今季初表彰台のM.マルケス、「トライ」を決意したスタート前の雨/MotoGP第14戦日本GP

 マルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)が、表彰台に帰ってきた。マルケスがポディウムに立ったのは、2022年のオーストラリアGP以来のことだ。マルケスは決勝レースのスタート前、天候を考えてこう思ったという。

「よし、トライしてみよう」

 2023第14戦日本GPのMotoGPクラス決勝レースは、天候に翻弄された。スタート前に降り出した雨によってフラッグ・トゥ・フラッグのレースとなり、マシンの乗り換えが行われたが、雨脚は増していった。そんななか、マルケスはじりじりとポジションを上げて、12周目にはマルコ・ベゼッチ(ムーニーVR46レーシング・チーム)をかわして3番手に浮上した。13周目に赤旗が提示されてレースは中断。結果的に再開されることなく終了となり、12周終了時点の順位が最終的な結果となった。

 マルケスは2023年シーズン初、2022年オーストラリアGP以来となる表彰台を獲得したのだ。ホンダ勢としては、アメリカズGPでアレックス・リンス(LCRホンダ・カストロール)が優勝して以来の表彰台である。苦しい時期が続いているマルケスにとってもホンダにとっても、久々のポディウムだった。

 マルケスはスタート前、スクリーンに雨が落ちたのを見てこう考えた。

「よし、今日、トライしてみよう」

「インドでもトライしたけど、ミスしたから表彰台には乗れなかったんだ」と、マルケスはMotoGP.comのインタビューで言う。マルケスがこう決意したときの目的に向かう集中力は、すさまじいものがある。ほんの少しの光を好機だと感じとる嗅覚と、決断のスピードも抜群だ。

 ウエットコンディションの場合、通常、マシンの性能差は顕著にならず、ライダーのパフォーマンスがより走りに影響する。また、マルケスはもてぎでウエットタイヤを履いたとき、速く走れるとわかっていた。

 マルケスは決勝レース後の会見のなかで、レース序盤について「スリックでもう1周走ることはできた」と語る。

「でもトップグループにいて、みんなピットに入っていたから、ピットに走る(決断は)簡単だった。このサーキットでは、ふつう、ウエットタイヤだと速いってわかっていたからね。特に昨年は、雨の予選でポールポジションを獲得しているしね」

 レースが進むにつれて雨が強くなり、路面コンディションもフルウエットになっていった。マシンによって上がる水しぶきはどんどん大きくなっていく。しかしマルケスは、コンディションの悪化に反してアタックを始め、ラップタイムを上げていった。終盤の3周、10、11、12周目のラップタイムは、トップのマルティンとそん色ないものだった。

「もちろん、重要なポディウムだったよ」と、マルケスは今季初めて上がった表彰台について述べた。

「ずっと求めていたんだ。状況と天候を味方につけ、ホンダのホームグランプリでその日がやってきた。最高のレースマネージメントをしようと頑張ったよ」

 2023年シーズン14戦目にして表彰台を獲得したマルケスだが、もちろん、これが今後に向けた明るい材料だと楽観視はしていない。

「インドもここもストップ&ゴーのサーキットだ。ブレーキング・ポイントでリスクを冒し、旋回し、すぐにバイクを起こしていい加速につなげられるところがあった。マンダリカ(次戦インドネシアGP)では、バンクさせてエッジグリップとトラクションを使わないといけないコーナーがある。そこで(ホンダは)かなりロスしている。スピンするだけで何もできない。いつもみたいにベストは尽くしたいと思っているけれど、もっと厳しいと思う」

「今日も含めていい週末だったから、楽しまないとね。昨日のスプリントレースだって、いいレースだった。この調子でシーズン終了までいけるかどうかだね」

 現実的に考えれば、今回の3位はコンディションと天候、12周での赤旗終了という特異な状況が背景にあったことは間違いない。ただ、同時にマルケスのポテンシャルと目的遂行能力もまた、その一因であったはずだ。

決勝レースは13周目に赤旗が提示されて中断。その後、終了となった

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