ヴィッセル神戸、横浜F・マリノスを破り悲願の初優勝へ前進!天王山で見えた両チームの課題と収穫

29日、明治安田生命J1リーグ第29節が行われ、首位のヴィッセル神戸が1ポイント差で2位につける横浜F・マリノスにアウェイで2-0と勝利。優勝に向けて大きな勝ち点3を獲得した。

F・マリノスにとっては痛い敗戦となった。しかし前半の立ち上がりはうまく入れていた印象があった。攻撃の主軸を両ウィングとし、チャンスを作り出すという狙いがはっきりと見えていた。

自慢のポゼッションサッカーを展開し、7分には松原がこぼれ球に反応しシュートを打つなど、鹿島戦での前半の反省がしっかりと生きていた。

その中で与えてしまった20分のPKは痛恨だった。一森の今シーズンのPKストップ率は非常に高かったが、アンデルソン・ロペスと得点王争いをする大迫勇也に逆をつかれ、先制を許す。

ここから少しずつペースが乱れ始めるが、なんとか耐え切って前半を終わろうとしていた矢先の42分、今度はコーナーキックを武藤に沈められ追加点を奪われる。

F・マリノスは今シーズンセットプレーからの失点が多く、前節の鹿島アントラーズ戦でも露呈した。改善することなく失点を許してしまったのは大きな問題だろう。まずは、このポイントをしっかりと抑えて改善する事をしない限り、優勝は遠い。

2失点目以降、F・マリノスはミスが目立ちパスをうまく繋げずにいた。後半になっても攻め続けるのはF・マリノスだったが、なかなか突破口が開けずに苦戦していた。

この後半もかなり課題が多かった。ボランチの選手にボールが入ったところで、両ウィングが開き、ボランチのもう1人が横のパスコースを作り、トップ下が落ちて出来たスペースにアンデルソン・ロペスを走らせてキーパーと1対1を仕掛けさせるのが理想だろう。

しかしアンデルソン・ロペスは後半、良い動きもあったが密着マークにあい、前線で鳴りを潜めていた。それにより、チームはターゲットを失い、結局シュートまで辿り着けない。また、後半になって守備も軽率になり始め、徐々にチームが崩れていく。

その中で、この試合では右ウィングのヤン・マテウスが良い活躍を見せていた。前節・鹿島戦の前半のような消極的な姿勢はなく、果敢に1対1を仕掛けていき、チームのチャンスを演出していた。惜しいシュートも何本か放っており、復活を遂げたと思われる。

左のエウベルも大一番に闘志を燃やしていた。積極的にカットインをしていき、シュートを放っていく姿は、昨年度のエウベルを連想させた。

このブラジリアンと共に攻撃を組み立てていた西村は、後半に徐々に調子を上げていた。後半の攻撃のポジショニングが非常に良く、何度も起点になっていた。その中でのナム・テヒとの交代は少し疑問が残った。

F・マリノスは結局このあとの時間、ボールを回すも奪われては神戸にカウンターを仕掛けられる展開に。このあと吉尾海夏、宮市亮、水沼宏太を投入するもなすすべなく試合終了。欲しかった勝ち点3は優勝争いをするライバルのものとなった。

試合内容としてはマイナス面が多かったものの、ボランチの2人、渡辺皓太と山根陸の働きぶりは目を引いた。特に山根は要所で見せる高いボールキープが光っていた。

残りは5戦。上位陣との対決はなく、ACLとルヴァンカップの後に再開される。直接対決で敗れたと言っても勝ち点差はまだ4ポイント。チームとしてしっかりと修正を行い、残りのリーグ戦、悔いのないよう戦い抜きたい。

一方、天王山を制した神戸もまた多少の課題を残している。相手にボールを持たせて隙を見てカウンターに出る戦術がはまっており、支配率50%を下回る12試合のうち負けは1つだけ。この試合もF・マリノスにボールを持たせ、カウンターを仕掛けては何度もF・マリノスの守備陣を脅かしていた。

シュートはF・マリノスを上回る16本を放っており、多くのチャンスを作っていたことは間違いなかった。しかし、結果的に得点はPKとコーナーキックのみ。カウンターから決めることはできなかった。

この日はPKに救われる形になったが、きっかけが得意のセットプレーで、2点目もコーナーキックから奪った。F・マリノスの弱点を突き、チームの強みを出せたことは上位陣との対決を3試合残している神戸にとってプラスだ。

守備の面で言えば、この試合は左サイドをヤン・マテウスに崩されに崩され、しまいには左サイドバックの初瀬亮が脳震盪で交代するなどのアクシデントが起こり、今後に向けて多少不安を残した。

しかし、次の試合は10月21日のホームでの鹿島戦。神戸はカップ戦がなく、F・マリノス戦の反省をもとに改善することができるチャンス期間である。時間をどのように使いチームを向上させていくのか。優勝に向けた大きなポイントとなる。

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明暗がはっきりと分かれた天王山。F・マリノスはサポーターからも厳しい声が飛び、一方の神戸は今後の上位陣との対戦に向けて好スタートを切った。

J1は残りあと5試合。どのような結末を迎えるのか注目したい。

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