中宮寺の太子像、草花刺しゅう冬衣に 京都の職人が奉納し衣替え

奉納された振袖をまとった聖徳太子二歳像と日野西門跡=1日、斑鳩町法隆寺北1の中宮寺

 中宮寺(日野西光尊門跡)に安置される聖徳太子二歳像(鎌倉時代)の冬衣として京都の職人から「桃花松葉文刺繍振袖(とうかしょうようもんししゅうふりそで)」が奉納され1日、奈良県斑鳩町法隆寺北1丁目の同寺で奉納式と記念法要が営まれた。

 奉納したのは京繍(きょうぬい)の第一人者、長艸敏明さん(75)。長艸さんは同寺所蔵の日本最古の刺しゅう織物「天寿国繍帳(てんじゅこくしゅうちょう)」(国宝、飛鳥時代)の図柄を部分復元した二歳像の夏用の着物を今年6月に奉納したのに続き、今回は冬用の着物を制作した。

 振袖は聖徳太子が3歳のとき、父から「桃の花と松の葉どちらが好きか」と問われ「桃の花はいっとき栄えますが、松の葉は万年も変わりません。なので松が好きです」と答えたという物語をもとに長艸さんが創作した。

 ランやウメなど地紋入りの萌黄色の生地に、若松や桃の花などの草花を刺しゅうした着物で、奉納式に出席した長艸さんは「春をイメージし、かわいく気品のある仕立てにした。何度もお寺に足を運び、お参りしてほしい」と話した。

 冬衣に着せ替えられた二歳像を前に日野西門跡(93)は「本当にかわいらしく、よくお似合いでうれしい」と笑顔を見せていた。

 冬衣をまとった二歳像はきょう2日から来年5月31日まで本堂で公開する。

© 株式会社奈良新聞社