今秋、地上波が相次ぎ「アニメ枠」新設…日テレは“金ロー”で『葬送のフリーレン』初回放送の本気度、フジは中国アニメで挑戦【業界ウォッチ】

7月から3ヶ月に渡り”夏アニメ”が放送され続々と最終回を迎える中、いよいよ明後日10月からは今年最後の放送クール”秋アニメ”がやってくる。そんな今秋だが、いつもの秋とは異なり、日本のアニメシーンにおいて非常に重要な季節になるかもしれない。

というのも、10月に在京キー局によるアニメ放送枠の新設が同時に3局、相次いで行われるためだ。

日テレは『葬送のフリーレン』初回を金ローで放送

第一に大々的に枠の新設が予告されているのが、日本テレビ。日本テレビでは10月6日(金)より毎週金曜日11時に「FRIDAY ANIME NIGHT」と呼ばれるアニメ枠の運用を開始する。

日テレや各局では午後11時〜深夜1時(25時)を”プラチナゾーン”と呼称しており、”ゴールデン”や”プライム”(19時〜23時)に次ぐ重要な放送時間帯となっている。直近の日テレは深夜アニメについて多くは放送しておらず、「+Ultra」「ノイタミナ」などを有するフジテレビなどに比べて印象は薄い。

しかし、FRIDAY ANIME NIGHT(公式略称は「フラアニ」)の創設により、前枠の「金曜ロードショー」とともに今後アニメへの注力する姿勢がうかがえる。加えて、その新枠のトップバッターを飾るのは『葬送のフリーレン』だ。

『葬送のフリーレン』とは「週刊少年サンデー」(小学館)で連載中の、山田鐘人とアベツカサによるマンガ作品。勇者とそのパーティーによって魔王が倒された“その後”の世界を舞台に、勇者と共に魔王を打倒した千年以上生きる魔法使い・フリーレンと、彼女が新たに出会う人々の旅路が描かれている。2021年に「マンガ大賞2021」「第25回手塚治虫文化賞」を受賞し、コミックスの累計発行部数1,000万部を突破するなど旋風を巻き起こしている。

そんな『葬送のフリーレン』待望のアニメ化だが、今日29日21時からは「フラアニ」の放送より一足早く「金曜ロードショー」での初回2時間スペシャルという異例のスケジュールが組まれているほか、TVアニメ公式X(Twitter)も放送前に10万フォロワーを突破するなど、ファンや業界からも大注目の作品に。

さらに、主題歌アーティストには今春社会現象を引き起こすほどの人気を誇る「YOASOBI」を起用するなど、原作ファンからの支持にとどまらない、新規ファンの獲得に対しても熱い期待が顕著にうかがえ、新枠の高スタートダッシュが予想される。

TBSは日曜夕方に新設…MBS系”アニメイズム”と並走

日本テレビと時を同じくして、今秋よりTBSも新たなアニメ放送枠を設けている。TBS系のアニメと言われると、多くのアニメファンは毎週金曜日25時以降に組まれている「アニメイズム」を連想するかもしれない。

アニメイズムでは「月刊少年マガジン」原作タイトルも多数ラインナップされており、期待の新作から人気の続編まで非常に充実しているアニメ枠だが、製作は在京キー局のTBSではなく在阪準キー局であるMBS(毎日放送)が行っており、TBSは直接的な製作への関与は行っていない。

今春はマガジン原作の『女神のカフェテラス』が放送:AnimeJapanでもPR

とはいえTBSは現在、毎週木曜23時56分より全国28局ネットにてアニメ『呪術廻戦』第2期を放送するなど、木曜日深夜帯を中心に大人気作を放送しておりアニメファンからは人気の高い局でもある。これらの作品は毎話のように視聴率ランキングでも上位にランクインする確固たる人気を持つほか、毎週木曜26時28分にも関東ローカルで『聖者無双〜サラリーマン、異世界で生き残るために歩む道〜』を今夏放送していた。

そして新たに今秋より「毎週日曜16時30分」の枠が新設され、3枠での放送体制が始まる。

厳密には既に同枠での放送は始まっており、9月2日・9月9日の2週にわたり劇場先行上映されたアニメ『五等分の花嫁∽』を放送するなど好スタートを切っている。また、10月8日からは”秋アニメ”として人気シリーズ「七つの大罪」の新作アニメ『七つの大罪 黙示録の四騎士』の放送が控えており、人気タイトルで届けられる新たな枠に期待が高まる。

フジテレビは中国の大手動画サイトと協同で新設

そして最後、こちらはつい先日の9月24日に明らかとなった新情報だ。それはフジテレビが中国の大手動画共有サイト「ビリビリ動画」を運営するbilibili(ビリビリ)社と共同でアニメ枠を新設するというもの。

【関連】フジテレビ、中国・ビリビリ動画と協同で新アニメ枠「B8station」設立 吹き替えアニメを放送へ

本年10月よりフジテレビの毎週日曜深夜に新たなアニメ枠「B8station(ビーハチステーション)」を設けることが明らかとなり、第一弾としてBilibili社が製作する中国アニメの日本語吹き替え版『時光代理人 -LINK CLICK-』の放送が決定した。

本件についてフジテレビ側は「フジテレビとbilibiliは、グローバルビジネス戦略の一環として、番組販売や権利販売だけではなく、互いのIPを活用し、グローバル向けに多角的な事業展開を行っていく。」とのコメントを寄せているほか、2024年1月より毎週水曜日への枠移動を行い継続的に放送する意向も示しており、挑戦する姿勢に注目だ。

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