旬を食べよう〜東海地方の伝統野菜〜【土田かぼちゃ】愛知県尾張地方(清須市土田地区)

愛知県清須市内の産直店で購入した「土田(つちだ)かぼちゃ」

日本列島のほぼ真ん中辺りに位置する東海地方は、古くからモノやヒトの往来が盛んで、豊かな自然と過ごしやすい気候に恵まれていることもあり、野菜づくりが盛んな地でした。

そんな東海地方には、数々の伝統野菜が地産地消されており、野菜本来の「旬」や食文化を教えてくれる貴重な存在として親しまれています。

愛知県清須市内の産直店で購入した「土田(つちだ)かぼちゃ」

今月は、「あいちの伝統野菜」に選定されている「土田(つちだ)かぼちゃ」(写真)をフカボリします。

清須市民が復活させた、かつての高級食材

「土田かぼちゃ」を横から見たところ 大型で甲高という日本かぼちゃの特徴を備えている

「土田かぼちゃ」は、明治時代には愛知県清須市土田地区で栽培されていたとされる日本かぼちゃの1品種。

『きよす食育レポート』によると、昭和30(1955)年以後、西洋かぼちゃが普及したため、「土田かぼちゃ」を含む日本かぼちゃの消費は衰退し、一旦、市場から姿を消したといいます。西洋かぼちゃが出回る以前の明治時代は、高級食材だったと伝えられているそうです。その後、2007年に「土田かぼちゃ」の種子を保存していた人が市内で見つかり、地元農家の協力を仰ぎ、復活させました。

現在では、市の農業体験塾や地元農家で栽培し、収穫期には、学校給食や飲食店、和菓子店などに提供するほか、地元産直や市の観光協会運営の無料休憩施設などで販売しています。2023年3月には「あいちの伝統野菜」に選定されました。

標準の重量は、2キログラムほど。大きさは直径20センチほどありますから、大人でも、片手で持つには少し無理があるかなという感じです。

「土田かぼちゃ」を販売していた清須市内の産直スタッフの方のお話では、「収穫期は8月から9月半ばぐらいだけど、採れてすぐのものは水分が多すぎるから、風通しの良いところに1〜2カ月置いておいて、水分が抜けるのを待ってから食べた方が美味しい」とのことでした。

「土田かぼちゃ」とは一体どんな味わいのカボチャなのでしょうか。産直で買ってきて1カ月寝かせておいた「土田かぼちゃ」を調理してみました。

あっさりしているのに滋味深い、大人の味わい

レシピは、購入した「土田かぼちゃ」にも付いていましたが、清須市のHPにも掲載されています。多くのレシピで共通する下ごしらえは、「皮をむいて小さく切ってレンジで加熱し、裏ごしする」でした。

水分が多いため、まずはペースト状にしておけば、小分けにして冷凍保存したり、様々な料理に使い回せて便利ということのようです。市のおすすめレシピとしては、スープやチーズ焼き、コロッケ、サラダのほか、羊羹やケーキといったお菓子まで盛りだくさん。

迷った挙句、 一番手軽にできそうな「スープ」を作ってみました。

ミゾのあるところで包丁を入れると切りやすい。普通のカボチャよりもスッと切れます(ただし、皮が少し硬いので、少しむきにくい)

レンジで加熱する際は結構水分が出てくるので、耐熱容器のふたやラップ、水打ちは不要です。

皮をむいてレンジで加熱し、おたまですりつぶした「ペースト」状の土田かぼちゃ

ペーストと同じ分量の牛乳を鍋に合わせて加熱し、コンソメの素やバターを入れて好みの味に仕上げます。

※牛乳の代わりに豆乳と合わせたり、味付けに味噌や味りんを加えてもおいしいと思われます。アレンジのアイデアが次々と浮かんできます。

口当たりを良くするために、最後にミキサーにかければ、なめらかな「土田かぼちゃのスープ」の出来上がりです。

牛乳とコンソメで煮込み、ミキサーにかけた「土田かぼちゃのスープ」

飲んだことのあるかぼちゃのスープと比べると、甘みやコクが控えめで、あっさりしているのに味わい深く、美味しく飲めました。カボチャが苦手な男性に飲ませたら、「これなら飲める。おいしい」といっていましたよ。

せっかくなのでもう一品、簡単にできるものを作ってみました。

玉ねぎとひき肉と一緒に炒めた「土田かぼちゃのキーマカレー」

ペーストにする前の、小さく切った状態の「土田かぼちゃ」を玉ねぎのみじん切りとひき肉と合わせてさっと炒めて、キーマカレーにしてみましたよ。これは完全に思いつきのオリジナル。普通のカボチャと違って、粘りや甘みが少ないので、あっさりと食べやすいキーマカレーに仕上がりました。カボチャだから、油と炒めると栄養の吸収が良くなるというメリットもあります。結構手軽に作れるので、時短という点でもおすすめです。(皮をむいて切るというところまでは手間ですが)

復活したかつての高級食材「土田かぼちゃ」を手軽に食べましょう。(今回使った「土田かぼちゃ」は、2023年8月に1個300円で購入)

甘すぎず滋味深い、大人の味わいが魅力の「土田かぼちゃ」。一度味わってみてはいかがでしょうか。

※掲載情報は公開日時点のものとなります

© 中日新聞社