JR京都駅東部に10月移転、京都市立芸術大学グラウンドで球技できない理由とは

京都市立芸術大学の新キャンパス。10月の開校に向け準備が進む(京都市下京区)

 京都駅東部エリア(京都市下京区)へ10月に移転する京都市立芸術大学のグラウンドを巡り、一部の球技ができない問題が浮上している。移転先のグラウンドは屋上にあって鉄道の線路が近く、ボールが飛び出た際に危険なため、サッカーや野球などの球技が制限されるという。部活動や授業への影響は大きく、学生や保護者が対策を求めている。

 新しいグラウンドは、高倉通から鴨川まで連なる新キャンパスのうち、鴨川に面した地上3階建ての建物に設置された。1、2階に彫刻や陶磁器専攻、共有工房などが入る建物の屋上で広さは約2300平方メートル。現キャンパス(西京区・約8500平方メートル)の3分の1以下に縮小された。

 グラウンド周囲には高さ4メートルの防球ネットが設けられているが、すぐ横をJR在来線の線路が走っており、ボールが高く飛ぶ球技は制限せざるを得ない状況だ。大学によるとサッカーや野球、ラグビーといった球技はそもそも本格的な練習が難しく、体育の授業も球技以外へ変更する予定という。

 ラグビー部は来年で創部65周年を迎えるが、メインの練習場所を失うことになる。同部は現役プレーヤーが今春卒業したため部員の勧誘に力を入れており、ある学生は「伝統ある部活で熱心に活動してきたのにどうなってしまうのか」と懸念する。

 さらに隣接する美術工芸高と共有のため、体育の授業を含めて大学側がグラウンドを使えるのは、日中は週2日、放課後は午後6時以降に限られるという。

 新グラウンドを巡っては、以前から課題が指摘されていた。大学の移転方針が発表された翌年の2015年には、学生から学長と市長宛てに、移転先に現キャンパスと同程度の体育施設の整備を求める署名(1669筆)が提出された。また今年の初夏にも各運動部が学生自治会を通し、「球技可能なネットの設置」や「付近のグラウンド施設の使用料助成」など対策を求める要望書を提出。保護者でつくる美術教育後援会も、同様の要望をしてきた。

 しかし、移転が来月に迫った今も具体的な対策は見えていない。大学によると、設置者の市にネットの増設など対策を求めたが、建物の高さ規制や景観、予算面の課題から困難との回答だったという。大学は「代替グラウンドなどを検討してはいるが、予算などに課題がある。学生とも話し合い、落としどころを見つけていきたい」と説明する。

 市文化芸術企画課は「移転構想を発表して以降、大学や地元との協議を重ね合意を得て現計画に至った。財政的にもすぐさまハード面の整備は考えにくいが、今後のグラウンドの運用については大学側と検討していきたい」としている。

 美術教育後援会は対策として100万円を用意し、代替グラウンドを使用する部活動向けに助成金を創設した。大原義盛会長は「グラウンドは教育上必要な施設で、学生にしわ寄せが行くことは避けたい。近隣に代替スペースを確保するなど、学生目線で対応してもらいたい」と求めている。

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