県内生産者、嘆きと不安 今夏の猛暑で県産米に高温障害、実割れや白濁確認

収穫期を迎えた本県のコメの生産現場では、1等米比率の低下が懸念されている=酒田市

 農林水産省は29日、2023年産米の検査結果(8月末時点)を公表した。1等米比率は全国平均で68.9%。前年同期比で0.9ポイント上昇したが、今季は猛暑による高温障害が全国的に発生。県内でも水分不足で実が割れる「胴割れ粒」や実が白く濁る「白未熟粒」が確認されている。県内では最終的に1等米比率が例年より低くなるとの見方もあり、生産者の収入減が懸念されている。

 本県の稲刈りは今月に入って本格化し、最終的な状況が判明するのは来月以降になる見通しだ。ただ、県内各地でコメの高温障害が確認されており、今後、2等米の比率が高まる可能性がある。等級によって取引価格は異なり、低下すると生産者の収入も減る恐れがある。

 「農家を継いで25年ほどだが、これほど暑さの影響を受けたことはない」。長井市の水田5.6ヘクタールで「はえぬき」「つや姫」を生産する梅村忠浩さん(58)=同市平山=は、白未熟粒の多さに、驚きと悔しさをにじませる。昨年まで出荷してきたのは、ほぼ1等米。既に「はえぬき」で2等米の判定を受けた。検査を控える「つや姫」にも影響が出ているのではないかと不安を口にする。本年産の概算金は増額されたが「2等米以下が増えれば、恩恵は少なくなる」と語った。南陽市池黒、農業法人社長の黒沢信彦さん(58)は1等米を維持しているが「朝夜の寒暖差が少なく、稲が疲れる状態だった」と対策の難しさを指摘する。

 7.7ヘクタールの圃場を持つ酒田市新青渡の高橋奨さん(29)は、例年より収穫適期が1週間から10日ほど早まっており、「稲の様子を見ながら適期の刈り取りに努める」と気を引き締めた。鶴岡市上山添の菅原和行さん(61)は全て1等米の評価を受けたが、高温障害で収穫量が減り、収入も減少した。「今年は辛うじて1等米だったが、来年以降も猛暑が続けば等級は落ちる危険性はある。既に対策はやり尽くした感じだ」と困った様子だった。

 寒河江市の「つや姫ヴィラージュ(村)」の村長を務める土屋喜久夫さん(70)=同市南町1丁目=によると、今季の1等米比率は90%ほど。「これまでは全て1等米だったが、今回は白く濁ったコメが例年より多かった。人が外に出られないほどの暑さの中、よく実ってくれた」と、黄金色の稲穂に感謝した。23年産の発表は今回が初めてで、今後ほぼ1カ月おきに公表する。

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