満月照らす管絃船、4年ぶりに回遊 奈良で「采女祭」 艶やか花扇奉納行列も

4年ぶりに池に浮かべられた管絃船=29日、奈良市登大路町の猿沢池

 一年の中で最も月が美しいとされる「中秋の名月」の29日、県内の各地で観月行事が行われた。奈良市の猿沢池では「采女祭(うねめまつり)」(同保存会主催)があり、新型コロナウイルス禍の影響で4年ぶりに管絃船が池に浮かべられた。満月の下で繰り広げられた幻想的な伝統行事に多くの観光客らが見入った。

 采女祭は奈良時代、帝(みかど)の気持ちが離れたのを嘆いた采女(女官)が、猿沢池に身を投げたという故事にちなむ行事。

 夕方から秋の草花で彩られた高さ約2メートルある「花扇」の奉納行列があり、JR奈良駅を出発した天平衣装姿の総勢約200人が三条通を練り歩いた。猿沢池そばの采女神社では春日大社の神職が厳かに例祭を執り行った。

 日が沈み辺りが暗くなった午後7時すぎ、雅楽の音色が流れると、水面に月を映した猿沢池を2隻の管絃船が優雅に回遊。最後に花扇を池に投じて采女の霊を慰めた。

 中秋の名月は旧暦の8月15日の夜に見える月をいい、今年は3年連続となる満月が重なった。奈良市の唐招提寺では境内を一部開放し、金堂で法要を営む観月讃仏会があった。桜井市の大神神社では神職が雅楽を奏で、巫女(みこ)が神楽を奉納する観月祭が執り行われた。

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