FK8シビック予選最速も、決勝は2台のトヨタ・カローラGRS TCRが完全制覇/TCRサウスアメリカ第8戦

 第5戦はウルグアイのエル・ピナール、第6戦はアルゼンチンのサンルイスにて新生TCRワールドツアーの連戦を迎え入れたTCRサウスアメリカ・シリーズは、この第8戦より通常のシリーズ戦に回帰。9月22~24日の週末に開催されたブラジル・ヴェロパークでの1戦は“日本車勢”が奮起するイベントとなった。

 まず雨絡みのFPを経た予選では、選手権首位の18歳イグナシオ・モンテネグロ(スクアドラ・マルティーノ/FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR)がポールポジションを奪取する。しかし決勝ではTOYOTA GAZOO Racingアルゼンティーナ謹製のトヨタ・カローラGRS TCRが躍動し、レース1はベルナルド・ラヴァー(トヨタ・チーム・アルゼンティーナ/トヨタ・カローラGRS TCR)が、レース2はファビアン・シャナントゥオーニ(パラディーニ・レーシング/トヨタ・カローラGRS TCR)が、それぞれフルウエットの難しい条件を制している。

 同国を代表する”ティントップ”選手権、2023年SCBストックカー・ブラジル“プロ・シリーズ”の第8戦が、前週の9月15~17日に開催されたばかりのアウトドローモ・インテルナシオナル・ド・ヴェロパークは、レースウイークを通じて雨に祟られる展開となり、土曜午前のFPも全16台の習熟が妨げられることに。

 迎えた予選ではQ1からモンテネグロが主導権を握ったものの、かろうじてのドライ路面でカローラを含む数台がコントロールを失うと、Q2ではエンリケ・マグリョーネ(スクアドラ・マルティーノ/FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR)がワイドになりバリアに激しくクラッシュ、ここで赤旗が掲示される。

「少しオーバースピードでコース幅を使い過ぎタイヤを落としてしまった」と無傷のマグリョーネ。

「芝生の上を走っていると、溜まった水のせいでクルマがハイドロプレーニング現象を起こし、グリップを失い横転してしまった。でも大丈夫、クルマの安全性はとても高かったよ」

 残り6分24秒から再開されたQ2は、さらに終了間際の残り2分でシャナントゥオーニのカローラが技術的問題でクルマを止め、ここで2回目の赤旗に。最後の再開に向けフライングラップを得るのに充分な時間を確保したモンテネグロは、ラップタイムを58秒892まで詰めて混乱多発の予選を制した。

「フリー走行で雨が降った後でもこうして学び続けて、僕らにとって新しいコースでポールポジションを獲得できてうれしいよ。この結果はとても幸せだし、明日を楽しみにしている」と語ったアルゼンチンTC2000レギュラーのモンテネグロ。

 明けた日曜現地時間9時10分に開始されたレース1は、前日を上回る豪雨のコンディションと化すなか、ポールシッターのモンテネグロに対し背後の2列目3番手にいたTGRA“セミワークス待遇”とも言うべき真紅のカローラがスパート。すぐさまFK8型シビックを捉えて首位に浮上する。

アウトドローモ・インテルナシオナル・ド・ヴェロパークは、レースウイークを通じて雨に祟られる展開となり、土曜午前のFPも全16台の習熟が妨げられることに
レース1は、前日を上回る豪雨のコンディションと化すなか、ポールシッターに対し背後の2列目3番手にいたTGRA”セミワークス待遇”とも言うべき真紅のカローラがスパート
「このクルマでは雨の中で勝ったことがないから、チーム全員に感謝しているよ」とベルナルド・ラヴァー(Toyota Team Argentina/トヨタ・カローラGRS TCR/中央)

■「チーム全員に感謝している」とTC2000ではホンダをドライブするラヴァー

 直後には、モンテネグロの僚友ファビオ・カサグランデ(スクアドラ・マルティーノ/FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR)が「溜まった水量の多さと視界の悪さ」のためピットに戻り自主的にリタイアを選択するなか、5周目にはセーフティカー(SC)が導入される。

 長く続いた先導走行ののち11周目にリスタートが切られると、集団後方ではいくつかのポジションチェンジがあったものの、視界良好の先頭でリードを維持したラヴァーが、モンテネグロとラファエル鈴木(PMOモータースポーツ/リンク&コーCo 03 TCR)を従えてのトップチェッカーを受けた。

「このクルマでは雨の中で勝ったことがないから、チーム全員に感謝しているよ」と、同じくTC2000ではホンダをドライブするラヴァー。

「時間帯によってさらに雨が強くなり、視界が良くてもウエットパッチを注視しなければならず、それは簡単ではなかった。昨日は雨を予想して予選の準備をしていたし、この後のレース2に向けても順調に進んでいるが、どうなるか見てみるつもりさ」

 その言葉はチームをまたいだカローラにも当てはまり、現地時間12時55分開始のレース2では、リバースポール発進のシャナントゥオーニがドライブする濃紺のトヨタがリードを堅守。背後に浮上してきたラファエル・レイス(W2 Pro GP/クプラ・レオン・コンペティションTCR)や僚友ファン-アンヘル・ロッソ(パラディーニ・レーシング/トヨタ・カローラGRS TCR)が追随する。

 最後から2周目にレイスが首位浮上を決める場面こそあったものの、すぐさまターン1で逆転に成功したシャナントゥオーニが首位でフィニッシュ。結局2位レイス、3位にロッソが続く結果となった。

「また勝利を持ち帰ることができてとてもうれしいね」とTCRワールドツアー併催戦でもダブルポディウムを決めていたシャナントゥオーニ。

「とても幸せだし、チーム全員を祝福する。コース状況はつねに変化していて、僕の後ろのクルマはどこでブレーキを踏むかを知るために、僕を基準として利用していた。 最後はレイスを抑えることができたので良いレースだったね」

 続く第9戦はカレンダーどおり10月21~22日にブラジルのヴェロチッタで開催予定のTCRサウスアメリカだが、タイトル決定戦となる最終ブラジリアでの1戦は「トラックをアップグレードし、国際基準に合わせるための改修工事が完了しない」との通達を受け、12月2~3日に予定されたスロットは同国内のカスカバルに代替されることが決まった。

レース2では、リバースポール発進のファビアン・シャナントゥオーニ(Paladini Racing/トヨタ・カローラGRS TCR)がドライブする濃紺のトヨタがリードを堅守
終盤はラファエル・レイス(W2 Pro GP/CUPRA León Competición TCR)が一時首位に浮上も及ばず
ファン-アンヘル・ロッソ(Paladini Racing/トヨタ・カローラGRS TCR)とのワン・スリーとなった

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