<レスリング>【2023年世界選手権・特集】日本人コーチの指導で女子レスリング発祥国が久しぶりの銅メダルを獲得

 

 米国の大学を卒業し、昨年春にノルウェー女子のコーチに就任した米岡優利恵さん(埼玉・埼玉栄高卒、関連記事)が、指導する59kg級のオテリエ・ホイエに4月の欧州選手権の銅メダルに続いて今大会でも銅メダルを獲得させ、女子レスリング発祥の地に歴史的なメダルをもたらした。

▲教え子のオテリエ・ホイエに銅メダルを取らせた米岡優利恵コーチ

 米岡コーチは「組み合わせを見たとき、すごくいい、とまでは言わないけれどチャンスは大きいと思いました。2回戦でウクライナ選手に負けましたけど、気持ちを切り替えることができました」と振り返る。大会までにドイツで合宿するなど練習をしっかり積むことができ、「この半年間で技術面のみならず精神面でも成長したと思います」と、メダル獲得の要因を話した。

 このあとは、来春のオリンピック予選を目指して57kg級に下げる予定とのこと。

 女子のレスリングは1970年代後半にノルウェー、スウェーデン、フランスなどが取り組み、1983年に国際レスリング連盟(FILA=現UWW)が認定したことで世界的に広まった。ノルウェーも初期の頃にはグドルン・ホイエ(オテリエ・ホイエの母)が世界選手権で5度優勝するなど、発祥国としての強さを持っていたが、次第に日本などに押され、影が薄くなっていった。

 最近では、この大会の62kg級で銅メダルを取ったグレース・ブレンがU23世界選手権で優勝したり、昨年大会の59kg級で銀メダルを取ったりしているが、同選手はフランス在住で、ノルウェー協会のコーチが指導しているわけではない。

 ノルウェー育ちの選手の世界選手権でのメダル獲得は、2005年大会59kg級銅メダルのレネ・アーネスまでさかのぼる。オリンピック出場は2016年リオデジャネイロ大会69kg級のシグネ・ストレの1選手のみ。59kg級は非オリンピック階級だが、オリンピックのメダル獲得が期待できる選手が、やっと誕生した。

▲セコンドとしてホイエにアドバイスを送る米岡コーチ

 世界V5の母親の血筋があったのは確かだろうが、血筋だけでは勝てないのがこの世界。カデット(現U17)の世界選手権は14位、9位、12位、ジュニア(現U20)の世界選手権は13位、U23の世界選手権は9位だったオテリエ・ホイエに、今年の欧州選手権3位に続いて、世界の銅メダルを取らせたのは、間違いなく米岡コーチの指導力だろう。

 外国の文化や習慣を知り、外国人に数多く接している米岡コーチの今後の世界の舞台での指導力が期待される。

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