消費税のインボイス(適格請求書)制度が1日始まった。初日の茨城県内では、飲食店などがレジをインボイス発行に対応するシステムに変えたほか、領収書に登録番号を記載する動きが見られた。日曜日だったこともあり、静かな滑り出しとなった。中には「負担が増す」「何か影響が出ないか心配」といった不安の声も根強く、手探り状態での開始となった。
つくば市小野崎の料亭「つくば山水亭」では、開店前の午前9時半、従業員が領収書に、インボイスの登録をした証しである登録番号のスタンプを押した。
新制度では、売り上げ時に客より預かった税額から仕入れ時の税額を差し引く「仕入れ税額控除」にインボイスが必要で、請求書や領収書、レシートに事業者の登録番号や適用税率、税率ごとの消費税額の記載が要件となる。
同店は9月、レジでインボイスを発行できるシステムを整備した。ただ、領収書は既存のものを使うことになり、当面は登録番号のスタンプを押して対応する。
水戸市宮町の居酒屋「茨城まるごと 四○屋」もレジの対応は万全。法人向けの領収書についても必要事項を記載した。
一方、先行きについては不安の声が漏れる。
山水亭本部長の小林剛さん(53)は「今後、何か問題が出るかもしれない」。四○屋店長の梅津敏博さん(45)も「良くない影響が出ないだろうか。記載漏れなどがあると、利用客に迷惑がかかってしまう」と、不測の事態を心配する。
零細事業者の中には、外部に任せたり、対応を決めかねている人も多い。つくば市内の和菓子店は「全て税理士に任せている」、同市の美容室は「分からないことだらけ。これから勉強する」などと、制度が浸透していない状況が見える。
免税事業者は導入後も納税がなく、経過措置はあるものの、その負担が取引する側に発生するため、今後、インボイス未登録の免税事業者が取引の打ち切りや価格引き下げなどを求められるケースも想定される。
東京商工リサーチの8月の調査では、県内99社のうち1割強の企業が免税事業者と「取引しない」「取引価格を引き下げる」と回答した。
つくば市内でそば店を経営する70代男性は「周囲からは登録を勧められたが、免税事業者なので登録しない」と選択。「取引がなくなったら、仕方がない」と語った。