間違い…ますよね?「プレラ」と「フレンテ」 施設名のデフォルト? 「カタカナ+地名」あちこちに

【上】フレンテホール(西宮市池田町)と【下】プレラホール(同市高松町)の案内表示。「ホール」とつくことで、間違えやすさが上がるような…

 先日、取材で「プレラホール」へ行こうとした。JR西宮駅南まで歩き、5階に上がった所で気付いた。ここは「フレンテホール」ではないか。両施設は直線距離で約800メートル離れており、慌ててタクシーで向かったが間に合わなかった。取材先に経緯を話しながら思った。間違えるの、私だけじゃないですよね?(ナカガワ メグミ)

 フレンテホールが入る「フレンテ西宮」(西宮市池田町)は再開発で1994年にオープンしたショッピングモール。スペイン語の「額」を意味する「フレンテ」には「西宮の新しい顔に」という願いが込められている。

 一方、阪神・淡路大震災後の再開発で誕生したのが阪急西宮北口駅南の「プレラにしのみや」(高松町)。2000年のオープンで、4~6階には「プレラホール」など三つの公共施設が入る。名前は、英語で「楽しみ」を意味する「プレジャー」と「そこ」を意味するフランス語「ラ」を合わせた造語だ。

 -全然違うやん。自らツッコミながらフレンテホールに聞いた。「プレラホールと間違える人ですか? めちゃくちゃいますよ」。やっぱり!!

 担当者によると、プレラホールで年配の人向けの催しがある時、一度に3人ほど間違えて来館したことがあるという。あまりに多いので、プレラホールの催しを調べて行き方を案内するのも慣れたものだとか。

 間違える原因となりそうな要素も挙げてくれた。「ビル5階に入る市のホール」「客席が約300席」「語頭が『フ』と『プ』でなんとなく似ている」-。さらに駅南という共通点もあり「駅南の5階のホール」と思って間違える人もいるという。そう、私はまさにそれだった。

 しかし、同様にプレラホールへ尋ねると異なる反応が返ってきた。「フレンテは年に1、2回程度。うちはアクタとかアミティとか勤労会館と間違えて来られる人の方が目立ちます」

 アクタは阪急西宮北口駅北の再開発ビル「アクタ西宮」(北口町)、アミティは「西宮市民会館アミティ・ベイコムホール」(六湛寺町)を指す。アクタは同じ駅にある施設なので間違えそうだが、ほかの二つは理由が想像できない。

 そもそも「フレンテ西宮」「プレラにしのみや」「アクタ西宮」と、施設名自体が紛らわしくないか。そう言えば、阪神西宮駅には「エビスタ西宮」もある。言葉の法則などに詳しい武庫川女子大学言語文化研究所(池開町)の岸本千秋助教に尋ねた。

 どの施設も「片仮名と地名」になっており、既存施設の名前に引っ張られた可能性もあるが、日本語は後ろに主節が来るので場所(西宮)を強調するネーミングだという。特にフレンテとプレラは音が似ている上に、後ろが「にしのみや」と同じ言葉なので「耳で聞くと混同する可能性は高い」と話した。

 阪神間にはほかにも「フェスタ立花」「ピピアめふ」「アステ川西」といった「片仮名と地名」の施設がある。岸本さんによれば「外国語に対する憧れやコンプレックスから、外来語を使うと中身に対して期待感を抱かせる『宝石箱効果』がある」という。さらにはこれを逆手にとって、日本語をローマ字や片仮名表記して、あえて日本語と分からないようにして使う例もあるそうだ。

 …ということで、今回は署名を片仮名にしてみました。効果やいかに。

© 株式会社神戸新聞社