青春時代に夢中になったドラマの裏には私たちの知らない“ドラマ”がいっぱい。出演者ご本人を直撃し、今だから話せるエピソードをこっそりお届け!
【『男女7人夏物語』(TBS系・’86年)】
主演の良介(明石家さんま)と桃子(大竹しのぶ)の掛け合いが痛快な、男女7人によるちょっと遅咲きの青春ラブストーリー。明石家さんま自ら「自分のドキュメント」と称したように、大竹しのぶと実生活でも交際、結婚に至った。
「コメディタッチのドラマにゲスト出演することはありましたが、本格的なドラマのレギュラー出演は、『男女7人夏物語』が初めて。だからバラエティ畑の(明石家)さんまさんが一緒だったことは、心強かったんです」
こう語るのは、片岡鶴太郎さん(68)。当時は『笑っていいとも!』や『オレたちひょうきん族』(ともにフジテレビ系)など、7~8本のレギュラー番組を抱えていたという。
「でも、ドラマの現場は全然、別もの。バラエティは男所帯で、女性は山田邦子くらいしかいませんけど、ドラマはキレイな女優さんばかりですからね」
第1話の最初の撮影シーンから、ドラマの洗礼を受けることに。
「エレベーターの中で、奥田(瑛二)さんが(賀来)千香子ちゃんに強引にキスをするシーンを、さんまさんと一緒に、楽屋のモニターで見ていました。すると、ドライ(カメラなしのリハーサル)なのに、奥田さんが本当にキスするんですよ。ドライですよ! さんまさんとは『ホンマにやっとるやん!』『やってますよね。オレ、こんなことできませんよ』なんて、大騒ぎして。それなのに、楽屋に帰ってきた奥田さんは、長いタバコを吸って『場慣れすれば、できるよ』なんて悠然としている。もう、私みたいな汚ないイロモノなんて女優さんに触れちゃいけないと思っていたから、不安ばかりでした」
■本番では水と日本酒を入れ替えるイタズラも
そんな鶴太郎さんも、池上季実子を抱き寄せるシーンに挑戦することになった。
「バラエティ番組に出始めのころ、テレビ局で季実子さんをお見かけしたのですが、ロングヘアをふわっとなびかせた姿は眩しくて、私なんかが声をかけちゃいけないと思って、さっと下を向いてすれ違っただけ。そんな恐れ多い女優さんに“”壁ドンをしたんですから、本当に緊張しましたよ」
とはいうものの、撮影を重ねるうちに、共演女優とも打ち解けた。
「季実子さんと2人で天ぷら屋さんデートのシーン。私が日本酒をぐいぐい飲んでいくのですが、当然、ミネラルウオーターです。でも、本番になると季実子さんがイタズラで本物の日本酒に入れ替えていて。飲んだ瞬間“やばい”と思いましたが、カメラが回っているからやめるわけにもいかず、本当に酔っ払ってしまいました(笑)」
ドラマは大反響で最終回の視聴率は30%超え。『男女7人秋物語』へと続き、その後、主役を務めた『季節はずれの海岸物語』(フジテレビ系)も好評だった。
「“夏物語”は、俳優業に本腰を入れる、ターニングポイントとなる作品だったんです」
【PROFILE】
片岡鶴太郎
’54年、東京都生まれ。10月12~18日、銀座もとじ和染にて「男の粋は羽織の裏~片岡鶴太郎、男の粋を描く~」を開催