ロールス・ロイス、ハイブリッド電動航空向けの新型エンジン初燃焼に成功

ロールス・ロイスは今年6月に、ターボ発電システム向け小型エンジンの試験開始を発表したが、今回、初燃焼試験に成功した。

https://www.drone.jp/news/2023062000505868301.html

同エンジンは、新しい燃焼技術を用いて超低排出ガスとなるよう設計されている。今回の成果を通じて、軽量ターボ発電システムに統合されるコンパクトで出力密度の高いガスタービンの有効性を確認できたという。

完成品となるターボ発電システムは、アーバンエアモビリティ(UAM)向けeVTOLやeSTOL、19席までのコミューター機を含む、次世代モビリティ市場向けに開発されているが、試験中のガスタービンは、ヘリコプター、補助動力装置(APU)、防衛市場にも応用できる可能性がある。

ターボ発電システムは、500kWから1,200kWの出力範囲で拡張可能なオンボード電源として、ロールス・ロイスの電動推進ポートフォリオを補完し、持続可能な航空燃料、更には今後、水素燃料による航続距離の延長を可能する。これにより、バッテリー駆動の電動航空機が現在運航できる航路よりも長い、新たな航路を開くことが可能となる。

ターボ発電システム開発には、小型・軽量で高速回転する電動機器および高効率ガスタービンの設計能力、それらをシステムやプラットフォームレベルで統合するための専門知識といったロールス・ロイスの叡智が結集されている。

合計14のサブシステムで構成される試験設備と装置は、1年弱という記録的短期間で、グローバルチームによって設計、調達または改造された。試験設備は、バルブやホースなどの汎用部品と、燃料噴射システム、オイル・排気システム、エンジンマウント、動力計などの特注サブシステムで構成され、この新しいガスタービンに特有の試験要件に合わせて調整されている。

一連の最初の試験を通じて、関連性の高い知見を得るとともに、設計における主要な技術的特性を検証するためのデータを生成できた。これらに基き、次の試験に向けて設計を修正し、最終的にはこの新しい市場セグメント向けに、世界有数の性能を発揮する認証エンジンの完成を目指しているという。

ロールス・ロイス エレクトリカル部門カスタマー・ディレクター、マシュー・パー氏は次のようにコメントする。

ロールス・ロイスは、次世代エアモビリティ市場向けに全電動およびハイブリッド電動の動力・推進システムを開発しています。当社の新型小型ガスタービンの初燃焼試験 は、点火から停止まで、試験全体を通して成功し、大きな飛躍となりました。 この重要な成果に先立ち、新型ガスタービンの設計から試験まで 2年以内というスピードで開発が行われました。このターボ発電システムにより、お客様は電動飛行路線を拡大することが可能となり、より多くの乗客が、低排出ガス、潜在的にはネット・ゼロ・エミッションの航空機でより遠くまで移動できるようになります

ターボ発電機は、シリアル、パラレルどちらのハイブリッド・アプリケーションにも使用できる。飛行中にバッテリーを再充電するだけでなく、電気推進装置への直接エネルギー供給にも適しており、飛行中の電源切り替えが可能だ。この技術の研究開発は、ドイツ経済・気候保護省から一部資金援助を受けている。

ロールス・ロイスは、全電動およびハイブリッド電動アプリケーション向けに包括的な動力および推進システムを開発している。設計中のシステムは、発電、蓄電、パワーエレクトロニクス、制御システムから電気モーターに至るまで、最新技術を採用しているという。

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