個性的な奈良市の保護猫ネーム、「ネガティブNG」がこだわり

奈良市がおこなっているとある取り組みが、今、各地の猫好きから熱い視線を集めている。きっかけとなったのは、奈良市在住のエッセイスト・しまだあやさん(@c_chan1110)がX(旧ツイッター)に投稿した「犬派の私を揺らがす、奈良市役所の公式LINE」から始まる一連のポスト。現在約8.4万いいねがつくなど話題となっている。

奈良市公式LINEから送られてくる、保護猫情報のスクリーンショット(写真提供:しまだあやさん)

市の公式LINEを登録すると定期的に保護猫譲渡会の告知が送られてくる・・・というのだが、注目なのが保護猫たちの名前。「ハチャ」「メチャ」「てんや」「わんや」「キョトン」など、なんとも個性的なものばかりなのだ(個人的にはマイ、ミイ、ムイ、メイ、モイがお気に入り)。

ユニークな名前はもちろんのこと、細やかな情報発信や「犬猫殺処分ゼロ」を維持する奈良市の活動にも称賛の声が寄せられている。今回、投稿したしまださんと奈良市に話を訊いた。

■ 「愛おしさが溢れ出て、投稿せずにいられず…」(しまださん)

──猫たちの名前や奈良市独自の取り組みが話題となった今回の投稿ですが、しまださんが気になったきっかけを教えてください。

保険証の切替など行政手続きがLINEでおこなえることを知り、2022年5月に奈良市の公式アカウントを登録しました。定期的に譲渡会のお知らせが届くのですが、そのたび「猫たちの名前、いっつもおもしろいなあ」と、楽しみにしていたんです。

そんななか、気になっていた「ハチャ」と「メチャ」が成長しているのを見て、愛おしさが溢れ出て、投稿せずにはいられず・・・。シンプルに「ねえねえ聞いて、素敵じゃない!?」という気持ちで投稿しました。

──投稿をきっかけに奈良市公式LINEの登録者数がなんと約1.5万人増えたとか。やはり反響の大きさは感じましたか?

めっちゃすごいですよね! 奈良で保護活動をされている方や、SNSで拡げてくださった方など、生きものを大切に思うみんなの力です。

奈良はもちろん県外からも登録がたくさんあったと聞いていますし、ほかの自治体さんから反応をもらったり、「うちでも!」とお住まいの市にご意見を届けたという方もいました。保護への取り組み方が広がる、新たな希望にも繋がっていると思うと、通知のひとつひとつに泣きそうになってます(笑)。

■「職員間でも『今回の名前は何かな』と楽しみに」(奈良市)

取り組みと今回の反響について、奈良市の担当者にも訊いた。

──保護された猫たちの名前がかなり独特ですが、これは市役所の方が名付けているのでしょうか?

70代の男性獣医師職員が担当しています。名づける時には、猫のチャームポイントやその場のフィーリング、季節感やことわざ、四字熟語から発想を得ているそうです。語呂合わせを大切にしつつ、「ネガティブにならない」ことにこだわっています。

──たしかについ笑顔になってしまう名前ばかりです。ユニークな名前をつけることで、引き取り手の目に留まりやすくする狙いなどはあるのでしょうか。

そういった意図は特にない、と聞いています。猫の収容がある度に名前を考えていたところ、ネタ切れに陥りかけたそうで・・・。余暇を楽しんでいるときなど、ふと思いついた名前を取りためているそうです。

ネーミングセンスは、昔からとても評判がよくて。職員間でも、「今回の名前は何になったのかな」と話題になったり、名前を聞いて思わず吹き出してしまったり。最近では、保健衛生課のX(旧ツイッター)でも猫の紹介をするのですが、譲渡会に来られた方からも「名前を見るのが楽しみ」というお声をいただいていました。

話題の公式LINE以外にも、市のHPやXなどでも保護猫情報をチェックできる(写真は奈良市HP内ページのスクリーンショット)

──奈良市は4年連続で「犬猫殺処分ゼロ」を達成するなど、動物保護に力を入れているとのことでも話題になっていました。

「殺処分ゼロ」については、仲川げん市長の政策として取り組んできました。大きくわけると「保健所での引取り数減少」「飼養の充実」「譲渡の推進」の3本柱を掲げています。具体的には、動物を保護・お世話をする預かりボランティアさんの負担を減らすため、謝礼や補助金を増額する、保護した動物への去勢手術の補助金を増額するなど。

平成20年度の時点では663件だった殺処分数ですが、令和元年度に初めて「殺処分ゼロ」を達成して以来、令和4年度まで4年連続「殺処分ゼロ」を継続しています。

──保護した猫の情報をLINEで発信するのもその一環なんでしょうか。

公式ラインで猫の情報を発信する取り組みは、LINEを管理している秘書広報課から提案があり実現しました。これまで、譲渡会に訪れる方のきっかけはホームページや保健衛生課のXがほとんどでしたが、おかげさまでLINEきっかけの方も増えています。

現在、市ではLINEだけでなくSNSやホームページでも保護猫情報を発信している。いずれも奈良市民以外も閲覧できるので、活動に興味がある方はチェックしてみては。

取材・文/つちだ四郎

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