「もったいないをおいしく食べる」 すさみ町の未利用魚でランチ、和歌山市のレストラン

ランチメニューで提供されるオキザワラのムニエル(大和ハウスリアルティマネジメント提供)

 和歌山県すさみ町で取れた、市場では流通しにくい「未利用魚」を使ったランチメニューが10月1日から、和歌山市のレストランで提供されることになった。同町の未利用魚が使用されるのは県内で初めてで、町の関係者らは喜んでいる。12月31日まで。

 ランチを提供するのは、大和ハウスグループの大和ハウスリアルティマネジメント(東京都)が経営する「レストラン サンクシェール」(和歌山市七番丁)。食品ロスの削減などを目指して町と連携協定を結んでいるベンチャー企業クラダシ(東京都)が未利用魚を提供する。レシピは、スープストックトーキョー(東京都)が運営するファミリーレストラン「100本のスプーン」が開発した。

 提供するのは、「もったないをおいしく食べる」と名付けられたメニューで、未利用魚のオキザワラを使ったムニエルとローストの2種類ある。いずれもライス、スープなどが付いたセットメニューで税込み1500円。ランチの時間は午前11時半~午後2時半。年中無休。

 町によると、オキザワラは細長い魚で、大きいものは2メートルを超える。値段が安いほか、歯が鋭く漁具を壊すなどの理由で漁師は積極的に取っていなかったという。味は白身でくせがなく淡泊。

 漁業を基幹産業の一つとする同町では、漁師の減少や高齢化で、カツオを狙う伝統漁法「ケンケン漁」の継承や漁獲量の減少が課題になっている。

 また、市場価値が高いカツオやマグロに交ざって漁獲される魚の中には、「扱いが難しい」「採算が合わない」などの理由で調理は可能だが、市場に出回らない魚もある。

 そんな中、同レストランは、未利用魚を仕入れてランチメニューを提供することで、フードロス削減、漁師の収入向上、地産地消を目指した取り組みを進めていくことにしたという。

 町は8月、地域活性化を目指す一般社団法人「すさみキャンパス」を設立し、未利用魚の加工や販売に力を入れている。

 町担当者は「町の取り組みに賛同してもらい、大変うれしい。漁師のやる気や生きがい、町の活気につながる」と話している。

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