トヨタのエバンスが好調な滑り出し「午前中にトップに立てるとは思っていなかった」/WRC第11戦チリ

 3台のトヨタGRヤリス・ラリー1で、WRC世界ラリー選手権の今季第11戦『ラリー・チリ・ビオビオ』に参戦しているTOYOTA GAZOO Racingワールドラリーチーム(TGR-WRT)。9月29日(金)に開幕した同イベントにおいて、TGR-WRT勢はエルフィン・エバンス/スコット・マーティン組が総合3番手、カッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ハルットゥネン組が総合5番手、5度目のワークスエントリーとなった勝田貴元/アーロン・ジョンストン組は総合6番手につけている。

 2019年以来4年ぶり、WRCイベントしては2度目の開催となるラリー・チリ。イベントの拠点となるサービスパークは4年前と変わらずチリ中部ビオビオ州の州都コンセプシオンに置かれ、3日間で16本合計320.98kmのステージを走行していく。その初日となった29日(金)のデイ1は、サービスパークの南東エリアで3本のステージをミッドデイサービスを挟んで各2回走行するかたちで争われた。

 競技初日は1本目のSS1と、その再走ステージであるSS4のみ4年前のステージと一部が重なっているものの、進行方向は逆向きに。その他のSS2/5、SS3/6は新ステージとなった。晴天に恵まれたデイ1の路面は一日を通してドライコンディションが保たれた。その結果、各ステージの1回目の走行時は道の表面が滑りやすい“ルースグラベル”に覆われ、出走順が早い選手たち、とくにロバンペラとエバンスにとっては不利なコンディションになった。

 ランキング2位のエバンスは、出走順2番手でステージに臨み今朝のSS2でベストタイムを記録。この時点で総合首位に浮上する。彼は続くSS3でもベストタイムを刻み、首位で午前中のループを終えたが、午後の再走ステージではグリップが充分に得られなかった区間もあり、午前中と比べるとややペースが鈍化。この結果、総合3番手に後退することとなった。初日の首位に立つオット・タナク(フォード・プーマ・ラリー1)とのタイム差は12.7秒だ。

初日を6番手で終えた勝田貴元/アーロン・ジョンストン組(トヨタGRヤリス・ラリー1) 2023年WRC第11戦ラリー・チリ・ビオビオ

 エバンスを33ポイントリードして選手権首位を走るロバンペラは、出走順1番手でステージを走行。ルースグラベルを掃き飛ばしながらの走行となったが、SS2では2番手タイムを記録し、SS5終了時点では総合4番手につけた。しかし一日の最後に行なわれたSS6でハーフスピンを喫してタイムを失い総合5番手に順位を下げて初日を終えている。

 今シーズン5回目のワークス登録出場となった日本人ドライバーの勝田は、ステージ4番手タイムを1回、同5番手タイムを2回記録。セッティングを変更して臨んだ午後はペースが向上し、ロバンペラと6.9秒差の総合6番手につけている。

「チリの初日は、この週末もっとも大変なステージだったと思うし、興味深いものだった」と語るのは、TGR-WRTを率いるヤリ-マティ・ラトバラ代表。

「午前中は調子が良く、かなり期待が持てた。エルフィン(・エバンス)の出走順を考えると、午前中にトップに立てるとは思っていなかったよ。だが、早い出走順で滑りやすいグラベルやハードな路面を走る時に起こりうることだが、午後の再走ステージは、さらに難しくなってしまった。走行ラインが狭く、あまりクリーンではなかったからだ」

「有利な出走順後方の選手たちがハードに攻めてスピードを上げた結果、カッレ(・ロバンペラ)とエルフィンは少し順位を下げてしまった。それでもエルフィンはまだ優勝争いに加わっているし、明日は出走順が良くなる。カッレは我々の期待よりも少し順位を落としてしまったが、必ずしもこのラリーで勝つ必要がないことを彼は理解している。明日、カッレと貴元がどのように戦うのか、様子を見たいと思う」

 その競技2日目、30日(土)に行われるデイ2は、サービスパークの南側エリアで3本のステージをミッドデイサービスを挟んで各2回走行する。SS7からSS12までのステージ合計距離は154.00km。これは3日間で最長だ。リエゾン(移動区間)も含めた一日の総走行距離は522.10kmとなっている。

エルフィン・エバンス/スコット・マーティン組(トヨタGRヤリス・ラリー1) 2023年WRC第11戦ラリー・チリ・ビオビオ
今季5度目のワークス参戦となっている勝田貴元(トヨタGRヤリス・ラリー1) 2023年WRC第11戦ラリー・チリ・ビオビオ

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