KTMがもてぎで投入した新シャシー。ビンダー、レコードブレイクの要因は/MotoGP第14戦日本GP

 2023MotoGP第14戦日本GPの初日、プラクティスを制したのはブラッド・ビンダー(レッドブルKTMファクトリー・レーシング)だった。オールタイムラップ・レコードを更新するトップタイムを記録したビンダーは、もてぎで新しいシャシーを投入していた。

 予選Q1とQ2へのダイレクト進出を決める唯一のプラクティスで、ビンダーは1分43秒489を記録した。これまでのオールタイムラップ・レコードは、2015年にホルヘ・ロレンソがヤマハで記録した1分43秒790で、レコード更新は8年ぶりだ。

 レコードをブレイクしたビンダー、そして同じくレッドブルKTMファクトリー・レーシングのジャック・ミラーはこの日、新しいシャシーを投入していた。サンマリノGPでKTMのテストライダー、ダニ・ペドロサがワイルドカード参戦した際に使用し、翌日のミサノ公式テストでビンダーとミラーが走らせた、カーボンファイバー製シャシーだと見られている。

「今日はポジティブな日だった。すべてがうまく機能した。何度もコースインして、特にエンジンブレーキを合わせていかないといけなかったんだ。チームスタッフは素晴らしい仕事をしてくれたよ。全体的に、フィーリングはとてもよかった」

 そう語ったビンダーは、木曜日に出席したプレスカンファレンスで新しいシャシーについて問われたとき、「新しいシャシーはミサノで初めてテストしたんだけど、最大のアドバンテージは、リヤのグリップが少し上がったこと。リヤのグリップ不足というのは、シーズン序盤からバイクに欠けていた深刻な問題だった。」と語っていた。その印象は、日本GP初日の走行でも変わらなかったようだ。

「新しいシャシーのおかげで、リヤグリップがちょっと上がった。リヤグリップは僕が(シーズン序盤から)求めてきたものだった。リヤグリップが上がったのはすごくいいことだ。確実に役立つし、ラップタイムも上がるだろうね。フィーリングはよくなっているし、思い通りにバイクを走らせられるところが少し増えたと感じるんだ。リヤグリップがちょっと上がったからだ」

「まだブレーキングのとき、フロントのロックに苦しんでいるところがある。このサーキットではいつものことなんだけどね。フロントのロックがちょっとあって、リヤがかなりスピンする。でもコーナー立ち上がりについては、よくなったと思う」

「僕たちはみんな、ダニのミサノでの速さに驚いたと思う。だから、僕たちはテストチームがすごくいい仕事をしていて、よく機能するものを見つけたのだとわかったんだ」と、ビンダーはテストチームの働きについても述べていた。

 ちなみに、サンマリノGPでワイルドカード参戦したペドロサは、カーボン製シャシーでレースウイークを走り──ミサノでペドロサは使用しているのがカーボン製シャシーだと肯定しなかったが、総合的に考えるとそうなる──、決勝レースではフランセスコ・バニャイア(ドゥカティ・レノボ・チーム)に迫る走りを見せ、4位でゴールしている。

 さらにこれは余談であるが、この日、ビンダーが破ったオールタイムラップ・レコードが記録された2015年の日本GPで優勝したのは、当時ホンダのダニ・ペドロサであった。

 全体的に初日に満足したというビンダーは「キャリアのなかでも最高の金曜日」としながらも、「まだ初日だからね、ちょっと慎重になっているよ」とも語っていた。ただ、プラクティスのトップタイムを考えると、今週末のビンダーは優勝候補のひとりだと言えそうだ。

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