日光に当たれない難病「色素性乾皮症」16歳少年の夏 太陽の光を浴びると高確率で皮膚がんに

(夏目みな美 キャスター)
「今日はこの絵本の主人公に会いに来ました。防護服や手袋のようなもので全身を覆った男の子」

(夏目キャスター)
「こんにちは、夏目といいます」

(母親)
「握手だね」

榊原 匠さん(16)。この絵本の主人公です。描いたのは母親の妙(たえ)さん。
匠さんの姉は東京の大学に通っています。

【絵本】
「たっくんは、おひさまに あたれません。
おひさまに あたると やけどを してしまう、
とても とても こわい びょうき なのです」

匠さんは、「色素性乾皮症」(しきそせいかんぴしょう)という難病。生まれつきの遺伝子の変異で、太陽の光を浴びると高い確率で皮膚がんが出来てしまいます。
成長と共に、歩行や会話が困難になるなど、症状も起きてきます。

(母親 妙さん)
「これは紫外線測定器です。紫外線が0の場所だったら安全」

自宅の全ての窓ガラスは、紫外線をカットする加工をしてあります。

外出の際は紫外線防止服と手袋

この日は匠さんお気に入りのショッピングセンターへ出かけます。

(母親 妙さん)
「アピタね」

(榊原 匠さん)
「あ…ぴ…た」

外出の際には、日焼け止めクリームをしっかり塗り、紫外線を少しでも皮膚に受けると、がんができる恐れがあるため、紫外線防止服に手袋も。
車の窓にも紫外線防止フィルムを貼ってあります。

月に2回ほどはこうして外出し、刺激を受けることで、少しでも病気の進行を抑える事につながればと、母親の妙さんは願っています。

(母親 妙さん)
「たっくんえびだよ。えび買う?」

(榊原 匠さん)(うなずく)

2007年4月に生まれた匠さん。異変に気が付いたのは、生後まもないころでした。

(母親 妙さん)
「当時住んでいたマンションの下の階に行き来するだけで、顔が真っ赤になったことがあって、長女にはなかった 鼻にそばかすがポツポツとできたんですね。
(近くの医者から)日焼けによるシミ・ソバカスだといわれたんですけど、でもそれは大人になってから言われることで、赤ちゃんが日焼けによるシミ・ソバカスって違和感があった」

納得できず、神戸の大学病院で検査をしてもらうと、先天性の難病、色素性乾皮症と診断されました。

(母親 妙さん)
「その時が一番落ち込んだし…代わってあげられない。遺伝の病気だから、みんなが自分を責めた」

たとえ紫外線を防いで、皮膚がんの発症を抑えられたとしても、6歳ごろから聴力や歩行障害など神経障害による身体機能の低下が進みます。

歩行や会話は年々困難に

去年の学校での運動会の様子。匠さんは懸命に走っていました。

(母親 妙さん)
「たっくん1位だ、すごい」

しかし今は。

(母親 妙さん)
「たっくん、歩くよ…1、2…いいねいいね」

16歳になった今、歩くことや会話は難しくなっていますが、できる事を少しでも維持しようと、歩行器で歩く練習を欠かしません。

肉やえびをホットプレートに入れる匠さん。

(母親 妙さん)
「いいね、うまいじゃん」

この日の夕食は手作りのお好み焼きです。

母親の妙さんは、食から匠さんの病気の進行を抑えようと料理を徹底的に勉強し、今では自宅で教室を開くまでに。

(母親 妙さん)
「食から子どもを支えられないかなと思って、料理家になったんです。難病なんだけど、すごく幸せそうにしてくれるから、もっと幸せにしてあげたい」

夜は外に出られる大切な時間

そして日が沈むと…

(夏目キャスター)
「この時間だったら、防護服はもう着なくて大丈夫?」

(母親 妙さん)
「大丈夫です!」

向かった先は公園。この日は、匠さんが楽しみにしていた花火。

(母親 妙さん)
「いい感じ。上手、たっくん、上手上手」

匠さんを描いた絵本のラストは、匠さんの好きなことが。

【絵本】
「たっくんの まほうは、はなをさかすこと。
とっても とっても きれいな、 えがおの はなを。
できないことが おおくても、
とびきり さいこうの まほうつかい。」

(夏目キャスター)
「魔法使えるの?」

(母親 妙さん)
「魔法使えるよね、たっくん」

(匠さん)(笑顔)

この笑顔が少しでも長く続きますように。母親の願いです。

2023年9月21日放送 CBCテレビ「チャント!」より

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