【台風13号】庁舎建設、溢水想定せず 茨城・日立市 専門家交え検証へ

地下水路の前で合流する数沢川(手前右)と平沢川。奥の建物が市庁舎=日立市助川町

台風13号に伴う大雨で市庁舎が浸水した茨城県日立市は28日、2017年の新庁舎建設時、今回溢水(いっすい)した数沢川の氾濫を想定していなかったと明らかにした。同市では8日の大雨で24時間降水量が268ミリと観測上最多を記録。市庁舎は過去の最大降雨を想定した雨水排水機能しかなかった。市は引き続き専門家を交えた検証を進める。

同市では8日の大雨で、庁舎脇を流れる数沢川が氾濫。地下階が最大120センチ浸水し、受変電設備と非常用発電機が水に漬かり使えなくなった。一時機能不全となり、復旧に丸1日かかった。

現在の市庁舎は、11年の東日本大震災で旧庁舎が被害を受けたことを踏まえ、防災拠点機能の充実を掲げ建設した。

庁舎地下にある雨水貯留槽や排水ポンプは、1時間当たり雨量で過去最高だった88ミリというデータに基づき設計。しかし、今回は全く機能せず電源喪失につながった。

当時市職員として庁舎建設を担当した梶山隆範副市長は28日の会見で、「最大降雨の備えのみで、川の溢水まで想定していなかった」と釈明した。

一方、建設前の市民懇話会では当時、河川について「冠水の心配はないのか」「排水能力は大丈夫か」「流木が詰まってあふれるのでは」などの意見が出ていた。

今回溢水した数沢川はもともと、庁舎の敷地内を横切るように流れていたが、市は建設に当たって土地を有効利用するため地下水路化を計画。庁舎敷地に入る部分から川を地下に埋設して北側に迂回(うかい)させ、その上部に駐車場を確保した。数沢川は地下水路の直前で平沢川と合流している。

市は、地下水路化に当たって河川の流量を計算し、1.3倍の水を流せるよう改修。それまでの70年間で溢水した記録がなかったこともあり、電源設備を地下に置くことにしたという。

梶山副市長は「想定以上の雨によって河川の合流部で溢水した」とする一方、「地下水路化した部分で(流れを)のみ込めなかったわけではない」とも述べ、当時新設された地下水路との関連は否定。詳細については今後、専門家を交え検証するとした。

小川春樹市長は「よく検証した上で恒久的な対策を講じていく」と述べた。市は同日までに専決処分した本年度一般会計補正予算で、庁舎の電源設備や給排水設備などの復旧事業費として2億7千万円を計上した。

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