水森由菜コズエン合格、人生初のダイエット成功 中野たむ「最弱だったユニットが、最強になるかも」

スターダムの若手主体興行「NEW BLOOD 11」が29日、東京・品川インターシティホールで行われ、水森由菜はコズミック・エンジェルズ(コズエン)のリーダーでワールド王者・中野たむとのユニット入り査定マッチに臨んだ。12分22秒、バイオレットスクリュードライバーからの片エビ固めで3カウントを奪われたものの、たむからコズエンへの新加入を認められた。

たむから「これからはコズエンの正規メンバーだよ」と手を差し出された水森は、感激の余り泣き崩れた。「コズエンに入ったことをゴールにしないで。スタートだと思って、死ぬ気で頑張って。一緒に頑張ろう」と促され、「今日闘って、改めて学ばせてもらいました。コズエンでもっと強いレスラーになります!」と叫び、誓いを新たにした。

持ち味のパワーを発揮した。花道での場外戦、ハイキックとバックドロップで首にダメージを受け、一時起き上がれない劣勢に陥ったが、左右のハンマーパンチ、ラリアート、三角跳び式ラリアート、ダイビングボディプレスで反撃。最後はジャーマン、ランニング・ニーキックの連発からバイオレットスクリュードライバーで沈んだが、健闘が光った。

リングイン時に体重「58・6キロ」とコールされると、会場が沸いた。約4カ月前、コズエン入りをたむに直訴し、拒否された。それでも体重75キロからの15キロ減量を自らノルマに課し食い下がった。「朝食前に筋トレとジョギング。食事はササミやブロッコリー。全部を見直した。これまで三日坊主ばかりだったけれど、人生で初めてダイエットができんました」。公約を果たし、たむから「本当によく頑張った」と認められた。バックステージで「次の目標は?」と問われ「チャンピオンに挑戦します!」と答えると「チャンピオンになる、でしょ」とたしなめられた。コズエンの戦力と期待を受けた。

水森由菜は1989年8月2日生まれ、熊本県八代市出身。「私は何にからでも影響を受けやすくって」と、アニメ好きで感受性豊かな少女だった。小学2年生で「YAWARA!」の影響で柔道に励んだ。中高時代はバトミントンに取り組んだ。高校は進学校だったが、卒業後はパチンコ店のアルバイトで貯金し、1年後に上京して声優の養成所に入った。2年ほど声優の夢を追うも芽が出ず、表現欲にかられてライブ活動を開始。ぽっちゃり体形を生かした〝自虐系アイドル〟として「食べ放題」「サイズが無い」などのCDをリリースした。アイドル時代の中野たむと、秋葉原で対バンした経験があるという。

〝自虐系アイドル〟を長く続ける中、転機はイベントで共演したプロレス団体・我闘雲舞所属のアイドル「おにぎりプロレス」だった。「間奏中に場外乱闘をしたり、お客さんとスクワットをしたり。なんだこれは、と衝撃を受けました」。程なくさくらえみが率いる我闘雲舞に入団し、半年後の2018年2月にデビューした。「周りのアイドルは中高生も多くて、私は若くないし体も大きかったので自信がなかった」というが、〝自虐系〟がウケるのは楽しかった。「幼い頃から空気を読む性格で、自分が損をしても周りが喜んでくれればうれしかった。でもプロレスは違った。体の大きさ、パワー、技を見せるとお客さんに褒められた。天職だと思った」。30歳を前に心が弾んだ。

アイドルとプロレスを並行して活動する中、さくらえみの参戦をきっかけに、水森も2022年春にスターダムに登場。同年秋に「プロレスラーとして、どこまで行けるんだろうという気持ちが抑えきれなくなった」と、我闘雲舞を退団。今年からフリーとしてスターダムに継続参戦するようになった。

コズエンはこれで中野たむ、なつぽい、安納サオリ、水森由菜の4人体制。水森の加入志願は、離脱者が相次ぎユニットが2人に減った時期だった。たむは「たくさんユニットがある中でコズエンを選んでくれてうれしかった。でも信頼してた仲間が離れた時期で怖さがあって断った。それでも15キロ痩せると大変なことを口にして、実際にやって、私の壁を壊してくれた」と感謝。その上で「プロレス脳が高くて、面白い動きをするなと思っていた。真面目で優しく謙虚なのも人としては素晴らしい。だけど、プロレスラーとしては欠点になる」と思いやった。

メンバー全員がアイドル、女優等の芸能活動で行き詰まり、プロレスに活路を見いだした。水森は「たむさんたち皆が強いけれど、弱さを強さに変えているところがある。コンプレックスを武器にするところに共感して、自分も強くなれると思った」と憧れを説明。たむも「芸能界で挫折を繰り返してきた人の集まり。挫折の苦しみを他のユニットよりもうんと味わってきてる人たちだからこそ強いと思っている。歌えるとか踊れるとかはその次にある」と自負した。

一時は苦境に立ったコズエンだが、現在はたむがワールド王座、なつぽいと安納がゴッデス王座に君臨する。たむは「最弱だったユニットが、最強になるかもしれない」と水森のベルト奪取に期待を寄せた。水森も「この年齢でも夢をつかめるところを証明したい」と意気込んだ。

中野たむからの握手に応じる水森由菜=23年9・29「NEW BLOOD11」品川大会よりⓒSTARDOM

(よろず~ニュース・山本 鋼平)

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