客様はもちろん、地元のお子様連れのお客様や学校の皆さんも楽しめるような内装の工夫にもチャレンジしています。地元幼稚園の子どもたちの作品を掲示したり、今後は高校生の写真部の作品掲示なども予定しています。夏には地元の子どもたちが食べに来たくなるようなかき氷を提供してみたいですね。

中西:秋丸さんなりの感覚でチャレンジしてもらえたら嬉しいですね。一度来店いただき、美味しいと言ってまた来てもらえたら良いと思います。利益に繋がり、順調に経営できることが一番です。結果がでることを祈っています。

ーー今後の目標を教えて下さい。

秋丸:原価が急騰し、苦労していますが、とてもやりがいを感じています。「お食事処ライオン」の名前を絶やすことなく、3代目に引き継ぐことが目標です。中西さんが大事にされたことをそのままに、自分なりのチャレンジも続けていきたいですね。正解を見つけていきたいです。

事業承継は、地域の未来をつくる

ーーrelayを使用して、事業承継をしてみていかがでしたか?

中西:relayの担当者も言いたいことを言えるような人柄でとても助かりました。利用してよかったなと思っています。

秋丸:中西さんに直接聞きづらいことを聞いていただいたり、relayの担当者にはたくさん助けていただきました。中西さんとの出会いはもちろんのこと、relayの担当者との出会いもあったからこそ引き継げたんだなと思っています。期待することは、承継に関わる支援金の手続きをサポートいただけると、より早くスムーズにバトンが受け取れたと思っています。

ーー最後に読者へのメッセージをお願いします。

秋丸:売上だけを目標にしても、10年後には破綻してしまう。先代の築いた歴史や思いを重んじて、根本をしっかりと考えて引き継いでほしいですね。

中西:宮崎の事業者は年齢的に引き継ぎたいという人は多いと思います。元気のある若い世代が引き継ぐことで、店だけでなくその地域全体が発展する。地域の未来のためにも、ぜひrelayを利用してみてほしいですね。

2022年9月30日(金)約60年の経営に幕は閉じられ、秋丸さんにバトンが託されました。承継セレモニーが開催され、終始温かい空気の中、様々な関係者から餞の言葉が投げかけられました。「お食事処ライオン」はこれからも、駅や地域に密着したお食事処として多くの人に愛され続けることでしょう。いつの日か、3代目に引き継がれる日を楽しみにしています。

(relay編集部)

株式会社ライトライト

事業承継マッチングプラットフォーム「relay」を運営しています。従来、社名や企業情報が伏せられてきた事業承継のマッチングをオープンネームで行い、どんな想いで企業や店舗を運営してきたか、オーナーの横顔を含めた想いを記事化し、後継者候補を広く公募します。これまでのマッチングでは、「買い物に訪れていた小さなパン屋のファン」や「カフェを経営したい夢を持つ夫婦」が後継者となる第三者事業承継を実現。買い手が売り手の事業と想いを深く理解できる、商談率・成約率No.1※の事業承継マッチングプラットフォームです。経済産業省による「J-Startup KYUSHU」選定企業。令和4年度経済産業省の地域・企業共生型ビジネス導入・創業促進事業にも採択されています。

※デロイト トーマツ ミック経済研究所株式会社「国内ビジネスマッチングプラットフォーム市場の現状と展望【2022年版】」 リンク

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