水道水の水源から目標値を超える “PFAS” 検出も 市は2年半公表せず…岐阜・各務原市長を直撃

蛇口さえひねれば出てくる飲み水。世界でも珍しい、水道整備の進んだ国、日本。
しかし、その信頼を揺るがす事態が。

(岐阜・各務原市在住 高木真由さん)
「この水が、PFASが含まれている水道水」

岐阜県各務原市に住む高木麻由さん。もう2か月ほど水道の水は飲んでいません。

(高木麻由さん)
「水のペットボトルを買ってきて、料理とかはこの水を使うようにして、お風呂とかは仕方なく水道水で入れている」

(大石邦彦アンカーマン)
「PFAS問題が公表される前は、この水道水を普通に使ってたわけですかね」

(高木麻由さん)
「料理もすべて水道水を使っていたんですけれど、問題が発生してどうしても気持ち悪いので買ってきています」

水に問題があると市民が知ったのは今年7月。水道から、PFASという化学物質が、国の目標値を超えて検出されたことを、市が公表したのです。

PFASはフライパンのテフロン加工や食品のパッケージに使われた有機フッ素化合物。極めて分解されにくいため、人体への有害性も指摘されていて、国際的に使用が禁止されています。

しかし、各務原市が調査を行ったのは3年前、2020年の11月。つまり、2年半にわたり、PFASが検出された事実を伏せ、水道水を流し続けていたのです。

「不信感しかない」「目に見えないというのは怖い」

(各務原市の会見 2023年7月28日)
「報告が遅くなりましたこと、この場をお借りしてお詫び申し上げます。誠に申し訳ございませんでした」

市が公表した後、飲み水を買い続けている高木さん。

(高木麻由さん)
「(初めから)公表さえしてくれてたら、各家庭で対策はできると思うんですよ。でもそれを黙って流し続けていたというのは、市に対して不信感しかない」

PFASが検出されたのは、人口の半数、およそ7万2000人が使う三井水源地。

市は特に数値が高かった井戸を使用停止にしましたが、今も、国の目標値を超えた水を流し続けています。

同じ地区の別のお宅では。

(三上みきさん)
「変だと思えば、みんな(飲むのを)やめるんだろうけど、味もしないし、当然臭いもないし、目に見えないというのは怖い」

(大石邦彦アンカーマン)
「目に見えないからこそ、不安はむしろ増す」

(大石邦彦アンカーマン)
「こちらの廊下に保管してありますね。このポリタンクの中に水が入ってるんですか」

(岐阜・各務原市在住 三上みきさん)
「そうですね」

三上さんは、3、4年前から飲み水には山の湧き水を使っていますが、やはり市が事実を伏せていたことを問題視します。

(三上みきさん)
「情報は、やはり市民のもの。だからそれを、それを公表しない行政の姿勢に驚いた。そこで信頼がガタっと落ちてしまって…」

以前から発行している地域の情報誌でも、このPFAS問題を大きく取り上げています。

(三上みきさん)
「“安心安全な水”が当たり前だったのに、それがガラガラと崩れた。『その原因は何か』という思いがあって。みんなにとにかく知ってほしいから」

市議会議長「『安心です』とお伝えしている」

市はこの水源に、PFASを取り除くための活性炭フィルターを設置する工事を進めていて、10月末までに稼働する予定です。

ここの水を使っている市内16の小・中学校に浄水器をつけたものの、一般家庭の対策や市民の血液検査などは行わない方針です。

9月15日には、市議およそ20人が視察しましたが、特に問題はないという考えを示しました。

(各務原市議会 川瀬勝秀議長)
「『このまま飲んでいて大丈夫か』という問い合わせがあるが、『安心です』とお伝えしている」

(記者)
「水道水を飲料水としても安心と伝えるのか?」

(各務原市議会 川瀬勝秀議長)
「そうです。実際に市役所でも同じ水飲んでいますし、別に何ら心配せずに飲みます」

京都大学大学院准教授「一定の影響がある」

果たしてこの水は安全なのか。

訪ねたのは、PFASの影響を研究している京都大学大学院の原田浩二 准教授。

(京都大学大学院 原田浩二准教授)
「動物実験において、一定の影響があるというのがわかってきた。やはりそれは人でも、我々の健康にも影響しないかということで、脂質異常症、血液中のコレステロールが上がってしまうとか、生まれてくる子供の体重が低くなってしまっているとか、血液中のPFAS度が高い人たちでは、確率が上がってくると言われている」

国が目標値を設定したのは2020年と、つい最近で、人体への影響など、より慎重に対処すべきと話します。

(京都大学大学院 原田浩二准教授)
「PFASは我々の身の回りなど、産業を含めいろいろなところで使われてきた。ですので、その周辺で汚染が起こっているのか起こってないのかを、早く特定しないといけない」

(大石邦彦アンカーマン)
「各自治体に求められることというのは、まずしっかり調査をするということと、それを知ったら、隠さずに公表するってことですかね」

(京都大学大学院 原田浩二准教授)
「特に水道水は我々が普段口にするものですから、これについては義務ではないとはいえしっかり検査して、その結果を市民が知ることができるようにするのが重要だと思う」

問題発覚後、1000人以上の市民から電話が寄せられている各務原市。事実を伏せ続けたのは一体なぜなのか。直接市長に聞きました。

市長「公表すると、逆に不安をあおってしまうと考えた」

(各務原市 浅野健司市長 9月19日)
「本当に市民の皆さんには(PFAS確認の)公表が遅れたことに、深くおわび申し上げる。事実を隠そうとしていたわけでは微塵もない。私の本当に判断のミスだと思う」

市長がPFAS検出を知ったのは2022年4月。岐阜県の行政指導で2023年7月に公表することになりましたが、それまで伏せたのは、不安をあおらないためだったと話します。

(各務原市 浅野健司市長)
「何をすればいいのか対応策もまだ何もない状況でしたので、それを市民の皆さんに公表してしまうと、逆に不安をあおってしまうと考えた。まずは水質の管理に努めようと指示を出した。今考えると、やはり飲んでいただく水ですので、PFASの数字が超過してすぐに公表すべきだったと深く反省している」

そして、しばらくは、このままの水を使ってもらうことになる点については。

(大石邦彦アンカーマン)
「リスクがあるかもしれない水道水を、みんな使わなきゃいけないわけじゃないですか。そこは市として対策をしていない ということにならないでしょうか?」

(浅野健司市長)
「国に健康被害の報告というのはきていない。どれだけ飲んで、どのような影響が出るのか、まだ研究も進んでいない。『水質基準』は満たしているので、心配な方は(自分で)浄水器を設置して飲料水としていただきたい」

(大石邦彦アンカーマン)
「浄水器も、ペットボトル買っても、それは個人負担ですよっていうことになるわけですかね」

(浅野健司市長)
「そうですね、そうなってしまいます」

これで市民は納得するのか。PFAS問題、本腰を入れた国の調査が必要となってきそうです。

2023年9月22日放送 CBCテレビ「チャント!」より

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