1990年代に一大ブームとなった絵本『ウォーリーをさがせ!』。
40代ぐらいの大人たちは子どものころ、一度はウォーリーをさがすのに夢中になったのではないでしょうか。
そんな『ウォーリーをさがせ!』が1987年11月末の発売から35周年を迎えました。
現在でもCMやポスターなどで見かけることも多い『ウォーリーをさがせ!』について、絵本を日本で発売することになったところからブームになるまでの秘話や、最新作などをご紹介していきます。
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絵本『ウォーリーをさがせ!』とは?
ご存じの方も多いかと思いますが、改めて絵本『ウォーリーをさがせ!』がどのようなものなのか、見ていきたいと思います。
さがすのはウォーリーだけではない
旅行好きの「ウォーリー」は仲間といっしょに様々な地域や時代などを旅します。
そして、行く先々では人間や動物などが細かく密集して描かれており、その中からウォーリーは「僕をさがして」と呼び掛けてくるのです。
そして、時間を掛けてウォーリーをさがすのですが、実は、ウォーリー(と仲間たち)は相当なうっかり者で、行った先々で物を落としてきてしてしまうのです。
そのため、ウォーリーと同時に落とし物も見つけなければなりません。
時には、本の最後でウォーリーが「あ、どこかに忘れてきた」とか言い出して、また最初から見直しをしなければならないこともあります。
ありそうでありえない世界に夢中
ウォーリーが旅する世界は日常から非日常まで様々ですが、1つの場面の中に多くのイベントが描かれています。
例えば、車がぶつかったドライバーがもめている横で、噴水の吹き出した水に浮かんで水泳をしている人がいるなど、ありそうでありえないシーンやできごとが細かく表現されています。
これらのようなイラストを見ているだけでも楽しめるため、飽きずにウォーリーをさがし続けることができてしまいます。
答えが付いていないのも特徴の1つ
『ウォーリーをさがせ!』の絵本では、最後のページに「チェックリスト」というおまけの出題があり、ウォーリーや落とし物以外も「さがし物」がたくさんあります。
とにかく1冊でさがす人や物が多すぎるため、100%見つけた人はもしかしたら少ないのかもしれません。
そんな絵本『ウォーリーをさがせ!』ですが、ほかのクイズ本などにはたいてい付いている“答え”が付いていないのです。
つまり、見つからなければずっと答えが分からないままです。
日本で絵本『ウォーリーをさがせ!』を出版している株式会社フレーベル館には時々、「答えを教えて欲しい」と問い合わせが来るそうです。
しかし、作者であるマーティン・ハンドフォード氏の意向により、答えは教えられないということです。
おそらく「答え」を見つけるよりも、絵をすみずみまで楽しんで欲しいという作者のメッセージなのでしょう。
アニメ放送されていた
絵本の印象が強い『ウォーリーをさがせ!』ですが、1991年にアメリカではアニメが放送されていました。
その後、アメリカで2019年に新作としてアニメが放送されていたものが、2021年に日本のディズニーチャンネルにて放送開始されました。
1991年のアニメでは絵柄がかなり絵本と近い印象ですが、新しいアニメではだいぶ印象が変わっていますので、もしかしたら、『ウォーリーをさがせ!』だと気づかない人もいるかもしれませんね。
1991年当時放映していたアニメの中ではウォーリーが持っているつえが伸び縮みしており、少し驚きました。
また、ナレーションがウォーリーのことを「生意気でちょっと変わってるけど」と言っていたので、「あ、ウォーリーって生意気なんだ」と絵本とは違う印象も感じられました。
登場人物をご紹介
ウォーリーの旅の仲間は3人と1ぴき。
そして時々しんえいたい。
簡単にご紹介します。
ウォーリー
ウォーリーランド生まれ。
年齢は不詳。
趣味は読書と旅行。
楽天的で成り行きまかせな性格。
なくした鍵をさがしつつ、新しい冒険を求めて世界中を旅する。
人や場所を観察するのが大好きで、いつも人ごみにいる。
赤と白のしましまシャツに赤いポンポンつきの白のニット帽をかぶり、デニムに革靴、ステッキを持つのがお馴染みの格好。
ウェンダ
ウォーリーの親友。
写真を撮ることが大好きで、いつもカメラを持ち歩き、旅の面白いできごとを記録している。
でも、よくカメラを置き忘れる。
ウォーリーと同じく赤白のシャツに帽子をかぶっているため、ウォーリーを見つけたと思ったら、ウェンダだったということも経験されたはず(メガネフレームの形で判別を!)。
オズロー
ウォーリーにいたずらをしかけてくる悪党。
でも毎回失敗する。
ワルモノたちのアイドル。
ワルモノっぽく、黒と黄色のしましまシャツという格好で、目立ちそうですが、意外と見つかりません。
ちなみに、“悪党”となっていますが、絵本『ウォーリーをさがせ!』の最初に書かれているウォーリーからのメッセージでは“たびのなかま”となっているので、仲が良いのかもしれませんね。
ウーフ
ウォーリーの忠実な友。
なくした骨をいつも一生懸命にさがしている。
場面の中で見えるのはしっぽだけ。
赤白のシャツにメガネをかけた珍しい犬ですが、行く先々で見えているのはしっぽだけという高難易度。
ウーフが見つけられないという方も多いのではないでしょうか?
まほうつかいしろひげ
偉大な魔法使いのおじいさん。
知恵と魔法でウォーリーを素晴らしい旅へと送り出す。
よく宝物の巻物をなくす。
長くて白いひげが特徴の魔法使いで、長すぎるひげは体を一周回って自身で持ってしまっています。
そしてなぜか裸足なのです。
ほかのキャラとは異なる格好なので、見つけやすいかもしれませんね。
ウォーリーしんえいたい
たまに登場する25人のウォーリーしんえいたい。
ウォーリーの熱烈なファンとのこと。
だからウォーリーの行くところは、どんな場所でも付いていく。
こちらもウェンダ同様、ウォーリーと同じ格好をしているので、とても紛らわしい25人です。
どこにでも付いていく親衛隊員が25人もいるなんて、ウォーリーは何者なのでしょうね。
絵本『ウォーリーをさがせ!』ここだけの話
今やだれもが知る『ウォーリーをさがせ!』ですが、どのようにして日本で発売されることになったのでしょうか?
「フレーベル館100年史」に残されていた『「ウォーリー」、君に出会えてよかった!』(筆者/熊谷弘司:元フレーベル館編集部長)から抜粋・参考にしてご紹介したいと思います。
「ウォーリー」と出会ったのは1987年
熊谷氏が「ウォーリー」を知ったのは1987年の夏。
イギリスの出版社であるウォーカーブックス社が株式会社日本ユニ・エージェンシーと代理店契約を結び『ウォーリーをさがせ!』の日本での版元を探すために来日していました。
そのプレゼンテーションを受けたうちの1社がフレーベル館です。
そこで見せられたのが『WHERE’S WALLY?』という校正刷り段階の『ウォーリーをさがせ!』でした。
この時熊谷氏は、個性的すぎるかとも思ったそうですが、この絵本なら子どもたちが手に取って繰り返し遊んでくれるかもしれないと感じたそうです。
他社には見せたくない
プレゼンテーションを受けた熊谷氏は、このあとプレゼンを受けるほかの出版社に「ウォーリー」を見せたくないと、一部しかない校正刷りを半ば強引にフレーベル館に持ち帰りました。
この時熊谷氏は「フレーベル館としては、非常に興味がある。明日までに結論を出す」と言い残したそうです。
社内に戻った熊谷氏はすぐに当時の出版部役員や編集長、営業部長と相談し出版を決め、社長に内諾をもらいました。
その3週間後にウォーカーブックス社から『WHERE’S WALLY?』の日本での出版を許諾するという連絡があったのです。
価格・判型・タイトルの課題と書店販売でのつまづき
出版許諾を得たフレーベル館は、定価を1,300円に設定しました。
当時の絵本としてはやや高価格ということで、プレゼント商戦でもあるクリスマス時期に発売することを決めます。
夏に提案を受けて、冬に発売というのは現在でもなかなかないことです。
また、本のサイズが大きいことが問題だなと熊谷氏は思っていました。
当時の書店では概して大型本は棚の高い位置に置かれてしまいます。
そして、棚に置かれると読者が手に取ってくれるチャンスが減ってしまうのです。
さらに、悪循環として、初版での動きが悪いと書店から出版社へ返品されてしまい、多数返品された本がロングセラーになることはめったにありません。
この状況から、どのようにしてブームとなったのか、本のタイトルはどのように考えたのか、ひも解いていきたいと思います。