【研究結果】犬が『飼い主のことを嫌いな人』を見分けられるのはなぜ?

犬は『飼い主のことを嫌いな人』を見分けられる?

犬は飼い主さんはもちろん、周囲にいる人の様子をよく観察していることは多くの人が感じていることでしょう。そして、顔の表情や体の動き、声のトーン、呼吸の仕方など、細かい要素から、犬は人の感情を読み取れるということがわかっています。

それは、楽しい・うれしいというようなポジティブな感情だけでなく、不安や恐怖などのネガティブな感情も同じで、敵意や警戒心を感じることもできると考えられます。

もちろん、普段一緒にいる時間が長い飼い主さんの感情の方が、正確に読み取りやすいとは思いますが、敵意のような強い感情であれば、他人のものであっても読み取れることは十分考えられます。

自分に向けられる感情だけでなく、飼い主さんのように大切に思っている仲間に対して向けられる感情にも敏感に反応すると思います。そのため、犬は飼い主さんに良い感情を持っていない人のことも、見つけられることがあるのです。

飼い主の態度や感情への共感力について

日本では麻布大学や名古屋大学、熊本大学院先端科学研究部、奈良先端科学技術大学院の研究チームが、犬の共感能力について調査するために、飼い主とその愛犬の心拍の変動を計測する実験を行いました。

その結果、気持ちの変化にも応じて変動される心拍が、飼い主と犬で連動することがわかり、犬が飼い主の感情の変化を短い時間で察知して、共感しているということが証明されました。

また、オーストリア・ウィーン獣医大学の動物行動学者 ルドウィック・フーバー氏を中心とした研究者たちは、人間の顔の写真を犬に見せてから行動させる研究をおこないました。その結果、「犬は人間の表情を識別できるだけでなく、各表情の意味も理解している」ということを実証したのです。

そのほかにも、犬は飼い主の行動や態度を常に観察していて、それに応じて自分の行動を変化させるということがわかっています。これは、人間に子どもが親の態度を確認して、同様の態度を取るというものを同じで、「社会的参照行動」と呼ばれています。

フランス・エクスマルセイユ大学のシャルロット・デュラントン氏がおこなった研究では、飼い主が見知らぬ人に対して見せる行動が、犬に多大な影響を与えていることがわかりました。

このような様々な研究・実験から、犬は人間の態度や行動を観察して、その感情や意志を読み取ったり、それに共感したりする能力があるということがあきらかにされています。

人の表情を読み取る能力と意思決定について

ブラジル・サンパウロ大学とイギリス・リンカーン大学の研究者チームが合同でおこなった実験で出た結果では、見知らぬ人や馴染みのない人が見せる表情でも犬は読み取り、自分の行動に役立てることがあきらかになりました。

実験をおこなう人の性別や年齢、髪形、服装を同じにした状態で、声を出さずに「嬉しい表情」「中立(無表情)」「怒りの表情」をしてもらいます。そのような人がおやつを持っている場合に、犬がどのような行動を見せるかを観察しました。

その結果、犬がおやつを持っている人に近づくかどうかは、その人が見せている表情によって大きな差が見られたのです。

このことから、犬は日頃コミュニケーションを取っていない人であっても、その表情を区別してその意味を理解できる、そして自分の意思決定の判断材料をしているということがわかりました。

まとめ

犬は人間の感情にとても敏感に反応する動物です。今回ここで紹介したように、飼い主さんのことが嫌いな人に気がつくこともありますし、何より身近な飼い主さんの感情には気がつきやすいと思います。

犬は人の表情や声色、ボディランゲージをよく観察しているので、コミュニケーションを取る際にもぜひ役立ててください。そして、飼い主さんも愛犬の表情やボディランゲージから、その感情をしっかり読み取って、愛犬の気持ちを理解してあげてくださいね。

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