過剰な競合とコスト増

零細企業や個人事業主が多い軽貨物自動車運送業者(軽貨物運送業者)の倒産件数が急増している。過剰な競合と労働コストの増加に加え、燃料価格の上昇など、取り巻く市場環境の厳しさによって深刻な状況に直面しているという。
 東京商工リサーチ(TSR)によると、2023年上半期(1-6月)の軽貨物運送業の倒産件数は前年同期比2倍の26件(前年同期13件)となり、2014年以降の10年間では上半期として初めて20件を超えた。
 負債総額は前年同期比4・3倍増の15億4300万円(同3億6400万円)で、すでに昨年1年間の実績(10億500万円)を上回った。上半期べースとしては14年以降の10年間で初めて15億円を超えた。
 コロナ禍の2020年上半期は、倒産件数が前年同期比42・9%減の8件(前年同期14件)、年間では同37%減の17件(前年27件と大幅に減少した。コロナ禍での資金繰り支援策に加え、在宅勤務の広がりやネット通販の利用増などが寄与した。
 ところが、21年以降は一転して上半期ベースで3年連続増加している。コロナ感染拡大の影響、ロシアのウクライナ侵攻による燃料価格の高騰などが倒産、負債額をおしあげた。零細企業や個人事業主は、競合に対する対抗力が弱く、労働コストの負担が大きいため、倒産、廃業を余儀なくされている。
 国土交通省によると、2014年度の軽貨物運送事業者数は15万4299者(軽霊柩、バイク便含む/2015年3月31日現在)。1年後の15年度は前年度比0・3%(543者)増の15万4842者と、ほぼ横ばいで推移。
 20年度には15年度比27・7%(4万2946者)増の19万7788者と膨れ、21年度は前年度比5・8%(1万1462者)増の20万9250者に急増している。
 過当競争の軽貨物運送は「多重下請け構造の仕組みにより、正規の支払い金額とかけ離れていることに加え、荷主に対して現場の声が届かない」(業界関係者)という実態にある。

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