筑波大50年 白川名誉教授が記念講演 「真理の探究」に期待 茨城・つくば

筑波大50周年記念式典で講演する白川英樹名誉教授=つくば市竹園のつくば国際会議場

筑波大(茨城県つくば市)が30日に開いた50周年記念式典で、導電プラスチックの研究でノーベル化学賞を受賞した白川英樹名誉教授(87)が「私の研究とつくば」をテーマに記念講演した。「20年超を過ごした思い出深い場所」と同大の教員生活を振り返り、これからの大学や科学技術政策の在り方について「すぐ役に立つことはないが真理を探究し、知的好奇心を満たす場に」と望んだ。

理論上、電気を通すとされていたポリアセチレンは、どの研究者もうまく合成できずにいた。白川氏は失敗した実験で偶然、真っ黒いぼろぞうきん状態に合成。研究を進め、銀色に輝く薄膜の生成に成功した。

1976年、米ペンシルベニア大に赴任して研究を深め、翌77年帰国。学系長に「つくばに来ないか」と誘われ、79年に筑波大助教授に就任した。退官し名誉教授に就いた2000年にノーベル賞を受賞した。

同大では、学際的で文理融合が進む教育を「外部の人は理解できるのか」と懸念したが、専門外の研究者が近くにいて研究の幅が広がったという。教育と研究を分離した組織はそれぞれの教授会があって忙しく、研究の妨げになったと語ると会場から拍手が起きた。

酒を飲まず喫茶店でくつろぐ習慣もないため、発展途上の当時のつくばを「いいまちだった。通勤ラッシュもなく、米国の大学と似ていた」と振り返った。つくばエクスプレス(TX)の開通前は会議や学会で東京に行く際に不便を感じたといい、「退官5年後に開通した」と笑いを誘った。

大学の役割について「象牙の塔でもある」と指摘し、「現実社会と没交渉で研究のための研究をするという本来の意味ではなく、すぐ役に立つことはないが真理を探究し、知的好奇心を満たす場に」と強調。「教えることは学ぶこと。裾野を広く学ばないと教えられない」と、現役学生たちに学びの大切さを呼びかけた。

国の一般会計は膨張し続ける一方で国立大の運営費交付金が年1%ずつ減らされる仕組みを批判。短期的に役立つ応用研究が目立ち、基礎研究がおろそかにされる風潮を嘆いた。

学生との質疑応答では、科学教室を通じた子どもとの触れ合いを「3日やったらやめられない」、科学の魅力は「物質が全く別の物質に変わる点」と回答。プラスチックの利便性が海洋汚染などの弊害を生むことを今後の課題と言及した。

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